警視庁超心理現象犯罪特別捜査班《チョウシン》2
「後は頼んだ……蓬。」
男がその名を呼んだ。
彼の視線は犯人の真後ろを貫くように見据えていた。
窮地とも言える状況下で、何処か安堵したような、全てを視線の先の者へ託すようなそんな表情で……
その表情にある意味恐怖を抱いた犯人が背後を振り返る。
そして、それは犯人だけでなく、その場にいる全員に伝搬、全ての視線がそこに集まっていた。
「ふぅむ、君にしては上出来だよ……野守君。」
その視線の先、全身を白衣で覆われた黒髪の女が佇んでいた。
勿体ぶるように、ゆっくりと歩みを進めるとフワリと風にたなびく黒髪が、日光の反射を受けて銀色に煌めく。
突如訪れた静寂が、コツコツと鳴る女の足音を誇張していた。
「やっハリ、塩昆布味はホウかと思うなぁ〜」
蓬と呼ばれた女は、両手を白衣のポケットに突っ込み、コロコロと棒付き飴を口内で弄びながら、その味の感想を告げる。
「何だ……お前?」
静寂を破る犯人の声。
予想していたものとはだいぶ違った人物だったのか、訝しむような表情で言い放つ。
「んウ?私?」
尋ねられた女が楕円型の眼鏡を片手で押し上げ、顔を犯人に向けた。
しかし、眼鏡が日光で反射しその視線は伺えない。
「私はねぇ〜」
”ガリッ”
飴を噛み砕く音が響いた。
「天才だよ。」
ニヤリと女が表情を歪ませる。
そして、口内から白い棒付き飴の棒を抜き出し、それを犯人に向けた。
「あ?何を言っーー」
「さて諸君、謎解きの時間だ。”怪”を解こうじゃないか。」
女がその姿勢のまま犯人の言葉を遮る。
「銃弾を避ける超反応。人間一人を吹っ飛ばす力……間違いなくヘヴンズゲート服用による能力覚醒者、解放者に相違ない。」
「だったら何だってーー」
「そして!その能力は……未来予知?いや違う。もしそうなら負傷などするはずが無い、その肩の擦れ傷、野守君の射撃によるものだ。」
言いながら女が歩みを進め、白い棒をクルクルと回して犯人の肩を示す。
「何?」
言われて、犯人が自身の右肩を見やった。
確かに、男の黒いシャツがほつれ、肌が露出しており微かに出血している。
「馬鹿な……」
その光景に犯人が呟いた。
「その傷は、野守君が最後に放った左腕での出鱈目な射撃、故に射撃した本人にも着弾地点は分からない。」
「それがーー」
「つまり!」
三度、女が犯人の言葉を遮る。
「つまり、君の能力は未来予知などではない。何よりも、先の右回し蹴りを野守君に防がれている。それが、予想外の結果だったのは君自身が一番分かっているだろう?」
「ーーッ!?」
己が優勢だった事でその事実に気づかなかったのか、女に指摘されて犯人は驚愕の表情を浮かべた。
「ふむ、ちなみに野守君、最後、君は何処に攻撃が来ると思ったんだい?」
「あいっつつ……最後?決まってんだろう、”左側面以外”だ。」
「プククッ……だってさ。」
「チッ……」
「そう!君は野守君の思考を読み取り、左側面への防御意識が無いことを把握した。そしてまんまと誘導された訳だ、右回し蹴りを……。」
「だからなんだって言うんだよッ!」
「悲しいねぇ〜新しく手に入れた力とやらがあっさりと破られるなんて……結局、君が生まれ変わったと叫んだところで君自身は何も変っちゃあいないのさ。」
「……がう。」
「どんな力を手に入れようと君は君だ。」
「違う!」
「心の弱い独りの男……そうだろう?」
「違ぁぁーうッ!俺は生まれ変わったんだッ!俺は、俺はぁッ……」
犯人は頭を抱え激しく振った。
認めたく無いのだろう、自分の頭に浮かんだその事実を……
女が可哀想なものを見るように、犯人に視線を向ける。
二人の視線が交わった。
「そんな、そんな目でッ!俺を見るなぁぁーーッ!!!」
犯人が蓬と呼ばれた白衣の女に向かって走り出す。
その姿は先程同様忽然と消え、女に向かってアスファルトが砕け始める。
「ププッ……笑わせてくれるねぇ。タネの明かされたマジックほどつまらないショーはない。君の能力は他人の思考を読む能力”Reading”だ。そして、それを逆手に取れば……」
言って、蓬は、犯人に向けていた白い棒を親指ではじき飛ばす。
空中に放たれたその棒はクルクルと縦に回転しながら飛翔。
その棒の行方を確認もせずに、蓬は振り返り犯人に背を向けた。
回転しながら飛翔する白い棒は、勢いを無くし重力の影響を受けて綺麗な放物線を描き落下する。
「ガアァァァッーー!!」
”ソコ”に犯人が現れる。
そして、容赦の無い殺意の塊と化した右拳が、風切音を伴いながら蓬の後頭部を”掠めた”
そうーー当たらなかったのだ。
「おいおい……何処を狙っているんだい?私は”ココ”だぞ?」
「馬鹿なッ!?確かにーー」
ーー”コツン”
驚愕する犯人の額に、蓬が先程放った白い棒が舞い落ちる。
「へブゥッ!?」
ただの白い棒、紙を巻き合わせ作られた10グラムにも満たないそれが当たっただけ。
なのに、犯人は素っ頓狂な声を上げて、まるで重量のあるハンマーで上から殴りつけられたかのように、アスファルトの地面に突っ伏した。
「カッハァッ!?ゲホッエッオ……な、何だ!?」
「ほぅら、やっぱり。」
そこにいた誰もが犯人と同じ意見だった。
しかし、蓬だけがその結果に満足そうにニンマリと笑みを浮かべる。
「ウッ!?」
その表情に一種の狂気を感じ、突っ伏していた犯人は直ぐさま飛び起き構え、目の前の女を睨みつけた。
「お前も……能力者なのか?」
「プッ!冗談はやめてくれ、ククッ……私は唯の人間だ。ていうか、あれ?もう終わり?大したことないねぇ解放者というのも。」
「……クッソがァッ!」
再度、蓬に向かって犯人が駆け出す。
そして、連続した猛襲が容赦なく蓬を襲った。
しかしーー
すべての者の思考を読み取る能力も
アスファルトを砕く蹴りも
街路樹を薙ぎ倒す拳も
力働かず、何故か蓬を避けるように空を切り、彼女へと達しなかったのだ。
全く恐れるそぶりも見せず、悠然と歩みを進める彼女は先人が残した詩を口ずさむ。
「天の道は、争わずして善く勝ち、言わずして善く応え、召さずして善く来たり、繟然として善く謀る……」
「何でッ……何でェッ!?当たらないんだよッ!?」
犯人が泣き叫ぶように声を上げ打撃を繰り出す。
思いっきり振りかぶった一撃、それすらも蓬が軽く体を捻れば、その脇を通り抜けて、二人の体がただ交差しただけだった。
その結果に愕然とする犯人の視界を、白い布が覆う。
「クッ邪魔だ!!」
思わずその視界を覆った布、蓬が着ていたはずの白衣を跳ね除ける。
そして、自身の後方へと歩みを進めた女を視界に捉えるため振り返った。
「は?え?……」
「あっ?」
「なんだぁ?」
「はぁ~……またか。」
白衣を脱いだ蓬の恰好に、その場にいた全員が目を疑った。
唯一人、野守と呼ばれていた男だけが、あきれたようなため息を吐く。
「チュ、春〇?」
約15メートル先、その視界に捉えた光景に犯人は思わず某国民的格闘ゲームに登場するキャラクターの名前を呟いた。
先程まで白衣を着込んでいた女は、その下に青いチャイナドレスを着込んでいたのだ。
大胆に切り込まれたスリットから覗く艶かしい健脚、両の手首にはトゲトゲしたバングルがはめられ、女は、おもむろに眼鏡を外すと髪をかき上げシニヨンを作る。
「――天網恢々疎にして漏らさず。」
先程までの野暮ったい研究者風な女が、一瞬にして絶世の美女に変わり、周囲の視線を、その場の主導権を我が物にする。
「コスプレッて……ふざけてんのかテメェ!!」
「のんのん。至って真面目だよ。それに、ここからはずっと私の番だよ……”腐れ引き篭もり野郎”君?」
言って、蓬は、両腕で円を描く様に適当に構えると、右手を前に出しクイッと指を上げて犯人を挑発した。
「ぬあ゛ぁぁぁぁッ―――」
能力を暴かれ、変な女に手玉に取られ、馬鹿にされ続けたことで、犯人のプライドはズタズタに傷つけられていた。
折角強くなれたのに、何故また馬鹿にされなければならないのか
力を手に入れれば何でも自由に出来ると、思い通りになるのだと思っていたのに
そんな言葉が頭を駆け巡る。
誰のせい?
俺のせい?……違う、俺は悪くない。
目の前の此奴だ!この女のせいだ!!
この女を殺さなければッ!!
「……ロス、コロス、コロスコロス殺スkrskrsss!!!」
怒りに満ちた形相で、犯人の男が蓬に向かい再度、猪突猛進する。
「……"Imagine the Future"《未来を想像しろ》」
眼前に迫った犯人に蓬はその”言葉”をぶつけた。
”想像しろ”
その言葉が空気中を伝搬し、耳介が音を拡大、犯人の鼓膜を震わせ、その振動が鼓室内を通り内耳へと至った。
リンパ液で満たされた音を感じ取る蝸牛は、伝えられた振動を液体の波に変える。
リンパ液の波を感じ取る3万以上の有毛細胞がそれを電気信号に変換、聴神経から大脳へと送られた情報が”言葉”となり、それが犯人の能力を無理矢理呼び起させた。
それまで以上に活性化した能力によって、情報の奔流が犯人の脳を襲い、蓬の思考を完全に読み取らせる。
『……ZZi……』
犯人の視界にノイズが走り、視える世界は”蓬がイメージする世界”へ移行した。
『……たら百裂脚でハメ殺す』
『……近づいたら百裂脚でハメ殺す』
『近づいたら百裂脚でハメ……』
「クハッ!……馬鹿がぁッ!!俺に手前の思考をわざわざ読み取らせるとはッ!!」
女が繰り出す足技など大した脅威じゃねぇ。
そもそも、ゲームの技を現実に持ち出すなど馬鹿げている。
こんなふざけた女如きに何をビビッてるんだ!
見せろ!お前の考えを、動きを俺に!!
『……軸足は左脚、振り上げた右膝を支点に、初撃は膝関節を狙って下段蹴りを打ち下ろす。』
『犯人の動きが止まったら、その姿勢のまま同じモーションで軌道を変化させて顔面への上段蹴り、ひるんだ所を回し蹴りで鳩尾右下の肝臓を狙う……これが私の考えたリアル百裂脚!!』
「見える!見えるぞぉッ!お前の考えがぁッ!』
近づく両者、一足一刀の間合い……蓬の右膝が振り上げられ”パンッ”と乾いた音がその場に響いた。
『なッ!?』
訪れた結果に蓬が整った顔をゆがめ、驚愕の表情を浮かべる。
対する犯人は、享楽に満ちた愉悦の表情を浮かべ、宣言通り自身の左膝へ打ち下ろされる蓬の下段蹴りを左手甲で受け止めていた。
「カハッ!!そうだぁその顔だ!それが見たかったんだよぉッ!!!死ねぇッ――」
言って、大上段から振り下ろすように右拳を蓬の胴体目掛けて放った。
その拳は、青いチャイナドレスごと、彼女の胸骨を打ち抜き背中側へと達して―――
「アッハハハハハァッ弱い弱い弱い弱い弱いぃぃッ!!!間違いない!俺が最強だ!誰も俺をッ―――」
『……ZZi……』
再度、ノイズが走った。
”左横移動ぉ~(11)”
「は?」
突如、女の声が脳内に直接響く。そして、己が貫いたはずのコスプレ女の身体がぼやけ、二分した。
「なッ!?」
右の拳は、当たっていなかった。
分裂したもう一人のコスプレ女の右側面を掠めていただけだった。
「ああ当たっていないッ!?な、何でッ!?考えと違ッ……」
慌てて体を動かそうとするが――
身体がッ……動かねぇ!?
自身の身体に起きた異変に驚き、冷や汗を額に浮かべる犯人の右横で、蓬が笑いながら耳元で語り掛ける。
「おやおや、君は一体、何処の”世界”に行っていたのかな?」
「お、お前!何なんだよ!何を言ってるんだ!?」
「ふふふ、さぁて歓迎しよう!ようこそ私の”世界”へ。さっそくだけど10連コンボと行こうじゃないか。」
「ヒィッ!やめッ――――」
”玄空脚(9RK)”
「グッ!?」
「君がどんな力を手に入れようと」
”五臓血塊(6LK)”
「ゲェッ!」
「君がどんな事を為そうとも」
”最速風神拳(6n23RP)”
「アブッブウブッ!?」
「犯した悪事は御天道様が見逃さない」
”瓦割り(2LP)B>66”
「ヘブッ!?」
「まぁ……もしッ曇り空が広がっててぇッ」
”奈落払い12”
「見逃すようなことがあればッ」
「ちょッ……これ、春〇じゃなくて……三島へいはッ――」
流れるような連続した打撃が犯人の身体に休みなく打ち込まれ、この時点で犯人の意識は既に飛びそうになっていた。
犯人の薄れる視界に蓬の姿が映る。
しゃがみ中腰状態で、右こぶしを背中側に引き寄せて力を溜めている。
そしてコスプレ女は、天を仰いだ。
空は晴れ渡っていたが、そのタイミングで太陽が雲に隠れ、渋谷交差点はビルの影に飲み込まれ薄暗くなる。
右拳に雷光が走った……気がした。
”雷神拳6n23~RK,RK,LP”
反動をつけられた右拳が、アスファルトを掠める様に半弧を描きながら犯人の足元へ到達。
そこで天空に向かって急上昇に転じると、容赦なく犯人の顎先を打ち抜く。
”轟”
それは、虚像か実像か……
青白い雷光が犯人の顎下で煌めき、雷鳴の如く轟音を轟かせた。
「ガッハァッ!!?」
強烈な一撃で脳が揺さぶられ、頭蓋骨の中でバウンド、さらにその勢いで犯人の身体が後方に浮かび上がり、背中からアスファルトに落下した。
「うわぁうわぁうわぁ……」そんな悲鳴を残して、犯人の意識は闇に沈んだ。
『……zzi……』
渋谷交差点に再度訪れる静寂。
そこに、
「私達が相手してあげるよ…………」
蓬の声が響き渡った。
*****
警察車両と救護車両のサイレンが近づいていた。
目黒は、そのサイレンを聞きながら、目の前で起こった光景にただただ驚いていた。
「一体……何がどうなってんだ?」
先日、部内通達で回った異常能力者…目黒自身信じてはいなかったが、確か、解放者と名乗る連中の存在を目の当たりにしたこと自体も十分驚くべきことであったが、その後に現れた白衣の女……いや、コスプレ女が、その解放者をいともあっさり倒してしまったのだ。
「くっ!」
ベルトで一応止血した痛む右腕を抑えながら、目黒は倒れた犯人に手錠をかける白衣の女と、自分を助けたブルゾンの男に近寄る。
「よぉ!助かった。機捜の目黒だ。しかし、あんたら……何処の部署だ?」
目黒が二人に呼びかける。
「ああ、お互い無事で何より。俺は野守。」
ブルゾンの男が左手を出す。
それを目黒が握り込んだ。
「フフッ……私たちが何者か気になるようだね?」
コスプレ女が眼鏡を押し上げニヤリと笑う。
「ああ、それに此奴をどうやって?」
「それは俺も知りたい。」
野守が目黒の疑問に同意し、頷いた。
「ごほんッ!では、お二人がどうしてもというので、先程の、私の”華麗なる”活躍を説明しようじゃないか。」
わざとらしい咳を放ちながら、女が説明を始めた。
「今回の解放者の能力は他人の思考を読み取る能力。とりまReadingと名付けよう。」
「なるほど、それで弾が当たらなんだ……」
目黒が納得する。
「そう、基本的に戦闘中に余計な事を考える奴なんていない。命のやり取りをしとる訳だからね。」
「自然と相手の攻撃が思考とともに予測できる訳か。」
「うむ、野守君の挑発で犯人が口にした台詞、そして、それを裏付ける攻撃パターン。では、この能力を持った相手を制圧するには?」
「……相手の思考の裏をかく攻撃、若しくは無意識の攻撃」
「そう。それが一番だろう。」
野守の発言に蓬がうなづく。
「しかし、さっきのあんたは棒を投げてあいつを吹き飛ばしたり、変な型……まるで、ダイエットのために通信空手をやり始めた主婦みたいな動きをしただけじゃないか?」
「確かに……裏をかいた訳でも何でもない。そもそもこんな棒切れが当たっただけで男一人が吹き飛ぶってのは信じがたい。それに、よくそんな恥ずかしい格好で、あんな恥ずかしい動きを―――」
「―――ちょぉっと待った!!二人とも論点がずれてきているよ!」
「だって……」
「なぁ……」
野守と目黒が視線を合わせ頷きあった。
「全く……。重要なのは棒切れや動きじゃない。犯人にこちらの思考を読ませることなんだ。」
「なんだって?」
目黒が思わず尋ねる。
「私は、この棒に思念を込めた。『この棒は5キロダンベル位めちゃくそ重い』ってね。」
「は?」
「つまりだねー。我々にとってはどうということない棒切れだが、”Reading”という能力を持つがゆえに、犯人がこれに触れた瞬間、私の思念が伝わって”5キロダンベルで殴りつけられた”と脳が錯覚、彼の身体に影響が出たんだ。」
「そんなことが……」
「あるんだね~さっきの通り。例えばほら、経験ないかい?イタズラで冷たい缶ジュースを”熱い”って言われて投げられたのを受け取ったら一瞬本当に熱いと感じたり、重くないダンボール箱を”重いから持ってみ”って言われて持ち上げたら、予想以上に軽くて、勢い余っちゃった事とか?」
「……つまり、異常発達した奴の脳が、蓬の強い思念を読み取り、白い棒を”質量のある物質”と勘違いして、本能的な防御反応が表面化したってことか?」
野守が蓬に同意を求める。
「まぁ、そんなところかな。ちなみに最後の技は~」
「あぁ、最後の変な動きは別に解説求めてないから大丈夫だ。つーか、何が”雷神拳”だよ……見えてたぞぉ右手のスタンガン。」
「何も分かっとらんねぇ君は、いいかい。あの数秒の間に私と犯人の壮絶な格闘戦がだなぁ――」
「はぁ?カウンターでスタンガン食らわせただけだろう?」
「違ぁう~っ」と抗議の声をあげながらコスプレ女が野守に抗議する様子を見ながら目黒は、
「はぁ~。分かったような、そうでもないような……」
いまいち釈然としない様子で首をひねった。
そこにーー
「目黒主任!何やってんですか!?腕のケガ!治療しないと」
滝口が到着した救護車両の脇で手を振り叫んでいた。
「お、おう!今行く。」
そう言えば、そうだったと自身の傷の痛みを再認識し、目黒は救護車両に向かう。
その途中、目黒は再度二人の方を振り返り声を発する。
「あっ、そう言えば、あんたら…何処の部署だ?」
すると、野守と蓬がお互いを一度見直し、目黒に言い放った。
「俺たちはーー」
「私たちはーー」
「「超心理現象犯罪特別捜査班だ!」」