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火の世界の豪炎  作者: PP
第一章-太陽の都編-
76/147

76:はむはむ、はむっっ

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

「寝かせてきました」


 俺の言葉を聞き、会議室に集まった皆は安堵の息を吐く。


「とりあえず、これからどうしましょうか」


 俺は皆に問いかけるが、先ほどの戦闘で精神力をごっそりと持っていかれているようで誰も発言しようとしない。


「ゆーたー、大丈夫?」


 モロがそっと抱きしめに来てくれる、と同時に癒され久々だな、っと懐かしく感じた。俺はああ、大丈夫だよとモロの小さな胸の中で頷く。


「あんな危ない人、すぐに帰ってもらいましょうよ」


 センチがそう発言するも、皆がその意見に心の中で頷くもその方法が一切思い浮かばないのである。


「そうしてもらえれば良いんだけど、また泣きだしたら……」


 暴食の神様は泣き出すと力を制御できないのか、その途端に周辺をパックリと喰い荒らしてしまったのを思い出し、ますます方針を見出せなくなる。


「おいクソガキ、あの滅茶苦茶な火で何とかできないのか」


 プルムがぐったりしながら俺に何とかしろと無茶振りをしてくる。


「あのですね、背は低いけど俺二十四歳なんだけど……まぁいいや」


 俺が年齢を言うと、Ⅷ騎士の全員が全員えっ! と予想外な顔をしている。そりゃ164㎝とかちびかもしれないけど、とそんな事は置いといて。


「俺の豪炎じゃ何も出来ないんですよ」


 そう言って、豪炎の火球を作って壁に放ってみるがバフンという音と共に焦げ目すらつけれず霧散する。


「おま、じゃぁあれだあれ、黒い奴使えよ!」


 再びプルムが全部任せようと突っ込んでくる、が。


「あれも同じです、この『キーボード』では豪炎のショートカットが出来るだけで、この世界では何の威力も発揮しないんですよ」


 俺は黒い火の塊、キーボードを見せカチカチボタンを押して見せるが、ショートカットにより生み出された火球は全て壁に当たっては霧散してしまう。


「はぁ、何度みても悲しい……」

「使えねぇ奴だなおい」

『プルム、てめぇもう一度ぶっとばしてやろうか!?』


 とは心の中だけで叫んでおく。そんなこんなで、次の案が出るのを待つ。


「ねぇ、火の神様に頼んで連れ帰ってもらえないの?」


 センチが提案するも、俺は……。


「すまない、火の神様との接触って一方的で俺が意見出来るって感じじゃないんだよな。どうしたもんかな」


 堂々巡りである、と突然扉が開かれる。


「おはよう、あら、他の皆様もお集まりで」


 聞いたことのある声が会議室に響き渡る、しかしその姿は。


「あの、どちら様?」


 俺は思わず聞いてしまう。そう、あの大切な部分がないのである。


「何よあなた、私よ私、何? もう忘れちゃったの?」


 場の空気が固まる、間違いないこの声は。


「暴食の神様、ですか……?」

「そうよ、皆して。あっ、そのお皿に乗ってるのは……」


 再び一人? だけテンションがあがったのかモロが未だに堪能していたステーキをみて美味しそうと食い付きマシンガントークを開始する食いしん坊さん。


「な、なぁ。神様?」


 俺は危険だと思いつつも思わず暴食の神様に接近して尋ねてしまう。


「その胸……」


 そうなのである、初めて会った時、そしてイメージで貰った暴食の神様の姿は巨乳だったのだ。それなのに、今目の前にいるその存在はとてもスレンダーボディなのだ。


「あら、やっぱり男性って皆そこが気になるの? 何か食べたら栄養が全部ここにくるの。消化しちゃったらへっこんじゃうけどね。あっ、一口でいいからそれ頂戴!」


 モロがむしゃむしゃと食べてたステーキをねだる神様。いや、胸に栄養がいくて色々敵に回しそうな神様なことで……。


「はむはむ、あっ、そうだわ。私も今後あなたと行動するから」


 ガタッと一同が反応する、すかさずセンチが。


「ちょ、えっ、大丈夫、なの?」


 本人が目の前にいるので、徐々に声が弱々しくなるがそう俺に問いかける。


「あ、あわわ」


 サーモまで珍しく慌てている。


「はっはっはっ、そりゃーいい、早く逝っちまいな!」


 プルムが再び挑発じみた声で言ってくる。が、それに反応したのか。


「はむっっ」


 暴食の神様がプルムの方を向きパクッと口を動かすと同時に、プルムがガクリと机に突っ伏してしまった。


「ご馳走様。いいわね、この言葉」


 どうやらプルムの火を食べてしまったようだ、ご愁傷様である。と、心なしか胸元が膨らんだような気がするがそれについては言及しない。俺は何とか暴食の神様に周りにあるものを勝手に食べないようにお願いすると、これまたすんなりと了承を得る事が出来た。


「その代り、ガチャタマゴさせてね?」


 俺よりほんの少しだけ背が低いせいか、下からの目線に可愛さ補正がかかってしまうわけで。


「あ、ああ」


 結果、俺は旅の同行を許したとも取れる発言をしたのだった。


「わは、ありがと! よろしくね、えっとモロとサーモとセンチとタマコ! 火の神様から色々きいてるわ! モロは確か無理して大人ぶってたけど今じゃ……」


 個人の秘密をペラペラと語り出す神様、無邪気なだけにとても悪質である。が、出会った時妙に背伸びしてたな、と思い返す。当時のモロの言動にはそういう意味があったのか、と一人納得した。


「そうだ、神様って毎回呼ぶのが億劫なんだが何か呼び方ないのか?」

「んー、何ならあなたが決めてもいいわよ?」


 と、そんな事をいうから俺も調子にのって発言してしまう。


「じゃー、何でも食べちゃうし、クゥ、とか?」


 俺が安易に名付けをした瞬間、皆の視線が一気に突き刺さるのであった。ダメだったかな? と俺が思ったが神様だけはノリノリで。


「うん、いい名前ね!」


 と、新しい名を受け入れるのだった。

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