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第 十 話


























「ふぁ〜…眠い」




奈緒がパソコンの画面に張り付いていた顔を上げ、欠伸を一つ。部屋の時計の針は、24時を過ぎていた。





「終わりそう?」



「んー微妙…空、先に寝てていいよ?」



「ん、大丈夫、明日昼からだし、起きとくよ」




奈緒はごめんと言ってまたパソコンに向かった。私は後ろのベッドにもたれながら、レポートに取り組む奈緒の横顔を時折見つめながら雑誌を読んでいた。部屋には、奈緒の細い指でキーボードを弾く音だけが、軽快に聞こえる。私はふと、今日、シンさんに言われたことを思い出した。


奈緒にはそういう気持ち、いわゆる、恋心を抱くことは無いのか、ということだ。考えてみたこともなかった。本当に。奈緒は良き相談相手で、一緒に居て、苦痛に思うこともない。ケンカは、些細な口喧嘩ならあるが、派手に言い争ったことはない。奈緒が隣にいることが当たり前になりつつある今、シンさんに言われたことは、ちょっとどきりとした。

真剣な表情でパソコンに向かう奈緒の横顔は、可愛いというか、綺麗だと思った。最近切ったという髪も、似合っている。前に褒めたら、顔を真っ赤にしてたっけ。

あれ。おかしい。自分の中の奈緒が、いつもよりも、可愛くなっている気がする。

シンさんに言われたことを気にしすぎているだけだ、きっと。

奈緒は良き友達だ。私の理解者だ。だから、そういう対象にはならない…でも、


もし、


何かのキッカケで、


私がそう思ってしまったら、どうしたらいいのだろう。私はしばらくグルグルと考えすぎて、煮詰まってしまった時、奈緒が私の肩を叩いた。





「どした?」




不安そうに私の顔を覗き込む奈緒。いつもならそんなに見ることのない、奈緒の黒くて大きな瞳に、吸い込まれそうになる。






「…」




「空?…大丈夫?」




今、自分は情けない顔をしているのだろう。顔が、奈緒が触れた肩が、熱く感じる。奈緒の顔がより真剣なものに変わった。奈緒がこちらに向き直るように態勢を変えて、私を見つめてきた。




「あ、うん、大丈夫。ちょっと雑誌読むの疲れちゃった」




笑ってごまかし、雑誌を閉じた。奈緒に顔を見られたくなくて俯くと、奈緒がグッと近づいてきた。




「しんどいなら早く寝なよ?あたし邪魔しないようにさっさと終わらせるからさ」




奈緒には体調が悪いように見えたのか、早く寝ろと言った。こちらの緊張が伝わらないで良かった。だって、普通おかしい。ただの友達と二人きりで、緊張するだなんて。

しかも、その相手が、奈緒だなんて。

私は、ここは素直に言うことを聞いておこうと、「じゃお言葉に甘えて」と近づきすぎた奈緒の肩を両手で押して、距離をとり、立ち上がろうとした時、軽く腕を掴まれた。




「…え、どしたの?」





「あのさ、なんかあった?」



奈緒の顔は、不安な表情で、黒く大きな瞳は揺れているように見えた。



まさかシンさんにあんな事を言われて、分かりやすく動揺している自分がいるなんて、言えるわけがない。でも、奈緒があまりにも真剣に見つめてくるので、嘘一つ考える事もできないぐらい、私は固まってしまった。



振り絞って声を出そうと思った時…
















部屋の扉が開いた。


















(誰?)















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