58:Ⅷ騎士-1-
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
『はぁはぁ、ちょっとだけ疲れるなこれ……』
俺はコカリリスの背中から100連砲と称してフレイザーをぶっぱしてみたのだが、これが実に疲れる。
『ギルド戦や攻城戦、レイドとかよりは疲れないけど……』
ネトゲの事を思い出すとしんみりした気持ちになる。
「ちょ、ちょっと貴方、何考えてるの!?」
「深浦さん、それはちょっと……」
再び二人から突っ込みが入る。素直に振り返り俺は一言。
「悪い、ちょっとコレ使ってみたかったんだ……」
「使ってみたかったで、あんな馬鹿な事しないで下さい! そもそも何ですか、あの非常識な火具……ですよね。あんなの見たこともないですよ」
「深浦さん? 以前から思ってましたが精神力が異常過ぎます。でも、宝石が好きな人に悪い人はいません、だから信じてます……よ?」
「遊多ー、ちょっとだけ上手になったね! モロも遊多の成長に感動だよー」
「あーうん、モロが喜んでくれるなら良かった」
俺は移動しようとするとガクッと膝が砕け倒れそうになる、が。
「も、モロ……」
懐かしい感覚に包まれる。目の前にはモロの体があり、俺をそっと抱きしめ支えてくれたのだ。
「大丈夫だよ遊多、モロとずっと一緒だよ」
「あぁ、俺はいつまでもモロと一緒だ」
俺はモロに抱かれながら、過去にも同じやりとりをしたな、と更に感傷に浸っていた。
「バカがいるわ……」
「バカップルですね……」
冷ややかな突っ込みと同時に、コカリリスが降下を始める。まだ太陽の都まで若干距離があるが、そのまま地上へと着陸する。
「降りろって事かな?」
俺が尋ねると、コカリリスは『そうだよ』と答えたように感じた。俺達は素直にコカリリスの背から降り、そして……。
「ちょっと待ってね」
と、モロがそういうとコカリリスが淡い光に包まれ……。
「はぁい、お待たせ皆。それじゃ行きましょ」
コカリリスはモロとそっくりな女の子に姿を変え、何事も無かったように歩き出す。
「ちょっと待ったぁぁぁぁ」
久々に俺から突っ込んだ気がするぜ……それはいい、コカリリスって擬人化するんですか? シゼルさんコカリリスをバッサバッサなぎ倒してたよ……?
「あ、人化した姿は初めてか。私も自己紹介しとかなきゃね? 私はタマコ、モロに名前つけてもらったの。本来の姿だと皆に迷惑かけちゃうみたいだから、こっちの姿になりましたっ。やふぅー」
「コカリリスが……」
「コカリリスが……」
サーモとセンチの二人が同じリアクションで口をパクパクさせている。と、いう俺も口をパクパクさせたが、砂が口に入りジャリジャリするのでそっと口を閉じた。
「大丈夫だよ、私は人襲わないし。むしろ私達って人に捕まったり、狩られたりするからどちらかというと私の方が大丈夫じゃない!? いや、でもモロは良い子だしなぁ。大丈夫っか! やふぅー」
タマコと名乗るコカリリスは非常にテンションが高く、それはもう何だか楽しそうで……。
「まぁこんな事くらいで驚いてちゃダメか。とりあえず行こうぜ皆……」
考えるのをあきらめ、未だにパクパクしてる二人の背後にまわり背中を押し移動を開始する。
「世の中って不思議だらけだわ……」
「同感、退屈しないですむわ……」
と、ぶつぶつと女性人の声が聞こえてくるが、二人の柔らかい背中をぐいぐい押しながら歩き続ける。
「ちょっと待ちな、アンタたち」
声が聞こえたので、二人の背を押すのをやめ声を発した人物を確認する。
「あ、どうも……」
とりあえず軽く会釈しておく、と相手が声色を変えた。
「もしかして……センチか!?」
その人物は駆けよって来て俺を通り過ぎセンチの肩をガシッと掴んだ。
「あの、もしかしてヴィッシュ様、ですか……?」
その人物はフル装備で素顔が見えなかったが、頭の防具を外して素顔を見せる。
「ああ、大丈夫だったんだな。良かった。しかし、先ほど巨大なコカリリスがこの辺りを浮遊していて確認に来たんだが……唐突に姿が消えたかと思えばお前たちがいたわけだが……説明してくれるよな?」
俺の方を向き、説明を求めているようである。モロとタマコは少し先でじゃれあっているので、それを放って俺は答える。
「はい、俺でよければ……」
ギッとキツクにらまれ、ヴィッシュという鎧男はセンチに視線を変える。
「センチ、説明してくれるよな?」
俺が答えたのに再度、センチに質問をし直すヴィッシュさん。何故俺に尋ねたんだよ……。
「ええ、私達からも色々話したいことあるし。よければギルド支部でもいいかしら」
「ああ、構わない。お前等全員保護してやる、ついてこい」
ヴィッシュは俺達に背を向け、ゆっくりと歩き出す。
「なぁセンチ、さん。あの人って何者……?」
「何で今更さんづけするの、呼び捨てでいいわよ。あの人はⅧ騎士の一人で、ライラ様専用の騎士ね。モコン様についてたシゼルさんのような存在よ。他にも太陽の都には7貴族あってね、それぞれ専属騎士がいるわ」
「へぇ、とりあえず安心してついて行って良いって事だよな?」
「それは問題ないわ、どちらかというと貴方達二人の行動が不安よ……」
「ですね……」
ジト目で二人に言われてしまう。が、今色々考えても仕方がないのでヴィッシュさんの後を追うように俺達は歩みを進めた。
『やっと太陽の都か……』
寄り道を少しだけしたが、俺はやっと太陽の都へと無事到着するのだった。
Ⅷ騎士のお話がスタートします。短く綺麗に進めたい。