89:北の民の事情
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
食事も終わり、俺達はそのまま席に座ったまま北の民の現状を聞く事となる。
「では、まずは我等からの話をしてやろう」
偉そうに踏ん反りかえりながら、その大きな胸を強調しつつ話を始める。少し長かったので、俺は聞いた話をまとめる事にする。
まず、ここペンネの国は地下都市だという事である。そして地上には精霊が多く住んでいるそうだ。そんな中、一部の人間が地上に行きたいと夢みて地下都市から出ていったそうだ。その末裔の一つが、あの王城の民だという。その王城の主は、事もあろうか精霊の住む森を破壊し、その素材で儀式を行っていたそうだ。流石に見逃せなくなった為、この度部隊が出向いたそうだ。
で、その儀式ってのが俺達、異世界人を呼び出す事だったらしい。
「何で地上で暮らすのに俺達を呼ぶ必要があったんでしょうか?」
俺は素直に疑問点を問いかける。
「そうだな、地下都市では地上に住んでいるトレント族との交流があるのだがな……」
そこで一度言い難そうにしながら、続きを言う。
「そのトレント族を狩る民が北側に居るのだ。これがもう一つの地上を夢見て出ていった末裔だ。それが強力な力を持っていてな、火の加護以外に何かの加護を得ているようなのだ」
なるほど、と。地上では地上で末裔同志が喧嘩が発生していたらしい。
「籠城をしていただけなら良かったものの、まさかこのような事態になるとは」
そして更に付け加える。
「我等は、今その北の民からも挟み撃ちにあっていてな。な、貴様等が無駄に抵抗してくれたおかげもあり、兵力は見ての通りの数よ。な? 協力してくれるだろう?」
俺達は少し話しあい、確認をする。
「俺は力を貸すことに異論はありません。雇い主も居なくなってしまったのでね」
「んー、俺も良いかな。先輩と一緒なら誰にも負けるきしないし」
俺はというと……。
「その、精霊降臨という儀式を扱える種族がいると聞いたのですが……」
「ああ、トレント族の事か。確か樹の精霊を呼び出せるといってたな」
決まりであった。
「わかりました、俺も手伝います」
俺達の同意と共に、北の民との争いが始まったのだった。俺達の説明は、王城の儀式召喚で呼ばれた異世界人だと説明したら、すんなりと納得してくれた。
「リーダー、奴等ついに攻めてきました!」
この言葉と共に、地下空洞の野営地に爆音が鳴り響くのだった。




