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火の世界の豪炎  作者: PP
第一章-太陽の都編-
47/147

47:タナダタの町攻防戦(夜)-4-

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

2015/4/10:文章手直し

 チャ川へと向かって駆け出すシゼルを目で追い、俺はため息をつく。


「とんだ野郎だぜ」


 人が飛ぶわけがない、俺はそう思っていた。


「リーダー、没入を開始しましょう」


 俺が振り向くと、第三組のメンバーが俺に話しかけていた。


「そうだな」


 俺は短く答えた。目で追いかけていたシゼルの火の制御は、滅茶苦茶なまでに神がかっていた。


「あれが……」


 俺もあんな姿みせらせたら、やりきるしかないと決意を再度固めた。


「皆、最終確認だ。俺たちは第三組は『フレイザー』をデータとして持ち帰り、確実に1体ごと撃破を狙う」


 俺は続ける。


「この書物はギルド書庫へピンポイントに設定されている。当然この書物は相当精神力を消耗する訳だ。俺でも没入は15分が限界だろう」


 第三組の皆が本をギュッと握るのを確認した。


「今回は俺がリーダーをさせてもらうから言わせてもらう。10分以内だ、10分以内にデータを各自持ち帰れ。いいな!」


 頷く者、応と声を出し応える者、寄せ集めで作られたこの第三組である。

反発的な者がいなくて良かったと思うべきか。


「俺たち第三組は第五組の各自に護衛してもらう事となる。気のしれない相手に命を預けるんだ、当然気が引けるかもしれねぇ」


 俺達第三組はギルド員ではあるが、各自ソロの集いである。そして、ツリィムの没入にあたり『他人』である第五組に守ってもらう。つまり身を委ねるのである。


『不安だよな、だが今は我慢してくれよ皆』


 まだ不安はある。ギルド本部にある書庫への遠距離座標への没入であるがそれだ。遠距離座標への没入は精神力の消耗が相当激しいのである、正直データを持ち帰ってから詠唱する気力もない程だろう。が、持ち帰り詠唱までしないといけない状況なのである。


「くそ、リーダーを任されたんだ。しっかりせんと」

「おいアザル。俺は10分とはいわねぇ、5分で持って帰ってやるよ!」


 そんな俺の不安を知ってか、俺の横腹にコツンと拳を当て発言する野郎がいる。


「くそ、お前みたいなやつに負けるかよ。いいか、各自『フレイザー』を必ず持ち帰るんだ。命はパートナーになった奴に全部任せろ、いいな!」


 そう言い、俺は第五組のリーダーバインとハイタッチをかわし、そのまま没入を開始する。


 俺は書物を開き、片手を乗せ火の制御を開始する。そうすると火の輝きが手を包み、支えていた手を離したが書物はそのまま手に吸い付いたかのように落下する事無く、宙を漂う。


 空いている手を更にもう片方の空白ページへのせ、再び火の制御を開始する。


『……接続完了……』


「没入開始だ!」


 俺が先陣切って没入をする。既に俺の視界は暗転を開始して、第三組の没入を確認できなかったが俺に続いて皆やってくるだろう。


 意識が遠くなり、俺は太陽の都よりもずっと遠くにある座標・ギルド本部書庫へと没入したのだった。




 一方その頃ーー


「ドゴォォォン」


 館が大きく揺れ、窓ガラスがパリンっと全て砕け散り俺は意識を覚醒させる。


「やばっ、パソコンだけはっ!」


 と身を起こしたが、ここはモコン様の館にある一室であり。勿論パソコンなんて物はないのである。


「あー、今は異世界にいるんだったよ……な」


 俺はそんな事を思いながら、ベッドから身を起こし再びドアノブに手をかける。


『ガチャガチャ』


 やはり扉は開かない、という事でこれは誰かのイタズラだろうと思い込み再びベッドへと戻る。


『おやすみなさい』


 そして安眠を開始したのであった。


 扉の向こう側は既に一筋の水により抉られ消滅しているという真実を知らぬまま、深浦 遊多は眠りにつくのであった。

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