84:忍法・水蜘蛛の術(豪炎:ブースト付き)
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
俺達は再びチャ川の前まで接近すると、俺は手にした書物のページをめくる。そして火の操作を行う。
「いでよ! 輪かんじき(ぽいもの)」
俺の操作に応じて、足元には二つの丸い板のような物が出現する。
「あの、遊多さんそのワカンジキ? って何ですか。それにその板は……」
不安そうな声でサーモが尋ねて来るので、ここはこの火具についてしっかりと説明しておこう。
「すまんすまん、輪かんじきってのは水に浮かぶこの板の事だよ。浮力が強いから沈む前に次の一歩を踏み出せば沈まないのさ……」
「えーと、遊多さん? もしかして」
「そう、そのもしかして、かな? これを履いてこのチャ川を渡ろう。一つしか出せないから、俺がサーモを背負うよ」
「ッッ」
「嫌、だったかな?」
「そ、そんな事ないです! おぶって貰います、信じてます!」
一瞬えっ、そんなので? と驚いた表情をみせるサーモだが、すぐさま水蜘蛛の術に賛同してくれる。
『まぁこのデータ名は火地場ってなってるけど、水蜘蛛の術ってよんでいいよな』
イメージが重要になる火の操作なのだ。固定概念は無くした方が基本的には有効なのは学んでいるが、この火具に至ってはもう水蜘蛛の術と思って扱ったほうがうまくいくような気がした俺である。
「さ、善は急げだ。おいで」
俺が腰を落とし、サーモを背負うとそのまま川へとダイブする。
「行くぞー!」
「おー!」
バシャバシャバシャっと川を駆ける俺の姿は非常にシュールであった。
『そうだ、ブーストで加速していこう』
イカダで来た時と同じ速度を出して駆ける俺の背で、小さい悲鳴が続いたのはいうまでもなかった。
何とかチャ川を渡りきれそうです。




