第29話 闇魔法
「そもそも闇とは何ですか?」
「俺の世界では光が無い状態を表すが、神話や宗教の多くでは、闇と光を、死と生、悪と善の対立を表現している。ただ光は空間の電場と磁場の変化によって形成される波、所謂電磁波の一種とされてるが闇にはそう言った科学的根拠がなく形がない。俺達が見ている物も光が目に刺激して明るさを感じさせているもので目を閉じれば光の刺激を受けず闇を見ることになる。形がないにしても色で言うなら間違いなく黒だな。」
「電磁波?科学?よく分からない事が多いですが貴方が言った通り闇には形がありません。それは闇魔法の特性の一つであり全部でもあります。」
俺の説明を理解出来なかったと言うことはこの世界は科学が発展していないのだろう。闇魔法の特性の一で全とはどう言うことだ?
「闇魔法は変幻自在、形に限らず、強度や性質も変えられます。」
ジミーが黒い短剣のような物を掌に生み出す。形から刃と柄が分かる光沢の無い柄から刃まで真っ黒の短剣だ。
シャドウエッジと言うこの魔法は黒い刃を放つ魔法であるが堅い壁に放つ際、強度を強くすれば壁に刺さるし、弱くすれば砕ける。水のような性質にすれば壁に当たる際、弾けて液体が散る。その液体にも純度や熱量等も変えられると言う。
「ただ闇魔法は汎用性が高いですがその分魔力の消耗が大きいです。」
「そうか。う~ん?とりあえずやってみるか。」
俺がイメージするのはただの鉄で出来た短剣。掌に魔力を集めてイメージを形付ける。刃は鋭く、柄は特徴の無い遠目に見れば黒い十字架のような形だ。ジミーと同じように掌に漆黒の短剣が現れる。柄は黒く刃は真っ黒でありながら夕焼けの光を受け光沢を放っている。
(シャドウエッジLV1を習得しました。)
ナビィのアナウンスを聞きとりあえず成功したのはわかった。
「とりあえず成功か?」
「そう………ですね。」
(相当のイメージがないと金属程の光沢は出ないんですが)
ジミーが何やら考え込んでいる間に俺は出来た漆黒の短剣の状態を確認する。柄を握った感じはプラスチックのそれと変わらない。刃を指で軽く弾くと金属音が響く。軽く曲げようとしても変形しない。試しに自分の腕を斬ってみる。少し硬い感触があったが浅く切れた。すぐにヒールを掛けて傷を消す。それなりの深さで斬るつもりだったが思ったより浅かった。
「ちょっとシルバー、いきなり何してるんですの!?」
「本当ですよ!心臓に悪いですし教室が血で汚れるじゃないですか!」
「大丈夫ですよ。気を付けてますから。」
俺はシャドウエッジに付いた血を舐める。鉄の味の他にも甘い味がする。腕に付いた血も舐めとる。これで教室が汚れる心配は無くなった。
「そんじゃ最後に、ふっ!」
シャドウエッジを空中に放り手刀で刃の側面を一閃。刃が半ばから折れ漆黒の短剣が消滅する。
「強度も鉄の短剣と変わらないな!これは使える!」
これだけの強度があれば投擲に使える。
「ジミー!他には何か無いのか!?」
「概要は教えました。後は創造力の問題ですから息詰まった時にまた聞いてください。セフィリア様はどうしますか?」
「ええ、私にも教えてくださいまし。」
ちょっと興奮した俺に冷たく返すとジミーはセフィリア闇魔法を教え始めた。