第15話 夕食後
ティアナとシルバーと一緒に食事した後、セフィリアはアルディの私室に向かう。シルバーの冒険者登録についてギルバートに話を聞くためである。
監視役と言っていたから迷宮でのシルバーの行動をアルディに報告していると思ったのもあるし、いなくてもアルディに呼び出しを申し出ればいいと思ったからである。
「お兄様!失礼しますわ。」
「セフィリア。ノックくらいしないか。」
急にやって来たセフィリアに呆れつつも部屋にやって来た理由も何となく想像が出来るから怒るに怒れない。
「そんな事よりギルバートは...いますわね。」
「あぁ、セフィリアか。ちょうど今日のシルバーの行動を報告書にして持って来たところだ。」
「それは良かったですわ。それでシルバーが冒険者登録をした経緯は教えてくださるのでしょうね?」
「分かっている。アルディとその話をするつもりだったからな。」
「まぁそういうことだ。とりあえず座ったらどうだ?」
「えぇ、そうしますわ。私は紅茶がいいですわギルバート。」
と言って机の近くのソファに座る。
「はいはい。アルディもこっちで話を聞かないか?」
「いや、ここで十分だよ。だけど紅茶はもらえるかな?」
報告書に目を通しながら言う。
「分かった。で、シルバーの冒険者登録についてだったか?最初はダーウィンさんに従魔登録以外に方法がないか聞いたんだが、シルバーに興味津々で鑑定したら冒険者登録しないか、と言われたのでな。登録には名前が必要だったから名前を付けてな、死ぬことはないと言ってたから試しにやってみようと思ったんだが、シルバーが自分で執筆しはじめてな。血印までやって、ダーウィンさんが魔法を使ったら普通にカードが出てきただけだ。ダーウィンさんも前代未聞だと言っていたよ。」
「それはそうだろうね。ギルドカードが出てきた理由はどう考える?」
「普通に考えて記入した内容に間違いがないからだな。」
「そうですわね。魔物に職業が付いてること事態間違いだと思いますが、事実合っているから出るんですものね。」
「シルバーが自分で記入したのなら自身のステータスを見れるんだね。」
「それはそれで新しい発見ですわね。そういえば命名はどのようにしたのですか?」
「アルギュロスだとアルディと被るからお前は今からシルバーだ。って言っただけだ。」
「どっちも銀を示す名前か。」
「なんて安直なことを!」
アルディは名前の意味を理解し、セフィリアはそのことにご立腹なようだ。
「でも従魔でないのに、お前は今からシルバーだ。ってだけで名前が付くとは思えないんだが?」
「それこそ頭がいいから言葉を理解して納得したんじゃないか?」
「あの子なら自分で名前を決められると思いますわ。」
結局は分からず仕舞いで、むしろ謎が深まっただけだ。
「それにしても生まれてそんなに経ってないとは思ったけどまさか生後5日だとは思わなかったな。」
「生後5日だと!」
「えっ!生後5日ですの?」
アルディもセフィリアもこれには驚いたようだ。
ティアナの話ではレベルの割りにスキルが多くそのLVもそれなりにあったそうだ。生後5日で取得出来る数ではない。
それにこれまでの対応からしてみても生後5日で出来る事ではない。
ギルドカードが正式に出た以上生後5日というのは間違いない。
「人でも魔物でも種族固有のスキルとユニークスキル以外は生まれた時にスキルを持たないはずだ。それをたった5日で。」
「昨日は食事の後で中庭で魔法の練習もしてましたわ。そのときは身体強化と私の知らない雷魔法を使っていましたわ。ティアナ姉様が言うには戦う前は扱える魔法は火の息とヒールだけだったと言ってましたわ。」
「短時間での魔法の取得!?もしかしたらシルバーのユニークスキルの1つはスキルの早期取得が可能なスキルということではないか?」
「それならば確かに納得できるものがありますわ。レベルに関しても同じかもしれませんわね。生後5日でレベル14は早すぎますから。」
「確かにそれならば納得だな。だが戦闘に関しては疑問が残る。ティアナとの戦いを見たがシルバーは明らかに対人戦に馴れている。それに迷宮での戦いも一対多数の戦闘に馴れているのかポイズンスパイダー8匹に対して効率的に戦って掠り傷1つで済んでたからな。」
「ポイズンスパイダー8匹なんてお前でも危ないんじゃないか?」
「あぁ、俺もそう思って手助けしようと思ったらシルバーが突っ込んでいったんだ。結果はさっき言った通り心配は杞憂に終わったが。それにあいつは頭がいいがバカでもあるかもしれない。」
「どういうことですの?」
セフィリアの眉間に皺がよる。
「まぁ、そんなに怒るなよ。あいつ倒したポイズンスパイダーを毒抜きもしないでいきなり食い始めたんだから。」
「ポイズンスパイダーはそれなりに毒が強かったと思うんだが。」
「あぁ、そのせいか食った後、腹を押さえて悶えてたからな。」
「そのまま放置したんですの?」
今度は冷たい声が聞こえた。
「いや、勿論竜に効くか分からないが解毒薬を渡そうと思ったんだ。だけどシルバーに断られたんだ。理由は分からないが。」
「変な竜だな。それで悶えている間はどうしてたんだ?」
「ずっと自身にヒールをかけていたな。それで悶え終わったらまたポイズンスパイダーを食べ始めたんだ。流石にバカかと思ったな。」
「その言い方だと次に食べた時は何ともなかったんだな?」
「そういうことだ。その後も食っては痺れたり、眠ったり、壁に食らいついたりしてな。だけどどれも一度解けると2度目はないんだ。」
「ということは物凄い早さで耐性が付いているのですわね。」
「そういうことだと思うな。」
「それもユニークスキルの影響か。」
アルディがしみじみ言う。
「それにあいつ、魔物を倒すのはいいんだが持ち帰ることを忘れて、方法も考えてなかったからな。」
「確かにそれはバカだな。」
アルディは苦笑し、セフィリアも同様に思ったのか何も言ってこない。
その後も色々考えてみたが結局シルバーはやはり異常であることが証明されただけであった。