61:Ⅷ騎士-3-
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
「あれとか美味そうだよな!」
俺が皆に話しかけると、冷ややかな視線を集める。
「あ、あれ、美味そう、だよな……?」
唯一モロだけが俺に賛同してくれるが、何だろうこの空気。
「やー」
タマコがセンチの後ろに隠れビクビクと震えだす。それと同時にセンチさん。
「貴方、よくタマコの前でコカリリスの串焼きみて美味そう美味そうとはしゃげますね」
そう、今歩いている区画は食の露店が並んでいるのである。その一つに串焼きの店があり、串焼きを指さし美味そうとはしゃいでいたわけだがタマコさん、君のお肉はとてもおいしそうです御免なさい。
「いや知らなかったとはいえすまなかった、とりあえず2本でいいから……」
交渉開始である、お金を持ち歩いていない俺はセンチかサーモにねだるしかないのである。どう頑張ってもお金がないので自力で目の前の食事は勝ち取れないのである。
「深浦さん、露店もいいですが落ち着いた場所にしましょうよ」
とはサーモさん。この区画を進むと食堂や宿屋などの施設の類が多くなる、とガイドブックには書かれているそうだ。
「この宝石サンドっての、早く食べてみたいな……」
サーモはにやけた顔を隠せきれず、ガイドブックと睨めっこしながら行く店を既に決めているようだ。
「あの、サンド亭はやや値が張るかと」
とはセンチさん。値段を聞くがピンと来ない、サーモは大丈夫だと言い張っているので、ここはサーモの決めた店に行くこととする。
「折角太陽の都についたんだし、少しくらい美味いもの食べよ。そのサンド亭に直行しよう」
俺達は露店からの様々な匂いの誘惑に耐えながら、サンド亭へ向かった。目的地まではそう遠くなく、俺の見立てが間違いなければ木造の建物で、三角の看板に読めない文字が書いてあるがここがサンド亭で間違いないだろう。
『サンドイッチのお店、なのかな』
そんな予想をたてつつ、解放されてる入口を通り抜ける。
「あそこにしましょ」
サーモの先導のもと、空いてるテーブル席に腰を下ろす。テーブルにはメニューらしき用紙が置かれているが、全く読めないのでモロが注文したものと同じものを頼む俺。
「俺もこれで」
センチはタマゴサンド、サーモは宝石サンド、モロと俺はミートサンド。タマコは水だけでいいとかたくなに食事を拒否したので見てるだけである。
「タマコさん? 何も食べなくていいのか」
と聞いてみると、どうやらコカリリスは砂と水で十分らしい。その上でタマゴを吐き出すのだから、何というエコ生物なのだろうか。
「見ない顔だね、どこから来たんだ」
と、料理を運んできた男前がそのままテーブルにつき話だす。
「えっと、ちょっとサーモさん? お店の店員さんってこういうものなの?」
小声でサーモに聞いてみるが、非常識よね。でも無くはないという返答をいただく。
「あの、それ俺の……」
運んできたサンドの一つをひょいと食べ、おお悪いといい一つ減ったサンドを渡される俺。
「そうだな、見かけないけど悪い奴ではなさそうだ。良し俺の事を知ってるか!」
一方的に話かけてくる店員さん。
「知りませんけども何か」
と返答しておく。
「知らないのか。くそう、やはりこういう姿では俺様の正体が伝わらないのか、非常に残念だ、残念過ぎる」
顔に手をあて何か自分に酔いだす店員さん、何こいつ。
「そうかそうか、俺様はパリイというんだ、覚えておきな」
そういうだけ言って、パリイという男性店員は店の奥に戻っていった。
「よし、気を取り直していただきます!」
既に皆はパリイの話を無視して半分ほどそれぞれのサンドを食べていた。俺も一つだけ減ったミートサンドを頬張るのであった。
『もぐもぐ……うまい』
そんな食事中、タマコはずっと目をギュッと瞑ってたのだった。
宝石サンド:果物が蜜でコーティングされたフルーツサンド 5φ
タマゴサンド:コカリリスのタマゴを使用したタマゴサンド 1φ
ミートサンド:鳥肉のサンドイッチ 5φ
φ(ファイ)=お金の単位