第6話 目覚めた後に
目が覚めたら見知らぬ部屋にいた。上を見ると屋根があり、俺は天蓋付きのベットに寝ていたようだ。周りを見ると高級感漂う家具が置かれている。
そのうちのソファーには12才くらいの背中辺りまで伸ばした蒼い髪に見透かす様な黄色い瞳を持つ一見クールな少女とテーブルを挟んだ向かいに10才くらいの肩まで伸ばした蒼い髪に美しい緑色の瞳を持つ好奇心旺盛な感じの少女が雑談しながらティータイムを楽しんでいた。
運が良かったのか悪かったのか俺は寝ている間に人間に見つかり捕まったらしい。寝ている間に殺されなかったのは良いとしてロープで縛られてるので身動きがとれない。力を入れた感じちぎれそうだが。
俺は仕方なく現状を考える。周りの品質の良い家具から俺を捕まえたのは金持ちであることは明らかだ。
俺の存在価値を知っているのに殺さずにいるのは別の目的があるのだろう。
その理由の一端でも分かればと思い少女達の会話を聞く。
「*******************」
「*******************」
何を話しているのか分からない。ナビィと普通に会話できてたから言語が変わらないのかと思っていたがそうではなかったようだ。
(郷に入っては郷に従えというものです。この世界の言語は自力で覚えてください。)
言葉が分からないんじゃここに居ても意味がないのでロープを引きちぎってドアに向かうが。
ダンッ !!
ベットから上手く降りられず床に着地する際に音を出してしまう。さすがに二人も気づいてしまったようでこちらに話かけながら近づいてくる。
俺は縮地でドアまで詰めて軽く跳んでドアノブを回して開ける。廊下に出てその長さに驚くも迷う暇はなく人が暴れずらそうな部屋を探しながら廊下を走る。
ナビィ。ここは何処だ?
(貴方がいたトータスの森より東にある迷宮国家ヴァンデウス王国の王都アルティナです。ついでですが王城内です。)
一番人が集まる場所じゃないか!!
最悪な状況に悪態をつくも場所が分からないため走り回るしかない。
(吉報です。速足LV1のスキルを取得しました。)
これだけ走り回ればスキルの一つも覚えるわ!!
後ろから先程の少女達が何か叫ぶと兵士達が追ってくる。
少女達はこの城でも高位の権限を持っているのだろう。
追ってくる兵士達を殺してしまえば捕まった時に殺される可能性があり、自分の首を絞めるも同然だ。捕まるのは仕方ない。だがタイミングは重要だ。こんな廊下で捕まるつもりはない。
(思考加速LV1のスキルを取得しました。)
色々考えただけなんだけどな。
それはさておき言葉が通じない以上俺の有用性を行動で示さなければならない。
対人戦はエヴァンに来て初めてだから加減がちょっと不安なんだがやるか。
後ろから追ってくる者はスルーして前から来て者は対人戦の実験台になってもらおう。
向かってくる兵士達は腰に携えている剣を抜かず素手で捕まえようとする。相手からすれば関係ないことだが俺からしてみれば剣で戦う方が強いのに手加減されてる様な気がして武術家としては実に不愉快な行為である。
なので俺に飛びかかってくる兵士の右手を掴み、そのまま腰を回転させてジャイアントスイングで後続に投げ飛ばす。
投げ飛ばされた兵士を避けられずまとめて4~5人倒れる。兵士達はポカンと口を開けて呆けている。
俺はそんなことはお構いなしに廊下を駆けて大きな扉を開ける。狙い通りの部屋だ。
扉の中は図書館である。ここを選んだのには理由がある。
一つは図書館はいわば知識の宝庫だ。兵士達が暴れたら本は傷付き復元にも時間がかかる。火を扱ったりしたら大惨事だ。俺は仮にも竜族で火を使える。刺激して火を使われたりしたら困るだろう。
(なかなか悪どいですね。)
今は命が大事だからな!!
もうひとつは単純にエヴァンの文字を覚えるのに本を拝借したかったのだ。
子供に読み聞かせる様な絵本があれば良いがそんな都合よくはいかない。奥の方に行き、近くにあった本を一冊拝借する。
わざわざ壁際まで追い詰められるように移動し本を見せつけるようにして口から火をこぼす。だんだん兵士達が集まってきたが誰も近寄らない。
「グァアアァ」
(プふっ!!可愛らしい鳴き声ですね。)
威嚇のため取り敢えず吠えてみるが恐怖心が湧かない声だ。自分でも分かってる。
そんな中、兵士達を掻き分けて最初の部屋で見た二人の少女が躍り出た。
少女達が何かを言っているが全く分からない。だがクールな少女がこちらを一瞥してから振り返って歩き出したので本を背中に乗せ後を付いていく。
彼女の後を付いてたどり着いたのはかなり広めの訓練所だろうか。しかし、周りに観客席らしき物があるのだから闘技場という方が近いかもしれない。
観客席の中央には玉座があり、王様らしき人が座ってる。俺と彼女達は闘技場の中央まで進み歩みを止める。王様が何やら話した後にクールな少女がもう一人の少女から手の平サイズの水晶玉を手渡されこちらを水晶越しに覗いてくる。
(鑑定のアイテムを使用されてますがどうしますか?)
鑑定っていうとステータス視られてるのか?
(はい。スキルもですね。全て防ぐこともできますが?)
ステータスとスキル、魔法はあえてそのままでユニークスキルは隠してくれ。
(分かりました。)
彼女は驚愕の表情を浮かべていた。
俺は彼女が何をやっているのか分からないという風に首を傾げて、彼女のステータスを見る。
ティアナ・ヴァンデウス
性別─女
職業─フェンサー
種族─人種
種類─人間
LV 25/100
HP 254/254
MP 118/118
STR 160
VIT 134
AGI 173(+20)
DEX 225
INT 110
MND 149
LUK 117
スキル
剣技LV4
突剣技LV5
二刀流LV3
気配感知LV1
魔力操作LV2
魔力感知LV1
見切りLV2
速足LV2
ユニークスキル
天啓眼LV1
魔法
エアスラッシュLV2
エアショットLV2
アイスバレットLV2
アイシクルLV2
レイLV1
身体強化LV3
装備
鉄のレイピア
鉄のレイピア
革の鎧
革の小手
革のブーツ
俺より全体的にステータスが低いがステータスが全てというわけではないことは俺自身がオーガとの戦いで証明している。
それに俺の知らない魔法ばかりだ。特に身体強化の魔法は気になる。
天啓眼って何だ?
(簡単にいってしまえば未来予知ができる眼です。毎回見れる訳ではないし、いつの未来かも分からないですが大きな確率で見た出来事は起こります。)
これは厄介なユニークスキルだ。
俺のステータスを見るということは理由がどうあれ戦わないといけないのだろう。
パリン!!
水晶が砕けて散らばり皆が驚いた。もちろん俺も驚いた。
ナビィ。あの水晶は一度使うと砕ける物なのか?
(いえ。ユニークスキルを無理矢理見ようとして負荷に耐えきれなかっただけです。)
意外と希少な水晶なのか?
(あれ一つで屋敷が買えるくらいには。)
マジか...
(一応この城にまだいくつもあるので気にしなくてもよろしいと思いますが。)
そ、そうか...でも俺が普通じゃないってことは明らかだよな。
(魔法耐性LV1のスキルを取得しましたよ。)
上手く誤魔化せたと思うなよ。
魔方陣が俺とティアナが内に入る範囲に浮かび上がり消えてから、彼女は俺を鋭く睨むと腰から二本のレイピア抜き構えて俺と対峙する。
流石に本があると戦いづらいのでもう一人の少女に向かって投げて俺も彼女の構えに応え右手と右足を前にだし四足スタイルで構える。
この勝負思った以上に苦戦するだろうな。