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檻《CAGE》〜警視庁超心理現象犯罪特別捜査班〜  作者: kinoe
FILE.0「警視庁超心理現象犯罪特別捜査班」
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二人だけの特別捜査班2

ピー〇君!

「失礼しまーす…」

そう言いながら、俺は、金属製のドアノブを右手で握り、自重をかけながら扉を手前に引き開けた。


まぁ…誰もいないだろうが


でも、もし万が一、誰か部屋にいて、「あっこいつ、何も言わずに入って来た。」って思われたら、第一印象は最悪になるだろう。

そんなつまらないことで、意にそぐわない異動とはいえ、見知らぬ部署でのスタートダッシュを躓くわけにはいかないのだ。

保険だ。保険。

そんな言い訳が頭を駆け巡る。


キィ…


長年、倉庫として使われ、頻繁に利用されなかったためか、扉の蝶番が新しい潤滑油を求めて、小さな悲鳴をあげる。


「へぇ…」


想像していたよりも広く、小綺麗にまとめられていたため、思わず感嘆の声をあげた。


まず目に入ったのは、応接間として設けられたであろうスペースだ。

四方が中央に向かってすり鉢状にやや低くなっていた。

その窪んだ床の左側に黒色革張りの1人掛けのソファーが二つ、そして、それと同じ仕様の3人掛けのソファーが、洒落たガラステーブルを挟んで向かい合うように配置されている。

そして、3人掛けソファーの上には、警視庁マスコットキャラクターであるピ○○君の着ぐるみが座った状態で置かれていた。


「何でこんなところに…」


何となく気になって、着ぐるみに近づく。

頭部を持ち上げて見るが、特に変わりはない。


…クス…クス


また、小さな笑い声みたいなものが聞こえた気がした。

思わず辺りを見回す。


…が、特に人影は見当たらない。


新しい環境に緊張してるのだろうか?


「…柄でもない」


自分の考えを否定するようにかぶりを振りつつ、再度部屋を見回す。


入り口から見て、先ほどの応接間の左手には、黒色L字型の一見してバーカウンターを模したようなカウンターテーブルと、座面が白色で、腰高の背の高い椅子が三脚設けられている。

カウンター側には、給湯室代わりだろうか、簡易的なシステムキッチンが設けられていた。

そして、応接間との間に置かれた名前の分からない緑色のシダ植物類の観葉植物がモノクロの世界に色を与えている。


変わって、応接間の右側は、クリーム色のパーテーションを経て、5つの事務机が並んでいた。

それぞれの卓上には、何も置かれておらず、まだ誰も着任していないであろうことがわかる。


「やっぱり俺が最初か…」


言いながら、俺は手前の事務机の椅子を引き腰掛け、ブリーフケースを卓上に置いた。

ギシッと鈍い音を立てながら、座面の下のサスペンションから空気が少し抜け出ていく。


「ふぅ…」


俺自身もサスペンションの空気のように、小さなため息を吐き出し、妙な緊張感から解放された。

別に眠い訳ではないが、誘われるように瞼を閉じる。


目を瞑ったまま、こんがらがった頭を整理する。

現状とこれからのこと、


まずは…上司がどんな奴かだ。

それで仕事のモチベーションが大分変わる。

普通なら2〜3年位でそれぞれ異動になるが、ここは新設された部署だ。

どうなるか想像もつかない。

辞めますと根をあげるまでそのままか、それともお払い箱的に問題を起こした奴を次々と寄越してくるか。

いずれにせよ、飼い殺されることに変わりはない…か。

そもそも、こんな部署に来る奴なんて、余程変わった奴か、厄介払いされた奴だろう。

そう…俺みたいに。


そこまで考えて、思考を止める。

昔の出来事を鮮明に思い出してしまいそうになったからだ。

それだけで、胸の奥がキュウッと締め付けられる感じがする。


その時だった。


…ネェ…クスクス

ネェ…ネェ…


『ねぇ…わたしはここにいるよ。』


今度は確かに、ハッキリと聞こえた。

若い女の声だ。


反射的に立ち上がって目を開き、再度辺りを見渡す。


だが、やはり誰もいない。


「誰かいるのか?」


部屋中に響くように声を張るが、当然返答はない。

よく考えれば、さっきの声は頭の中に響いてくるようだった。

とは言え、聞き違いでないことは、自分自身がよくわかっている。


パーテーションの向こうへ移動すると、1人掛けのソファーに座っているピ○○君と目が合った。

薄暗い部屋のため、その着ぐるみの顔が陰って見え、薄気味悪い表情に見えた。


そもそも、このマスコットキャラクターは何をモデルにして作成したのだろうか?

他県の警察マスコットは比較的地元に関係ある動物などをモデルにしているが、このピ○○君に関しては、もはやこの地球上に存在してはいけない生物だといっても過言ではないだろう。

その頭のアンコウみたいなパーツ…何なんだよ一体?

まだファンタジーものに登場するキメラの方が、原型を保っていて安心出来るのではなかろうか。

と考えたところで、異様な違和感が突然俺を襲う。



何だ?

何かを忘れている。


首を左に回すと、3人掛けのソファーが目に入る。

そこで、違和感の正体に気づいた。


そうだ。

この着ぐるみは、さっきまで3人掛けのソファー座っていたはず…


鳥肌が立つ。

前腕から二の腕、背中を通り頭から寒気が一気に抜ける。


その不安、恐怖を払拭しようと俺は着ぐるみに近づく…

すると、部屋中の小物がカタカタとなり始め、それに呼応するように窓枠やソファー、机までもがガタガタと震え始めた。

そして…


「ヨウコソ!チョウシンヘ!」

「ヨウコソ!チョウシンヘ!」


突如、ケタケタと機械的な声で、目の前の着ぐるみが騒ぎ出し、立ち上がった。


思わず構える。


何だこいつは?


目の前で起こる理解しがたい現象に生存本能が一気に騒ぎ出した。


目の前の着ぐるみは、まるで操り人形のように不自然に空中に浮かび上がると、こちらに向かってゆっくりと近づいてく来る。

その時…


ガタンッ


機械的な異音が聞こえた。

それと同時にピ○○君の進行方向が急に右側に逸れ、応接間と事務机の間にあるパーテーションにビタンッと激突する。


「へぶっ!?」


ピ○○君の中から短い悲鳴が聞こえる。

俺は、構えたままその様子を見守っていた。


「一体何なんだ?」


一気に緊張が抜ける。

いつの間にか部屋の振動や異変は何もなかったかのようにおさまっていた。

構えを解き、俺はピ○○君に近づいてみる。


「痛つつっ…」


パーテーションにぶつかった衝撃だろうか、着ぐるみの頭部が明後日の方向を向いてる。

その着ぐるみは立ち上がると、その様子を呆然と眺めていた俺に、身体だけ整体させ…


「ヨウコソ!チョウシンヘ!」

「って、もうそれは分かったつーのっ!」


ツッコミを入れつつ、頭の部分を引っこ抜く。

すると中から露わになったのは、一人の女性だった。


「ようこそ、超心理現象犯罪特別捜査班チョウシンへ。野守影鏡部長殿?」

次回予告!

超心理現象犯罪特別捜査班の部屋を開けた野守が遭遇したのは、泣く子も黙るピ○○君の皮を被った変態だった。

後に彼は語る。


「ここに来るのは問題を起こした奴か、余程変わった奴だと思ったが…まさか後者だったとは…」

「えっ?、いやいや…俺は違うよ!」

「そんな、証明しろっていきなり言われても無理…」

「じゃあ変態って、そんなアホな…あっちょっ待…」


自分も変態だということを!

脱ぎ捨てられたピ○○君

巡り会う変態達 (;´Д`ノオレハチガウヨー

彼らの行く先に何が待ち受けるのか?

乞うご期待!


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