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82:ちょっとだけ、いいかな
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
「行っちゃった……」
私は没入した遊多さんを見詰める。
『必ず、私が遊多さんを守ります』
あぐらをかいたまま、足元に置いた書物に没入する遊多さんの手をそっと持ち上げると、書物は一緒に張り付いてるかのように持ち上がる。そのまま私はその輪っか上に書物で固定された腕の中をくぐる。
『ちょっとだけ……』
私は遊多さんと向き合い、抱き合う態勢に落ち着く。
『いい、よね』
少しめくれたローブの隙間から、私は意を決して何度も何度も確かめるのでした。
遊多さんが戻ってきたのは、そんな十分後でした。
「ふぅ、良いのあったよ!」
「はい」
私はバレてないかな、と頬を朱色に染めたまま頷くのでした。




