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火の世界の豪炎  作者: PP
二章-精霊降臨-
92/147

92:ピンチ

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

 海道と理深、そして私もいくとワーカーとシャインが城を出てから既に三時間程経過していた。城内には俺とサーモ、第一騎士団の生き残り百五十名が籠城している。


「遊多さん、お茶いれてきました」

「応、ありがと」


 俺とサーモは壁の一部が崩れ落ちている小部屋で待機していた。


「気分、大丈夫ですか?」

「ああ、大分マシになったよ。ありがと」


 今頃は交戦中なのだろうか、とそんな事を思うと体の自由がきかなくなったかのように、恐縮してしまう。


「遊多さん、伏せて」


 サーモが突然叫び、腰に下げていた矢筒から弓を一本取り出す。その弓は火を纏い、付与矢として外へ向かって放たれる。


「届いてっ」


 放った弓は夕闇の中へと溶け込み、視界からその姿を消す。俺はハッとして、サーモに話かける。


「なっ、どうしたんだ?」

「何か、居ます」


 俺が外を覗きこもうとすると、サーモに頭を地面に押さえつけられぐえっと情けない声を出してしまう。


「遊多さん、危ないです。上空で何かが光りました、敵が居ます」


 まさか上空から攻めて来るとは誰が思ったか。陽が暮れていたら気づく事もなく、俺達は襲撃にあっていたに違いなかった。サーモの索敵能力がなければ、勿論今回の敵の襲撃は見事に決まっていた状態である。


「ヒヒヒ、まさかアタイに気がつくとはね。トレント漬けにし甲斐があるじゃないか」


 俺達にハッキリ聞こえる声はこの部屋より上空から話しかけているようである。しかしまだ若干だが距離はあるのか、サーモは中距離用の矢を矢筒より引き抜き構える。


「このっ」


 サーモが続けて二発、三発目と矢を放つがどれも躱されてしまう。


「ヒヒ、威勢の良いお嬢さんだ。可愛がってあげるよ」


 俺も外を低姿勢のまま確認すると、そこにはローブを着た小さな女の子が浮遊しているのである。そして位置は俺達よりも更に上、風が吹きローブが盛大にめくりあがるが気にしないで俺達を凝視する。補足ではあるが、この世界には下着の概念がないようなのである。現に俺も履いてないのだ。そしてその、敵対している相手も勿論履いてないのである。


「ヒヒ、ヒ……ん、貴様何を見て」


 俺の存在に気が付いたのか、はたまた俺の視線に気が付いたのかその女の子は声を失う。


「ヒヒ、ヒ。奇襲と思って上から近づいたのは良かったのだが、こうなるとは……殺す」


 どうやら、火の操作で薄い膜を作り上げその上に乗り移動をしているらしい。移動速度は徒歩と同じ程度みたいで、ジリジリと距離を詰められる。


「セット装備2、ファイ……」


 俺も躊躇なくセット装備2を纏い、ロケットランチャーを打ち込もうとするも指がトリガーに触れる寸前で止まってしまう。


「うっ……」


 途端、俺は眩暈と吐き気に襲われる。そんな俺の前にサーモが立ち、任せて下さいと再び弓を構える。俺が見上げると、サーモも外からの風にあてられローブがめくれあがり、俺は見てしまう。逆光だったが、少しだけ元気になった気がした。


「当たらない」


 サーモの弓を避けながらジリジリと近づいて来る女の子に、サーモがじわりと後退する。俺の目の前にお尻がやってきた辺りで、サーモも屈み俺に話しかける。


「遊多さん、たぶんあの子は五人の内の一人でしょう。近づかれたら私達は助からないかもしれません……」

「サーモ、だけでも逃げてくれ」

「いいえ、守ると誓ったからには、最後まで一緒にいさせてください」


 サーモは敵が目の前に近づいてきているにも関わらず、俺と視線を合わせる。敵に背を向ける行為がどれだけ危ないかわかっているはずなのに。


「私、遊多さんの事……」



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