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拳王転生銀竜の武者修行  作者: 鳴神
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第8話 VSティアナ

俺とティアナが視線を交わし最初に動いたのはティアナだった。ステータスを視て俺が格闘家の職業で縮地のスキルがあることを知り近づかれるのを恐れたのだろう。

俺は小さいから懐に入られたら剣を振るう間が無くなり、一方的に攻撃を受けると考えたのだろう。素早く俺に近づく。

正しい判断だと思う。俺は敢えて彼女の行動を観る。

彼女が右手のレイピアで俺に袈裟斬りを放つ。戦いの基本は避けることにある。

相手の実力を知らないから自分より力が上の者の攻撃を受ける可能性もあるのだ。だから受けるという選択をするのは愚か者なのだ。


俺もいつもなら避けることを選択するだろう。だが彼女が俺のステータスを視ているのと同時に俺も彼女のステータスを視ているのだ。能力差を利用しないわけがない。


俺は袈裟斬りに合わせてレイピアの側面に右手の甲をあてレイピアを下方に押しながら彼女の右手に跳び手刀を振る。

彼女も俺の狙いに気付いたのだろう。すぐに右手を引くが遅い。

彼女が右手を引くよりも速く手刀が彼女の右手の親指を捉える。


「ぐぅぅ」


ティアナは苦痛の声を漏らし、レイピアを落とす。親指が折られたのだ。


周囲の兵士達が息を飲む。魔物ががむしゃらな攻撃をするのではなく武器を落させる狙いで攻撃したのだから俺をただの魔物とは思わないだろう。


これで二刀流は使えなくなった。接近戦も隙を作らないとリスクが高いことも理解しているだろう。早く魔法を使って対抗してくれないかな?


彼女は意を決したように魔力を唱える。

「身体強化」


俺はティアナを観る。彼女が使う魔法を。彼女が使う魔力の流れを。魔力が彼女の中心から全身に巡る。魔力が内側から漏れるように肌の表面にまで出て全身を覆う。


(竜の眼がLV4に上がりました。)


ここでスキルアップか。

これが身体強化か。どれ程違いがあるのか確かめてみよう。


彼女が右手を前に出す。魔力が右手に集まる。


「アイシクル」


(魔力感知LV1のスキルを取得しました。)


俺が踏み込む前に足下から氷柱が生えてきた。思わず跳んだのだが失敗だった。

彼女から一瞬視線を外してしまい、彼女の接近を許してしまう。


「ハァッ」


彼女はすでに左手のレイピアを引いており空中の俺にめがけて突きを放つ。

俺は両手に氣を集めて彼女の突きを白刃取りで受ける。勢いは止まらず身体に刺さると思い、腹部にも氣を集めて攻撃を受ける。

吹き飛ばされながら


(物理耐性LV1のスキルを取得しました。)


ナビィのアナウンスを聞いていた。突きの威力が思ったより高い。腹部から少し出血している。


「エアスラッシュ」


ヒールで治そうとする前に横に細く密度のある魔力が足に向かってくる。


さっきと同じように跳ぶのは悪手だな。


俺は縮地で横に大きく回避してヒールで回復しようとするが


「アイスバレット」


五本の氷柱が俺の目前に迫っていた。

咄嗟に全て回避したが最後の氷柱を回避する際に態勢が崩れた。彼女はその隙を狙って右薙ぎで確実に斬りに来た。

人間ならば確実に斬れていただろうが今の俺は竜で尻尾がある。

尻尾で地面を叩きその弾みで彼女のレイピアを避け、顔めがけて左手で殴りかかったが彼女も咄嗟に顔を反らした。

俺の狙いは顔ではなく首もとの襟だ。右手で襟を掴み、そのまま後ろに引っ張る。彼女は急激に後ろから引っ張られ足が浮く。


俺は空中で襟を両手で掴み右手を離しながら回転して尻尾で彼女の背中を打ち上げ腕力にものいわせて彼女のうつ伏せに投げ倒す。


彼女はうつ伏せで地面に叩きつけられ肺の空気を強制的に出されて声もでない。

身体強化で全身を強化されても俺のSTR(303)は彼女のVIT(134)を大きく上回っているのだ。ダメージも大きいだろう。


俺はそのまま彼女の頭の側に着地する。彼女は起き上がろうとしているがこれ以上の戦闘は命に係わる。

俺はすぐに彼女の肩を抑え、首を締めて意識を落とす。


王様が何かを叫ぶと同時に近くの兵士達が彼女の下に駆けていく。


「グァアアァ」


俺が吠えると兵士達が足を止める。


(威圧LV1のスキルを取得しました。)


こんな時でもスキルの取得か。


兵士達が足を止めるのも無理はない。小さい俺でも40kgはある人間を腕一本で投げ倒すのだから恐ろしいことだろう。


俺は彼女を仰向けにして打ち付けられた部分にヒールをかける。


肋骨辺りは罅が入る位の力を入れたからな。


(まだ小さな少女に酷い仕打ちを。)


いや、ステータスがそれなりに高かったからこれくらいならと思ってやっただけなんだ。


(鬼畜ですね。)


彼女強かったから。


(言い訳とは見苦しいですね。)


悪かったってば。


ふと視線に気がついて周りを見れば皆一様に驚いていた。何を驚いているのか?


(恐らくヒールを使っていることもそうですが倒した相手を癒す魔物なんて普通いませんから。)


それはそうだが魂は人間だからな。嫁入り前の娘さんを傷ものにする訳にはいかないだろう。


(その心意気に免じて今回は許しましょう。)


本当にありがとうございます。


(ヒールがLV4に上がりました。)


治療を終えた時にスキルアップした。やったね。


俺も治療するか。


自分の傷を治療していると王様が俺の側までやって来て頭を下げた。

彼女の治療に対するお礼だろう。俺は首を振った。殺し合いじゃないんだから治療するのは問題ない。まだ少女だし、将来がある。ここで死なせる訳にはいかない。

そんな想いで首を振ったが伝わっただろうか?


ティアナが担架で運ばれた後にもう一人の少女が側にやって来た。何か喋っていたが分からないので自然と彼女が持ってる本に視線がいく。俺は彼女の持つ本を指差した。

彼女はそれに気が付いて俺に本を返そうとするが俺は首を振った。代わりに彼女の手を掴んで二足歩行で図書館まで歩いていく。王様はその様子を見守った。


彼女は訳もわからず付いてきている。図書館に入り、彼女が持ってる本を元の場所に戻す。それから再び本を探す。なるべく絵が多く描いてあるものだ。

爪で切れないようにゆっくりページをめくって絵があれば彼女に見えるように指差し、次に文字を指差す。指差した絵がどの文字に当たるのか彼女に問いかけるように眼を向ける。

彼女はなんとなくこちらの意図を読んでくれたのか、一文字ずつゆっくり声に出しながら指差してくれる。

俺は理解してくれたことに安堵して首を縦に振って再び本に視線を戻す。

同じことを数度繰り返し覚えきれないので文字で残そうと思ったのだが書くものがない。

俺は眼が覚めた最初の部屋にインクとペンが置いてあったのを思いだし、本を持って彼女の手を掴んで部屋に向かった。

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