第25話 買い物
昨日は大変だったが良いこともあった。進化出来たし、金も貰えたし、何よりライオネルからアイテムボックスを貰えた。
ベルトに着けるタイプの物だが「学校生活を送るのに教材を入れる物がないと不憫だろ」と言ってプレゼントしてくれたのだ。他にも「金を仕舞うのに」とか、「食料入れるのに」とかの理由もあったが昨日、ライオネルの執務室から出る時に渡されたのだから同じ事だ。
今日はティアナの部屋で目を覚まし、いつものように朝食を……摂れなかった。いつものように椅子に座ろうとして「ミシッ」という音ともに完全に目を覚まし、昨日の夕食と同じ様に尻尾で支えて朝食を摂った。
朝食後、いつものように食堂の外で待ってたギルバートと一緒に外に出る。ただし今日は馬車に乗らずそのまま歩いて街に出る。
ライオネルから貰ったアイテムボックスはベルトがないので仕方なく適当な紐をくくりつけて首に提げてる。
予め用件をアルディから聞いていたギルバートは俺と昨日の事を話しながら目的地に向かって歩いていた。
「おし、到着だ。ここが王国御用達のロベルト商会だ。」
ギルバートが案内したのは城門を出て20分くらい歩いた所にある大きい店だ。中では色々な種類の道具や武器、防具、魔道具が並べられている。奥の扉の先には鍛冶屋も置いてある。
王国御用達なだけあって客も多く、俺が店に入ると多くの視線を感じる。仕方ないとはいえ中々慣れるものでもない。思わずため息が出る。
「いらっしゃいませ、騎士様。本日はどの様なご用件でしょうか?」
ギルバートに話しかけたのは美人秘書というような容貌でメイド服に似た服を着て小さな丸眼鏡の奥の瞳から知的な印象を受ける。
「すまないが今日の客は俺じゃなくてコイツなんだ。」
ギルバートが俺を指差す。
「っ!これは失礼しました。それでお客様のご要望はどの様な物ですか?」
少し驚いたもののすぐに立て直しきちんと対応する出来る秘書さんだ。
俺は立ち上り首にかけたアイテムボックスを店員に見せて言う。
「すまないがこれを付けられるベルトが欲しい。勿論俺が付けられるベルトで戦闘にも耐えられるよう出来るだけ丈夫な物を頼む。」
「ベルトの位置はどの辺りがよろしいですか?」
「そうだな………」
自分の身体を触っていく。胴長な俺は人と同じ腰の位置だと手が届かない。胸元まで上げると今度は翼が邪魔になる。
取りやすい位置を考えて触れていくと腰より高く、翼の根元より低い位置で手を止める。
「この辺りで頼む。」
「畏まりました、少々失礼します。」
店員が紐を取り出し、素早く俺の胴回りを測る。仕事も迅速で無駄がない。
「資金の方はどれくらいを予想されておりますか?」
今の俺の所持金は金貨1、銀貨4、大銅貨8、銅貨4枚だ。今ベルト以外に必要な物があるかと聞かれれば特にないと言える。だがこれから必要な物もあるかもしれない。そこまで考えて……
「金貨1枚で……」
とりあえず出資金を提示する。
「畏まりました、すぐにご用意致します。よろしければベルトの置いてある所までご案内しますが……」
「よろしく頼む。」
「畏まりました、ではこちらへ。」
頭を下げてから案内を始める。
ベルトが置いてある場所に来るとプレーン、メッシュ、ウエスタン、コンチョと色々な種類のベルトがある。しかし、ここで一番重要なのは使われてる素材だ。種類やデザインは二の次である。
「お待たせしました。こちらがレッドボアの皮を使用したプレーンベルトになります。火に強く、斬りにくく、戦闘でも耐えられる物だと思います。値段も銀貨6枚とお客様のご要望通り金貨1枚以内に収めてあります。これ以上の物ですとレッドオーガの皮を使用した物がございますがそちらは金貨2枚になってしまいます。勿論強度の方もレッドボアよりあることも保証します。」
(レッドオーガの革ベルトを買うには少し金が足りないか。)
「分かった。急ですまないがここで素材を売りたい。」
アイテムボックスには昨日のヴェノムスパイダーの爪と牙がある。それを売れば金貨2枚に届かないだろうかと考えて進言してみる。
「畏まりました。では素材をこちらの台に置いていただけますか?鑑定担当の者を呼ぶのでお待ちください。」
店員さんが近くの平台を持ってきてから人を呼びに行った。
「シルバーはレッドオーガの方が欲しいのか?」
「一生使う訳ではないが魔法学校を卒業するまでは使いたいからな。猪の皮では不安だ。」
「でも良いと思うぞ。レッドオーガは皮が丈夫で火に強いのもそうだが魔法に耐性がある。それでも金貨2枚で買えるのはベルトだからだろうし、恐らく俺らの背後に国があるからだな。サービスしてくれてるんだし貰える物は貰っとけ。」 「それならば良いか。」
平台にヴェノムスパイダーの爪2本と牙4本を置く。
店員さんが男を連れて戻ってくる。
「お待たせしました。」
「じゃあ鑑定の方をさせていただく。」
男が平台に置かれたヴェノムスパイダーの爪と牙を見ていく。
「爪は傷もなく状態はかなり良いな。大抵の奴はヴェノムスパイダーの攻撃を盾で防ぐから爪に傷が付いちまうんだ。牙は2本はそこまで状態が良くないな。この2本は火を受けちまったんだろうよ、焦げた痕がある。残りの2本は大丈夫だな。それを踏まえると爪2本で銀貨6枚、牙4本で銀貨3枚の計銀貨9枚って所だな。売るか?」
男の説明を聞いて納得したし、銀貨9枚なら買えるので了承した。
「それじゃあ金貨2枚でレッドオーガの革ベルトを頼む。」
「畏まりました。こちらの品の正式名称は赤鬼の革帯となります。お買い求めいただきありがとうございます。そちらのアイテムボックスをお付けしますので少々お待ちください。」
少しして店員さんがアイテムボックスが付いた赤鬼の革帯を持ってくる。
俺はそれを受け取り自分で巻いてみる。調整も容易で特に問題なく装着する。
「問題ないな。選ぶのを手伝ってくれてありがとう。良い買い物だった、都合が出来たらまた来よう。」
俺はそれだけ言ってギルバートと一緒に店を出る。背中から「またのお越しをお待ちしております。」と店員さんの声を聞こえ、足取り軽くギルドに向かうのだった。