第17話 ボス部屋 VSミノタウロス
扉を開けて中に入ると少し狭い広場があった。直径15M程の円形で高さは5M程あり壁、床、天井は形が整った灰色の煉瓦のように敷き詰められている。その中心には牛の顔をした人がいた。
高さは2Mを越え、上半身は筋肉が隆起していて見るからに力があると分かるが下半身は少し太いいう程度しか筋肉が付いておらず上下のバランスが悪い。ただ全身が茶色の毛で覆われていてあまり違和感がない。両手で斧を持ちこちらを見ている。こちらはステータスを視てみる。
種族─牛人種
種類─ミノタウロス
LV 40/40
HP 873/873
MP 189/189
STR 457(+100)
VIT 416
AGI 278
DEX 309
INT 156
MND 284
LUK 157
スキル
斧技LV5
拳技LV3
豪腕LV1
頭突きLV5
物理耐性LV1
魔法耐性LV1
恐怖耐性LV3
魔法
身体強化LV2
これがミノタウロスか。ステータスが高いのは分かっていたが身体強化を使うなんて聞いてないんだけど。物理と魔法の耐性も少しあるし、頭突きってスキルであるのかよ!!
頭の中で愚痴をこぼしているとミノタウロスが鼻息を荒くしている。今にも襲って来そうだ。
「ブムゥオオオオー」
とミノタウロスが室内に響く程の雄叫びをあげ、身体強化を使うと襲って来た。
(聴覚強化LV1のスキルを取得しました。健闘を祈ります。)
ミノタウロスの雄叫びが耳障りだったが、ナビィがスキル取得と共に俺にエールを送ってくれてちょっとだけヤル気が出てきた。
俺とギルバートは即座に2方向に散開したがミノタウロスはギルバートの方に向かっていった。
「おいおい、俺狙いかよ。」
ギルバートは素手で受けられる訳がないで大剣を抜いて構えた。
俺は身体強化を使って壁を駆け登り、ミノタウロスの真上の天井に跳んで雷纏を使って真上から強襲をかける。
(並列思考LV1のスキルを取得しました。)
ナビィのアナウンスを思考隅に置き、雷纏を右手に集中させ、氣を織り混ぜて後頭部目掛けて拳を降り下ろす。
ミノタウロスは俺を視界に入れてなかったのか俺の攻撃を無防備に受けて地面に頭から突っ込む。俺はすぐにその場からバックステップで離れミノタウロスの様子を見るとうつ伏せで倒れたまま何故か起き上がらない。
「麻痺してる。やるなら今のうちだ。」とギルバートが叫び、俺はすぐに両手の甲を踏みつけて砕く。麻痺するとはラッキーだ。極運も良いところで役に立つ。
(脚技がLV6、練氣操作がLV6、身体強化がLV4に上がりました。まだ油断大敵です。)
スキルレベルが上がったが、筋肉が硬くて踏み砕くのに3、4回かかった。
そのせいか麻痺が解け、腕を使って起き上がる。斧は使えないが思ったよりピンピンしてる。とはいえ手が使えなければもう勝負は決まったも同然だ。
ミノタウロスはようやく俺を視界に入れたようでギルバートそっちのけで俺を見ている。
「オマエノテキハ、オレダ。」
構えてから手をクイクイと挑発するようにやる。
ミノタウロスは挑発されて頭から突っ込んで来る。俺の前で急停止し、頭を右下から斜めに振り上げる。
俺は攻撃に合わせて数歩後ろに下がって角が刺さる位置からずらし、横顔にカウンターの要領で雷纏を右拳に集中させ降り下ろす。角に刺さらないが当然相手の方がパワーがあるので俺は打ち上げられたがた、ミノタウロスは顔にもろに受けて怯んでいる。
俺はスキルさまさまでダメージが軽減されたが右手が罅割れ、肩が脱臼してるのを感じ、すぐにはめてからヒールで治療して着地する。
(拳技がLV7、苦痛耐性がLV5、丈夫がLV3に上がりました。治癒魔法があるとはいえもう少し自分の体を御自愛してください。)
珍しくナビィが心配している。俺はそのことは嬉しいがスキル向上には持って来いの相手だから止める気はない。
ミノタウロスは今度は左下から斜めに振り上げるが俺も位置をずらして左拳を降り下ろす。打ち上げられまたヒールで治療する。
(ヒールがLV6、雷纏がLV3、魔力操作がLV5に上がりました。)
スキルレベルが上がっていく。やはり実践に勝る経験はない。
ミノタウロスは角で突けないと分かると腕を振り回し始めた。俺は攻撃を見切り躱し、隙があれば攻撃した。
(見切りがLV6に上がりました。)
というかミノタウロスの動きがさっきより遅い。
ミノタウロス
HP 306/873
MP 0/189
ステータスを見るとMPが0、魔力切れになっていた。
あれ?ミノタウロスが魔力切れってことはそれよりMPが低い俺は?
シルバー
HP 96/183
MP 47/168
と思って自分のステータスを視てみると大分減っているがまだ少し余裕がある。
(身体強化のレベルと魔力操作のお陰で魔力を無駄に消費しないで済んでいます。)
ナビィが疑問に答えてくれる。
教えてくれてありがとうナビィ。
(私の役目ですから。)
ナビィが少し素っ気なく答える。
俺は苦笑して横から振られたミノタウロスの腕を跳んで躱すと待っていたとばかりに真っ直ぐ頭突きして来る。
両足で眉間に蹴りいれる。空中だったので威力を殺す為の蹴りなので威力はないはずだがミノタウロスが追撃に来ない。
ミノタウロスを見ると痙攣して動けてない。また麻痺したようだ。このチャンスを見逃す程俺は甘くない。
俺は縮地で顔の前まで距離を詰めムーンサルトで顎を蹴りあげてその勢いで片足を蹴っ飛ばし態勢を崩す。
背中に飛び乗りうつ伏せに倒れてくミノタウロスの上がった顔を床に着く直前に踵落としで地面に叩きつける。
「ブォォ」
ミノタウロスが短く呻き声を上げる。
ミノタウロス
HP 138/873
MP 8/189
頭に着地してステータスを視るとMPが少し回復している。早々に決着つけた方がいいな。
背中に移り、左拳に雷纏を集中させ氣を織り混ぜ瓦割りのように背中に突きいれる。衝撃が背中から内部に、そして腹伝わる。鎧通しと呼ばれる技である。
「ゴフッ」
ミノタウロスは血を吐き息絶えた。
(レベルが18に上がり、大物喰いがLV3に上がりました。とりあえずご無事でなによりです。)
ありがとうナビィ。進化まで後2レベルだ。今回の戦いは最初の一撃で麻痺したのが良かった。あれで早々に手を使えなくできたので助かった。
「ようやく終わったか。というかよく1人で倒せたな。」
「サイショノイチゲキデ、マヒデキタ、ノガヨカッタ。」
「だな。」
「ギルバート、ツノハ、ドウトレバイイ?」
「任せろ。」
「カワモ。」
「はいはい。」
ギルバートが角を取り、毛皮も剥いでいく。
いただきます。
そして俺は肉に齧り付く。地球で食べた一般の牛肉よりいい味がする。肉を爪で切り、火の息で焼いて食べる。カルビの味がするのにそれに合うタレがないのが悔やまれる。折角だからギルバートに焼いた肉をお裾分けしよう。
「オスソワケダ。」
「おう、サンキュー。」
ギルバートと肉を食べていると口の中で硬い触感があった。
骨かな?まあいいか。
ガリッと噛み砕いて呑み込む。
(魔石の吸収を確認しました。全ステータスが上昇します。MP回復速度LV1のスキルを取得しました。)
魔石?骨じゃなかったのか。
「どうかしたか?」
首を傾げている俺を不思議に思ったのかギルバートが聞いてくる。
「魔石を食べたらしい。」
「魔石を食べた?おいおいマジかよ。魔石はあまり出てこない素材で1番高く売れるんだぞ。そもそも魔石は食べる物じゃないだろう。」
若干呆れ口調だ。
「でも、ステータスが上がった。」
「本当か?」
「少しだけだが。」
「ギー」
話している内に次の階層の扉が開く。
次の人を待たせるのも忍びないのでとりあえず扉を潜ると広場があった。10階層の広場には魔方陣が2つあった。
「あの魔方陣は?」
「この迷宮は10階層ずつにボス部屋があり、その先には転移魔方陣があるんだ。ただそれを利用するには一度その階層まで行って使用するしかない。だから俺は前に一度来て使ったことがあるがお前が来たことがなかったからここまで一緒に来た。だがこれでお前もここの魔方陣を使える。」
「分かった。面倒がなくて助かる。ミノタウロスとまた戦いたい時はどうすればいい?」
「それは初めからやるしかないな。ところで時間が4時くらいになるがどうする?」
「ミノタウロスを倒せたからもう帰る。戻るのはどっちの魔方陣だ?」
「こっちだ。」
ギルバートが先導して魔方陣に入り俺も続いて入る。すると視点が一瞬で変わる。最初の階層の外れの方にいるようだ。すぐに入口が見つかり外に出る。
まだ日が出ている。ギルドに行って報酬を貰わなくては。初めてもらえるお金にちょっと気分が高揚しているのが自分でも分かる。
「ギルバート、ギルドに行く。」
「報酬は貰わないとな。」
そして俺達は意気揚々とギルドに向かうのだった。