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第 六 話












学校が始まって1ヶ月ちょっと。そろそろ、高校では定期テストが始まる。春ちゃんは高校に入って初めての定期テストで、若干ピリピリしている。朝も無言でご飯を食べて、急いで学校へ向かっていった。


春ちゃんの高校は地元じゃ有名な進学校で、学力には相当な力を入れている。お母さんは春ちゃんに期待をかけてるのか、と思ったが、そうではないみたいで、春ちゃん自らその高校へ進むと言いだしたみたいだ。春ちゃんが出て行った後、朝ごはんを、お母さんと二人で食べながら、そう教えてもらった。


たぶん春ちゃんは私より頭が良い。私が進んだ高校は中の上くらいだし、成績もそれほど特別良いものではなかった。だから春ちゃんに勉強を教えるなんて、姉らしいことが、したくてもできない。自分の情けなさにため息をつけば、目の前のお母さんが心配してくれた。

姉らしいことってどうすれば良いのか。考えれば考えるほど、分からない。また奈緒に相談しよう。そうしたら、何か糸口が見つかるかもしれない。






「姉らしいことね…そう聞かれたら分かんないなー」





学校が終わって、いつものカフェに奈緒と寄り道をした。このカフェは、いわゆる隠れ家みたいなところで、常連さんが多い。私と奈緒がこの店を見つけたのは、去年の梅雨の時期だった。雨足が強まり始めて、雨宿りをしようと立ち寄ったのがキッカケ。居心地いい雰囲気に、お互い気に入り、月に何度か来ている。オーナーの人とも顔見知りになり、たまにサービスをしてくれる。


快く相談に乗ってくれた奈緒は、何時も注文するカフェオレのストローをクルクル回して、私のアイスコーヒーを見つめていた。





「なんかないかな?」



「そう言われてもね、意識したこと無いし。きっとそういうのは無意識でやってるもんよ。そこまで意識しなくてもいいんじゃない?春ちゃんがヘルプの信号を出していたら、応えられる範囲で助けてあげたらいいんだよ」



「そんな信号、春ちゃん出してくれるかな…」



「それは分かんないけど、一番傷つけるのは、信号を出してるのに、気づいてくれないってことだよ、ただでさえ、思春期で複雑なんなだから、よく春ちゃんのこと、見てあげなきゃね」




奈緒のアドバイスは、私の中にストンと流れ込んでくる。やはり、奈緒は長女だけあって、姉らしい。春ちゃんのお姉ちゃんは、奈緒みたいな子が良かったのだろう。奈緒のことが、ちょっと羨ましく思った。



「なるほど…そうしてみる。最近奈緒に頼ってばっかだな」



「そんなの気にしなくていい。誰だって、急に家族が増えたら悩むよ」



優しく微笑んだ後、「そうだ」とレポートの話に変えた。




「あたしまだ終わってないんだよね、空は終わった?」



「うん、終わらせた」



しれっと言うと嘘ーって嘆く奈緒。




「どーしよ、提出、週末だよね。家帰ってたらレポート仕上げる時間ないよー」




奈緒の家は大学から2時間かかる。確かにバイトを終えた後に帰れば終電ギリギリな上、そこからレポートを仕上げる気力などない。




「やばいね、どうする?あ、私の家泊まりにくる?そっちの方が近いんじゃない?」




「いいの?空が良いんだったら、お言葉に甘えようかな」



「いいよ」



「ありがと!助かるー」




奈緒は嬉しそうに笑った。

奈緒が泊まりにくるのはこれが初めてではない。前にもレポートに追われて私にすがりついた事がある。あの時は提出期限前日で、今回より相当やばかった。切羽詰まった奈緒は面白かったけど。




「あ、てことは、噂の春ちゃんに会えるってことだよね、やばい、美少女に会える!」




少し興奮気味の奈緒を冷たい目で見ながら、春ちゃんは奈緒を見て、どんな反応をするのか少し気になった。














「あ、なんかお土産持っていこ」



「そんな気つかわなくていいよ」



「いや、だって、美少女と初対面だからさ、好印象持って欲しいし」



「美少女関係ないでしょ」




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