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火の世界の豪炎  作者: PP
第一章-太陽の都編-
75/147

75:ガチャガチャ

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

「暴食の神様、俺が何とかするから落ち着けって!」


 俺は開口一番、虚勢を張る。出来る事が一つだけある、試したことは無いがやるしかないのである。


 黒い火の塊に手を突っ込み、俺はカチッと音をたてソレを召喚する。


「いでよフェニックス!」


 取り乱していた暴食の神様は、俺の言葉を聞いたからか、少し落ち着きを戻し未だ涙を目に溜めながら上目づかいで俺を見詰めている。


「何をする、の……?」

「いいからみとけって、ほら」


 俺が視線を上げた。その先には火の鳥が空高く舞い上がり、まっすぐにこちらへ飛んでくる姿が見える。勿論あいつは。


「タマコッ! タマゴプリーズ!」


 俺の手元で再びカチッと音が鳴り、上空から火の鳥ことコカリリスタマコはタマゴを一つ吐き出す。


『受け止めるしかないっ!』


 俺は一度だけみたモロのキャッチ技術を真似て、黒い火の塊から手を引き抜き見事にタマゴをキャッチしてみせる。


「ナイスタマコっ!」

「ぐすん、ぐすん、それはコカリリスのタマゴ……?」

「ああ、とびっきりの美味いタマゴだぜ」


 俺の手におさまったタマゴはタナダタの町でみたタマゴと色が異なり、金色の輝きを放っている。


「俺が出来る調理法ってコレしかないけど、我慢してくれ」


 コクンっと頷く神様を確認して、俺は金色に輝くタマゴを割り、豪炎の器に中身を落とす。


「私の記憶にそんなタマゴはないの……」


 涙声で暴食の神は問いかけて来るが、俺は咄嗟に応える。


「ああ、これは『ガチャ運』がないと出ないんだ。激レア限定なんだよ。今日はついてた。神様は今日、激レアと出会えたんだ、俺にはこれしかできないけど食べてくれますか?」


 俺はタマゴをブーストでかき混ぜ、半熟になる頃合いに手首を返し綺麗に巻いていく。


「これ、は」

「これは卵巻きっていう料理です、激レアタマゴ仕立てなので滅多に食べれませんよ」


 俺は唯一残ったテーブルにソレを置き、神様の目の前に置く。


「どうぞ」


 暴食の神様は差し出された卵巻きを指で一口サイズに切り分け、ソレを口の中へと放り込む。


「はふっ」


 一瞬の静寂が場を包み込み、次の瞬間。


「ん……」


 溜まっていた涙をツーと流しながら、二口目、三口目と食べ続ける。そして。


「おかわり……」


 おかわりを要求されるも、タマゴは既に手元にない。


「神様、ガチャガチャは一日一回までって決まりがあるんです。それに、激レアなタマゴが出る確率は凄く低いんです。だから今日のコレは、また激レアタマゴがでた時にしましょう? ね?」


 俺は説得を試みると、予想外に素直な返事がくる。


「わかった、あなたの料理は確かにいただいたわ。でも、次に激レアタマゴが出たら、もう一回食べさせてよね? とても美味しかった、ご馳走様」


「ありがとうございます」


 俺はまだ気が付いていない。暴食の神様が満たされる事が無いという事実を、そして俺の世界の言葉であるご馳走様という言葉を言い放った意味を。


「少し疲れちゃった、寝る場所ってあるのかしら」

「えっと……はい、案内します」


 俺はライラ様の館でなら休めるとふみ、暴食の神様をおぶって歩き出すのだった。


「ありがとう……」


 背中から何か聞こえた気がしたが、俺は尽きかけていた精神力を振り絞り無事、館まで到着するのであった。

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