79:北へ
二章開始です。本で換算すれば二冊目?にあたります。
と、いうことで説明メインの話になりますがよろしくお願いします。
一章も勢いで書いてそのままUPしてきましたので、随時修正させていただきますので、ご了承下さい。
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
タマコの背に乗り、俺達は北の大地までひとっとび、になる筈であった。
「あー、意気込んできたものの……」
サーモは地上に何か珍しい物がないかと、索敵を続けている。そしてクゥはやる事がないといいながら、喋るだけ喋って眠ってしまった。
『何しよう』
いくらタマコの飛行速度が速くても、それなりに距離があるので時間が否応なくかかってしまうのだ。そんな状況下で、俺は一人やる事がなく暇を持て余しているのである。
「なータマコ、俺達乗っけて重くないかー」
「へーきだよー!」
コカリリスの姿のまま、ますますモロと似てきた口調で返答してくるタマコさん。その姿で言葉喋るとか、ちょっと怖いよ?
「そうだ、ツリィムってここでも入れるのかな」
ふいに俺は考え付く、が。
「遊多さん、私守ってあげれませんよ?」
サーモは索敵が忙しいとばかりに俺の提案を却下してくる。
「あー、そうだよな。すまね」
といった感じで、本当に何もすることが無いのである。
「スー、スー」
クゥは寝ているにも関わらず、一切タマコの背中からずれ落ちそうな気配を見せない。これも神のなす業か。
『これが神様、ね……』
俺の豪炎も神様がくれた力だと火の神様から教えられていたが、実際何の神様から授かった力か未だにわからないままでいた。
『それも使えない……』
手に豪炎を纏わせてみるが、この世界では火の神様の加護がいきわたっている為、誰でも火の力を扱う事が出来るのである。それに、木や水などまでも火に対してある程度の抵抗を持っている為、俺の豪炎はあっさりと抵抗を受けてしまうのであった。
『今のところ、利点って精霊世界でも火が扱えるってだけだよな。はぁ』
ため息が出てしまう。豪炎で色々な業を編み出しているものの、火の世界で標準装備である火の操作で実際出来る事ばかりなのである。色々やっているようにみせて、その実は俺の精神力でカバーしているだけなのである。
火の流れを読み取り、その流れの中に性質などのイメージ付与が重要となるのだ。火は熱い、燃えるという固定概念ではなくその与える性質が重要なのである。
まだこの世界の人々は、火のイメージを一度に一つ操作するのがセオリーらしく、複数操作できる者が騎士などに昇格できるらしい。
その点では俺はモロに鍛えられた事と、ネトゲのイメージを利用して複数操作が基本となっている。
セット装備の部位破壊とか、一体いくつものプロセスを踏んでいることか……。
「あっ、遊多さん!」
サーモがはしゃぎだす。きっと砂漠の中に何か輝きを見つけ出したのだろう。
「何かあったのか?」
「はいっ! きっとあれは宝石の類ですよ、やった」
寄り道になるとはわかりつつ、俺達はサーモが見つけだしたソレを拾う為に一度砂の大地へと降り立つ。
「やっぱり、これはトパーズですよ!」
滅茶苦茶に嬉しそうである。サーモは宝石やアクセサリー大好きな十三歳の女の子である。シャーケギルドに所属していた弓師だが、趣味の会う異性と出会えなかったのだ。宝石やアクセサリーの知識はゲーム内で色々と知っていた俺と出会い、サーモの会話に合わせてあげる事が出来たのだ。そんな経緯もあり、今では一緒に行動するようになった。
「あー、綺麗!」
そんな事を言いつつ砂をつついて食べているのはコカリリスのタマコ。見た目は樹の精霊であるモロとそっくりであり、喋り方まで似ているのだ。人化の術を持つタマコであるが、見ての通り巨大な鳥さんである。砂と水を食べて、体内で生成されるタマゴを口から吐き出す生物で、この砂漠地帯ではそのタマゴが主食だったりする。
「あー、あー!」
タマコが唸りだす、我慢できないのであろう。
「ほれ、受け取るから」
俺が手を広げると、タマコは思いっきりタマゴを吐き出す。そのスピードは驚異的なのだが、俺は華麗にキャッチをするとクゥを起こす。
「クゥ、タマゴ料理でも食べるか?」
のっそりとタマコの背中から起き上がり、クゥは食べる! と元気よく頷くのである。ちなみにコカリリスのタマゴは子供を産むための物ではなく、体内に溜まった廃棄物を吐き出しているのだとかで、人が食べる事に特に抵抗はないらしい。非常にエコなタマコさんである。
「主様、そういえば北に行けば主様を召喚したというお城があるはずだよね、挨拶はするの?」
暴食の神様ことクゥが、俺に問いかける。この子は火の神様がこの世界に正体した『厄災』という事だったが、俺に妙に懐いてしまった。名づけをしたら、俺の事を主様と呼ぶようになったが、特に意味は無かったりする。
「んー、そういえば……」
俺は海道の事を思い出す。俺と同じ地球育ちの同郷の者なのだ、久々に会えるものなら会ってみたいなと思う。
「いや、会いたい奴ならいるんだけど……モロを助ける方が優先だ」
俺はモロを助ける為に、精霊降臨儀式を扱える種族の元へ向かわなければならないのである。そんな俺の思いもつゆ知らず、俺の前に様々な困難が立ち塞がるのはお約束であった。