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山と秘書

歴代の小説の内、これの初日PVが最も良かったのです。

朝食を食べ終わり、仕事をするため執務室の扉を開くと、中ではいつの間に追い越したのかメイド長が書類の準備をしていた。

 

 机に向かい、席に座るとメイド長は傍に寄ってきて手に持つ書類を読み上げた。

 

 「ご主人様今日の予定を報告します。まずこれからはご主人様宛の手紙、招待状を読んでいただきます。その後、委託業者への委任状を書いていただき、それと並行して企業からの納品書類に押印されるのを午前中に終えていただきたいのですが、できますか?」

 

 怒濤の勢いで今日の予定を説明した上、午前中に終われるかの確認まで行うとは。

 

 「書類の量にもよるが…そんなに多いのか?」

 「ここに準備してあるもので全てです。」

 

 そう言うと彼女は後ろにあるローテーブルを指した。

 そこには決して少ないとは言えない程の書類が堆く丁寧に積み上がっている。

 

 「えっと、それを、午前中に?」

 「ええ、祭り関連のものもありますし、できればそうしていただきたいですね」

 「ああ、今月は祭りの月だったな。じゃあ頑張るしかないな」

 「そうですね。では、少しでも負担を軽くする為に急ぎの書類は午前中にやることにしましょう」

 「そうしてくれれば助かる」

 「急ぎの書類はここから、ここまでになります」

 

 そう言って彼女は書類の山を半分に分けた。

 

 「メイド長…、今、何時だっけ?」

 「…? 9時を過ぎた所ですね?」

 「あと3時間で終われる!?」

 「ふう、やはりそうですか。ニム!ネム!出てきて下さい。」

 『はーい!』

 

 そう呼ばれ部屋の隅にある使用人用の出入口から出てきた、三毛猫柄の2人。忙しい時などに手伝ってくれる、とても優秀な秘書だった。

 

 「呼ばれて!飛び出て!ジャジャジャジャーン!!困ってるご主人様の為参上!優秀な秘書官(姉)のニムです!!」

 「ご主人の為なら、たとえ火の中、水の中。書類に雑務におやつまで。何でもこなす優秀な秘書官(妹)のネムです。」

 

 元気な口上で登場したのは恒例行事なためスルーするとして、この2人が出てきてくれるのはありがたい。

 片方だけだとギザギザなピースのように足りない部分が多いが、2人で作業をするとピースがぴったりと合わさる。

 お互いがお互いを高め合う働きをして初めての仕事でもドンドン飲み込んでいき速度が上がる。その成長が異常なまでに速いため秘書を始めて1カ月で秘書長にまで登り詰めた。

 

 この2人と一緒に書類の処理をし始めるとあれよあれよという間にあれほどあった書類が片付いていた。

 何せ2人が堅苦しい文書を「この文書は次の商品にはこんな物がありますよって書いてます!この商品は問題が多くて買わない方がいいですね!」ってな感じで軽く解説してくれるのだ。

 

 しかも、それらはネムが瞬時に解読。それをニムがまとめて、コメント付きで報告してくれるというシステムで行われている。

 

 おかげでお昼前には終わってしまった。

 

 前にニムとネムのその行動力の源には何があるのか聞いてみた所、

 「ご主人様と楽しくご飯やおやつを食べたり、一緒にお出かけしたいからですよ!」

 と2人共同じ事を言っていた。

 

 可愛がっている相手から愛情が返ってくると、嬉しいものだ。

 このあとは2人をお昼に誘ってあげよう。

 

 「よし、全部終わったな。ニム、ネム、ありがとう。助かったよ」

 「いえいえ!!私達は秘書ですからこれくらい当たり前です!!」

 「そうですよ、ご主人様。それで、もしよろしければ…」

 「分かってるよ。じゃあ、少し早いけど昼ご飯にしようか」

 『はい!!!』

 「早速メイド長にじゅん…」

 

 その時、執務室の正面の扉からメイド長が入ってきた。…後ろに男を連れて。

 

 「おーおー、なんか楽しくやってるみたいだな!俺も混ぜてくれよ、『ネコ伯爵』。」

 「なんでお前が来るんだよ」

 「ええー、ひどいなー、こんなかわい子ちゃん達を独り占めー?ずるいな-『ネコ伯爵』♪」

 「流石に怒るぞ、ノルベルト」

 「おー、こわいこわい。いけずな伯爵はほっといて、一緒にお昼食べないかい?ニムちゃん、ネムちゃん?」

 「おい、ここで食べていく気かよ」

 

 「私はご主人様とじゃなきゃ嫌です!!」

 「私もおねーちゃんに同じです」

 

 「ありゃー、こりゃ大変だ。そういうわけでご主人様お昼を一緒に食べましょう?」

 「じゃあ、お前だけ別室な」

 「いや、なんでさ!俺もニムちゃん、ネムちゃんと一緒に食べたいよ!」

 「安心しろちゃんとVIP室を用意する」

 「わーい、それなら安心…しないよ!?ねーえー、たべよー!一緒にたべよーよ!」

 「はぁ、仕方ない。メイド長?今日のお昼はなんだ?」

 「はい、サンドウィッチと冷たいスープです」

 「そうか。なら、昼ご飯をノルベルト一滴も残さず食べるんだったら同席を許可する」

 「はいはい!しまーす!誓いまーす」

 「…だそうだ。メイド長、ノルベルトの昼ご飯は熱々の鍋焼きうどんにしてくれ」

 「え!?ちょ、ちょっと伯爵!?まって!この夏季真っ只中の今日にそれはないよ!?」

 「かしこまりました。では早速シェフに伝えてきますね。」

 「待って!!メイド長!待って!普通に対応しないで!食べれないから!」

 「どうした?さっき一滴も残さずたべるって誓ったじゃないか?」

 「サンドウィッチを食べる気だったんだよぉぉぉ!」

 「そうか。ならVIP室で美味しいサンドウィッチを 独りで 食べるといい」

 「メイド長!熱々の鍋焼きうどんお願いします」

 「かしこまりました」

 

 そうして、やっとお昼にたどり着けた。

 

 はぁ、無駄に疲れた。

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