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火の世界の豪炎  作者: PP
二章-精霊降臨-
94/147

94:明日の予定

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

 俺とサーモ、シゼルと名前はまだ知らない女の子。この四人で現在お茶を飲んでいる。


「ああ、お茶は上手いな。それで、早くクゥを引き取りに来てほしい」

「うん、お茶は美味しいですねシゼルさん。あっ、それは俺の分だぞ」

「ヒヒ、もう知らない仲ではないではないか」

「あぁっ、また俺の食いやがった……あっ、それでクゥが失礼してるようですいません。て、それって俺何も悪くないんじゃ」

「いやいやいやいや、お前が呼び込んだんだろうが。は・や・く・引き取ってくれ。頼むから。な? な?」

「んー、でも俺にはやる事が。でもシゼルさんでもそんな焦る事あるんですね」

「バカやろう、あんな『大食い』は流石に問題だ。後二日もしたらタナダタの食糧が尽きかねん」

「あー、そういう問題が出てるんですね」

「ヒヒヒ、よく食うからクゥってか? ヒヒヒ、バカっぽい名じゃ」

「サーモ、お茶の御代わりいるか?」

「遊多さん、こんなに馴染んでいていいんですか……ありがとうございます」


 一人冷静に突っ込みをいれてくれるサーモである。とりあえず現状の整理をしてみよう。


 まず最初に、シゼルがこの大陸へ来たのはクゥが原因だという事だ。どうやらタナダタの町にあるタマゴを食べ荒しているらしく、クゥの口から俺の名が出たので事情を聞き飛んできたとの事だ。文字通り、空を駆けて飛んできたのは言及しない。


 そして、この位置が正確に掴めたのはサーモが放った付与矢である。シゼルは付与矢を察知して、その射出地点を見極めたとの事だ。


 最後に、このヒヒとよく笑う女の子。ザイ国の王家の長女。三兄妹の一番下、一六歳で名をミューズという。そして様々な情報を俺達に教えてくれたのだ。


「ヒヒ、私達のザイ国は新しい神に仕える事にしたのよ」


 とはミューズ。どうやら新しい神が民を、王家を狂人と化すよう標したようだ。


「神はペンネの国以外にも、北の領土をほぼ全域支配し、加護を与えているわ。ヒヒ、私達も必死なのよ、生き残る為にね」


 トレントの液以外にも何種類か狂人へ導く物があるらしいが、それはザイ国にはまだ伝わっていないとの事。そして狂人へなる事で、その神の加護を受けれるとの事。


「その神は、戦神。火の神を討つ者よ、火の神がもし討たれれば人は戦神の加護なしでは誰も生きていけないのよ」


 その言葉の意味する事は、戦神が火の神に喧嘩を売っているという事であろう。そして、もしも火の神の加護が無くなれば……。俺は思い当たる、センチが火の加護を受けれず苦しんでいた事を。そう、南の大陸で生きてる人間はほぼ全滅してしまう可能性がでてくる案件なのである。


「まぁ私にはもう関係の無い事。戦神の加護は既に受けているし、私は何故か自我を取り戻したのだから」


 そういい、ミューズは食べかけのクッキーを俺の口に無理やり押し付けてくる。


「うばっ、何すんだモグモグ」


 無理やり放り込まれた食べ物を吐き出すわけにもいかず、俺は美味しくいただいておく。


「私を狂人から解放してくれた貴様にはかりが出来たのだ。ヒヒ、この命をもって貴様にかしを返そう」

「はぁ、それはいいとしてミューズ。人殺しはもうしない、トレントの液で狂人化しない、させない。約束してくれるな?」

「いいだろう。ヒヒ、私は約束は守る女だからな」

「トレントの液で狂人化ねぇ、まぁこれでザイ国は線から消えたか……」

「ん、シゼルさん何かあったんですか?」

「いや、深浦は気にしないでくれ」


 それよりも、と冒頭のクゥ引き取りの話へと戻る。


「どうしよっか」


 俺はぽつりと、素に戻り考える。今頃はまだザイ国の王と王女・息子二人が海道と理深とやりあっている、はずである。まぁその事は二人に完全に任せてしまおうと考える。


 今の俺には精霊降臨という目的があり、トレント族と会う必要があるのだ。しかし、現在進行形でクゥの暴走が止まらずタナダタが滅ぶ可能性がでてきているのだ。そこで、俺が責任もってクゥと話して暴食をやめるよう説得する必要が出てきているのである。いつの間に俺は保護者になったんだろうか……。


「色々と悩ましい、ぐぬぬ」


 俺は悩んでみるも、答えが出せずにいた。


「遊多さん。二日くらいなら食糧は大丈夫、でしょシゼルさん。明日一日で全部片付ければそれでいいんですよ」

「お、おおサーモ、そうしよう!」


 俺はサーモの提案に太鼓判を押す、そしてシゼルは言う。


「一刻も早く、と言いたいがそれで手を打とう。案内はしてくれるな? ミューズよ」

「けっ、お前は好かないが……お兄ちゃんの手前だ、ここは協力してあげるよ」

「げぇ、俺の事かそれって……」

「ああ、私には兄者が二人居るからな。ミウラとは呼びにくいのでお兄ちゃんだ」

「遊多さん……」


 サーモがキッと俺を睨むが、咄嗟に話題を戻す事にする。


「と、兎に角! 明日はトレント族と会って精霊降臨の協力を得よう。戦況によるけどザイ国の王様と王女様、息子の二人、の四人は海道と理深次第なので今は何ともいえない、だから考えないことにする」

「兄者達大丈夫かな、まぁ生きるも死ぬも、戦神の加護を受けているのだからどちらも幸だわ。ヒヒヒ、お兄ちゃんの言うように考えないで良いわ」


 サーモが負けた場合はどうするんですかと突っ込みを入れる。


「海道と理深が負ける事は無い、と思いたいが……」

「お兄ちゃん、もし狂人と今後出会えば私にやったのを使えばいい。壁ドン? だったかしら? ヒヒヒ、あれは魂に響いたわ。もぉ本当に凄かったわ……」


 豪炎:壁ドンを使えば狂気が消し去ったとミューズが言うので、もしもミューズの親と息子二人と遭遇した場合は試してみようと思うのだった。

 

 おっとりした顔で俺を見詰めてくるミューズと、それを見て不機嫌になるサーモ、そして腕立て伏せを唐突に始めるシゼルに囲まれ、俺は取り敢えずお茶をすするのであった。



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