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火の世界の豪炎  作者: PP
第一章-太陽の都編-
41/147

41:町が見えました

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

2015/4/1:文章手直し

「あそこがタナダタの町だね!」


 自然と声が弾んでいる。その理由は勿論遊多がそこにいるはずだから。


 共に歩んでいるセンチは、実はちっとも遊多が生きている可能性を信じていなかった。でも私は、自分を元気づけるために吐いた優しさの噓だという事に気がつかないまま、視界に入った町の姿に歓喜していた。


「ええそうね、その深浦って人を見つけたら水瓶弁償してもらおうかしらね」


 センチが商売道具を壊された件に対して、お金を要求してきたのである。お金なんて持ってないので、遊多なら持ってるかも? とだけ出会った頃にも答えたような記憶があるが、今でも遊多から回収する気満々なのである。そもそもお金の概念を知らなかった私には、そのお金という物がどんな形の物かもわからないのだが、遊多がお金を持っているとは思えなかった。


「遊多、たぶんお金持ってないけど大丈夫かなぁ」


 小声で私は呟く。そんな私の声が聞こえたのか、センチはすかさずフォローを入れてくれる。


「貴方達は北側から来たのでしょう? 珍しい物との交換でも勿論いいわ。安心しなさい、私も鬼ではないわ」


 センチはそう言うと、自然と歩く速度が早くなる私の肩をつかみ、ペースを乱さないようにと注意してくれる。


「モロ」

「はぁい」


 また怒られちゃった。砂漠を渡る者、慎重に動くべし。そう何度も何度もセンチには怒られたが、そのおかげで順調にタナダタの町、遊多がいるであろう町まで後少しとなった。


「センチ、ありがと」

「知らない知らない、そんな言葉はいらないから少し休みましょう」

「はぁい」


 町が見えだしたのに休憩と言われ、今度は声のトーンが少し下がってしまった。でもセンチの知識は確かなのだ、ここは言うことを聞こう。


「良い子ね、これでも食べて休んどきなさい」


 そういって干し肉を半分にナイフで分け、片方を私にくれました。

 干し肉は噛めば噛む程味が出てくるから大好きです。


「うんっ!」


 干し肉を口に含み、モゴモゴとしていると次第に塩分と肉の味が口内にしみわたり、遊多と一緒に食べたいなぁなんて妄想をしてしまうのです。


「モロ、ハウス出して!」


 干し肉を噛みしめながらセンチからハウスの使用指示がとんできます、が私は干し肉が食べたいのです。


「後一枚追加であげるからはやくっ!」

「えいっ!」


 私は全力で樹の操作により屋根付きの家を生成。私が本気を出せば一瞬で扉つきの1畳のお部屋の完成です。やったね、追加で干し肉一枚食べれるよ。


「相変わらずね。でもいいわ、あの数はやり過ごした方がいいでしょう」

「どうしたの? モグモグ」

「コカリリスの群れよ。この地域の主食になる卵を口から吐き出す鳥ね」

「モロはあんな鳥はじめてみたー!」


 どうやら、あの大きな2枚の翼で大空を滑空する青白い巨大な鳥達はタナダタの町から集団移動をしているようです。


 ここで気になる事が出来ました。


「ねぇ、センチー?」

「何、ちょっと観察してるんだから」


 ハウスの一部に作った監視用窓から外の状況把握に努めるセンチを置いて私は尋ねるのです。


「その卵って美味しいの?」

「普通よ、不味くはないわね。この辺りじゃ毎日食べてるくらいだし」


 普通の味、気になります。

 遊多の事を三割くらい気にしたまま、私は残りの想いをコカリリスに対して熱い眼差しで『いただきます』と語りかけるのでした。

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