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檻《CAGE》〜警視庁超心理現象犯罪特別捜査班〜  作者: kinoe
FILE.0「警視庁超心理現象犯罪特別捜査班」
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二人だけの特別捜査班1

ちなみに作者の心の檻は、そりゃもうがんじ絡まってしまって、てんやわんやですよ?

人は皆、何かに縛られて生きている。

だってそうだろう?

国という壁に囲まれて、家族という囲いを造り、職場・学校という枠にわざわざ足を向ける。


「敷かれたレールを歩くな。自分の道を開け。」と大人たちは若者に言う。

一見、束縛から解放され、自分で自由に歩いてるように見えるが、それは、それまでの檻から出て、自分で新しい檻を作ったに過ぎない。


高卒、大卒、フリーター、一流大企業、自営業、クリエイター、アーティスト……

お前が選んだ道?

これから自由?

馬鹿言うな、全部お前を拘束する檻だ。


学生時代はクラスの特定グループ入りに必死になり、

受験、就職では、もっとレベルの高い大学を、一流企業をと高望み、

いざ、社会に出れば、同僚よりも上へ上へ。

そんな奴もいれば、

俺はどうせと諦めて引きこもり、

常に誰かを批判して、自己保身に走り、

親の脛を齧って生きている奴もいる。


そして、お前はさらに檻を作るだろう。いや…もう檻の中にいるんだ。

思想・信仰・主義・主張・固定観念・先入観・妄想・感情…


あいつはダメな奴だ。

俺は本気出せばもっと出来る。

俺が悪い訳じゃない。

あいつのせいだ。


人が苦しんでいるのを見て笑ったことがないか?

人の努力をバカにしたことがないか?

やりもせずに諦めたことがないか?

弱者を装い、他人に保護を求めた事がないか?

己の正義を他人に押し付けたことがないか?

悪者を見つけては暴力・暴言を振りかざしたことがないか?


どうだ?

一つくらい思い当たるのがあったか?

そうか…


じゃあそれがお前の…心の檻《CAGE》だ。



◇◆◇◆◇◆


俺はいたって普通の…いや、普通という定義がそもそも定かではないが、言うなれば中間層の家庭に生まれた。

今は国防軍だが、親父は自衛隊員で、母親は地元の小学校の養護教諭として臨時職員について、あっ、あと姉と妹が一人ずついる。

小中学校時代は、親父の転勤に合わせて転校を重ねた。

いわゆる転勤族ってやつだ。

そのせいか、人間観察が趣味みたいになって、他人がどんな奴だとか、何を考えてるんだっていうのが、なんとなくわかるようになった。

初めて彼女が出来た時は、欲しそうなプレゼントとか、行きたい場所とかを察してデートしたりしたが、逆に「なんか考えてることがバレてるみたいで怖い」なんて言われて、自然消滅したっけか。

今考えれば、環境が変わる度に、本能的に自分をその場所に馴染ませようとしていたのかもしれない。

おかげで、友達は比較的多かったと思う。

ただ、親友と呼べる奴はいなかったが…。


高校ではサッカー部に入部して、ポジションはフォワード、正直テクニックはなかったが、走るのだけは速かったから、ゴール前に突っ込むのが仕事だった。

部活以外にも、親父の紹介で地元にある古武術の道場に通った。

身体を動かすのは好きだったから、結構のめり込んで、今でも通っている。


特になりたい職業はなかったが、親父が国家公務員だったこともあり、公務員というものに好感は持っていた。

だから、最初は漠然と大学に行った方がいいなと思い進学コースを選んだが、高校3年の夏に公務員就職希望に舵を切った。

なんとなく早く独り立ちしたいという思いがあったんだと思う。

どうにも事務系は性に合わなさそうだから、自衛隊、警視庁、海上保安官、消防を受験した。

と言っても、心の中では漠然と警視庁に決めていた。

特にこれだって理由はなかったが、親父と同じ職場だと、七光りとかコネがどうとか言われるのが面倒だったからだ。

それに、何となく刑事って職業に、子供の頃に見たドラマとかの影響で憧れないか?


初めて公務員試験の会場に行った時は、あまりの人の多さに、こりゃ落ちたなと思ったもんだが、意外にもトントン拍子で筆記、体力、面接試験を通過して、晴れて警視庁警察学校に入校した。

警察学校での教練はどれも新鮮で、楽しかった。

もともと暗記は得意だったことも手伝って学科試験は好成績を納め、術科関係は古武術のおかげで苦せずして上位に食い込むことが出来た。


警察学校を卒業して、交番勤務を経て、警視庁機動隊に入隊し、その後、警視庁SAT隊員に選出された。

それで、警視庁SAT任期中に、昇任試験に合格し、翌年に警視庁公安部に配属となった。

担当は、カルトやセクトといった新興宗教団体だ。

聞くところによれば、俺が生まれる前にカルト宗教団体による大規模な国内テロがあったらしい。

いや…過去に遡れば、極左連中による信じ難いテロ行為が数多く行われている。

大勢の人が傷ついた。

大勢の人が理不尽な死を迎えた。

実際に体験したわけじゃないのに、あまりの理不尽さに腹がたつ。

だが、国内では、思想・信条・信仰の自由が盾となって、異常な団体さえも守られてる。

なんなんだろうな?

自由って…

だから、俺たちの詳細な活動は公にはなっていない。

それでも、二度と同じ様な事件は起こさせない。

それが、俺たちの存在意義だった。


なのに…俺はーー


◇◆◇◆◇◆

APR/1/2028 AM7:05

ー東京都中央区晴海地区ー


その日、俺は、月島警察署の敷地前に来ていた。

港側から僅かに感じる潮風は、まだ冷たかったが、背中に感じる暖かい日光が、春の到来を教えていた。


「はぁ〜、やっぱりどう見ても本物だなぁ〜」

俺は、事前に受け取った異動命令書をカバンから取り出して、日光に当てたり、角度を変えて見たりと、見直してみるが、当然のことながら記載事項に変化はなく、ため息をつく。

今年3月の定期異動で、これまでいた警視庁公安部から諸般の事由で追い出され、ここ、月島警察署への転属を言い渡されていた。

命令書には、俺の名前


野守影鏡のもりかげあき


と、新たな配属先


警視庁超心理現象犯罪特別捜査班


が記載されており、補足のメモ用紙には月島警察署の所在地が記載されていた。


「何なんだよ…超心理現象犯罪って…」

これ、どう考えても窓際部署だろ?

多分アレだ。

幽霊に襲われてるんですとか、アメリカに電磁波で攻撃されてるとか、そういう明らかに事案自体が発生していない相談や厄介ごとを上手く捌く部署だ。


不祥事の多発を受け、いつぞや行われた警察の大改革とかで、今や昔のドラマの様な人情味や熱血漢溢れる警官なんてのは絶滅危惧種となっていた。

常に上司の小言や同期の出世を気にして、部下には大した指示も出さずに、いざ、問題が起きれば後出しジャンケンで「どうしてこれこれしなかったんだ」なんて一方的に怒鳴り散らす上司や、自分で判断しないで、誰かに仕事をなすりつけては、パソコンの部内掲示板を回覧して暇をつぶす無能な奴が跋扈ばっこしている。

そのせいか、正直、事件でもなんでもない事案まで、細かい報告書の作成を余儀なくされ、事件認知件数ばかりが増え、逆に検挙件数は減少しているのが現状だった。


だから、それっぽい名前つけて、刑事課がまともに動けるように、そういう雑多な事件とかを押し付けるつもりなんだろう。

間違いない。


やっぱ、あの事が原因なんだろうなー


なんて、過去の自分の行いを思い出しながら、正面の自動ドアを通過する。

透明な自動ドアに、ダークスーツを着込み、肩を落とした自分の姿が写っていた。


警務課窓口の一般職員と思われる女性に軽く会釈し、自分の配属先の課室を訪ねる。


「あのー、自分、今回の異動で月島警察署に配属になったンですが、ココ、何処にあります?」

補足メモに記載された超心理現象犯罪特別捜査班の文字を指差し示す。


「えーと、超心理現象…?」

窓口担当の女性職員が首を傾げる。

「あの、少々お待ちください。」

言って、後ろのデスクに座っている上司に小声で話しかける。

話しかけられたその上司も首を傾げ、口を開いた。

小声で話しており、会話の内容は聞こえない。

読唇術が使えるとは言わないが、唇の動きで大体推察できる。


な、ん、じゃ、そりゃ


おいおい…

なんじゃそりゃってなんじゃそりゃ?

あーまてまて、日本語がおかしくなってるぞ、俺。

つまり、署の人事を管理している警務課でも

超心理現象犯罪特別捜査班

なんて部署は把握していないつーことか。

じゃあ、これはやっぱりなんかの間違いなのか?


とそこに、警務課長らしき紺色の制服を着た五十代の男性が現れる。

ネクタイの位置が気になるのか、仕切りに結び目を弄っていた。


「おっどうかしたのか?」

その男性が、先程の二人に話しかけた。


「あっ課長、実はあの方が…」

また、声を抑えて話し始めた。

課長と呼ばれているって事は、やはり警務課長で間違い無いようだ。

その警務課長が、自身の身体を女性職員に寄せる。

が、女性職員はそれから遠ざかるように仰け反りながら、会話を続けた。


「あー超心理現象なんチャラね!」

警務課長が左の掌の上に右拳をポンっとおいて、分かったというようなリアクションを取った。

まぁ正式名称が出てきてないので、怪しいが…

その警務課長が俺を一瞥すると、こちらに近づいてくる。


「どうもどうも!実はねぇ、超心理なんチャラかんチャラは、この庁舎じゃなくて、ここの裏、ぐるっと回って後ろに分庁舎があるんですわ。」

大袈裟に腕でルートを示し、案内する。


「えっここじゃないんですか?」

思わず確認してしまった。

「そうそう、実は東京オリンピックの時に、晴海地区に選手村が出来て、その時に応援部隊用に二階建ての簡易宿泊所が建てられたんだなぁ。で、その後は倉庫として使ってたんだが、昨年末に本庁からそこに超なんとかを入れて分庁舎として使うって話がきてさー」

「あーそうでしたか。どうもありがとうございました。」

もっと喋りたそうな警務課長の話を途中で打ち切り、会話を終わらせる。

このまま喋り続けられたら、いつ終わるかわからない。


警務課に来た時と同じように軽く会釈をして、正面出入口を再度通過し、月島署の裏側敷地に回る。

すると、警務課長の言うとおり、二階建ての小規模な建物が確かにあった。

簡易宿泊所として建てられたせいか、分庁舎というよりは、アパートか学生寮を思わせる形状だ。

平屋根に白い外壁、庁舎前には普通乗用車6台分の駐車場が設けられ、黒いセダン一台と、灰色の営業車のようなバンが止まっていた。

出入口は両開きのドア、中に金属製の下駄箱が見える。

出入口に近づくと、その右側壁面に真新しい木製の看板が取り付けられており、そこに


警視庁超心理現象犯罪特別捜査班


と御丁寧に墨で表示されていた。

どうやら、ここで間違い無いようだ。

両開きのドアを開き、中に入る。

日光が月島署に遮られ届かないため、中は薄暗く、ヒンヤリとした空気が頬を撫でる。

意図せず背筋がゾクリとし、ブルッと体が震えた。


「あのー誰かいらっしゃいますかー?」

返事はない。

「すいませーん。」

誰もいないのか…

腕時計を見ると時計の針は7時10分を指していた。

確かに、少し早い時間だ。

先程の月島警察署の警務課の連中は、新年度の会議やら初訓示やらで早めに出勤していたのだろうが、他の課の連中ならもう少し後に出勤するだろう。


「まっ、上がらせてもらいますか。」

独り言を呟き、革靴を下駄箱に閉まった。

玄関といって差し支えない出入口の正面には横に伸びるフローリングの通路を経て、二階に至る階段が設置されている。

通路の右側は食堂だろうか?

僅かに調理台のようなものが見えた。


だが、まずは二階から確かめよう。

何でって、ほら、みんな記憶があるだろう?

幼い頃に両親とモデルルーム見学に行って、一目散に階段を駆け上がり、ベッドに飛び込むアレだ。


なんて幼い頃の記憶を思い出しながら、階段に足を掛ける。


…クスクス


ッ!?


笑い声が聞こえた気がした。


後ろを振り返るが、誰もいない。

薄暗い玄関が一層気味悪く感じた。


「気のせいか…」

再度、階段を上がる。


二階は、一階同様に横に通路が伸びており、正面には3部屋、通路の両端にも扉が設けられており、一階食堂の上に位置する部屋の扉には「会議室」という表示が見えた。

その反対側の扉を確認すると、警視庁超心理現象犯罪特別捜査班の表札が掲げられている。


「あそこか……」

ようやっと目的地を見つけ、そちらに歩みを進め、扉の前で一旦立ち止まる。

中に人の気配は感じない。


俺は、右手でドアレバー掴み、扉を押し開けた。

次回予告!


一人、超心理現象なんチャラかんチャラを訪れる主役の野守影鏡。

不気味な分庁舎。

誰もいないはずの部屋。

感じる視線。Σ( ;´Д`ノ)ノダッダレナノ?

実は二階のベッドに飛び込むだけでなく、食堂の冷蔵庫の中もチェックしたかった彼は、その眼で何を視るのか!?


美味い飯には金に糸目はつけない!

それが俺の信条!心の檻だぜ!


乞うご期待!

(=゜ω゜)ノ

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