40:火の指輪製造Ⅰ-4-
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
2015/3/30:文章手直し
さて、どうしてこうなった脳内会議の時間だ。
俺は未だにギルド内にある机につっぷしたまま休憩をしている。勿論、激しく疲れているからである。整理しよう。
シャーケギルドが受けた依頼とは、メイさんが出したもので。それを完了する為に向かったタナダタの町東部。そしてオープンワールドのツリィムへと没入した。
そこで再度出あった神様(自称)だ。続いて、現実に戻ると鳥の群れが俺達を囲っていた。思い出してみよう。
意識が戻った時には現実世界(ただし異世界)に居た。没入する前はサーモとフレクの二人と一緒だったが、何故か俺はシャーケギルドの六人全員に囲まれていた。
「よっと」
俺は声を出しながら立ち上がった。
「あ、遊多兄ちゃん!物は!?」
急いでるような感じで話しかけてくるフレク。
「ああ、無事持ち帰ったよ。ほら」
パラパラと本のページをめくってみせる。データが収納されていない時は中央の一頁のみしか開かないので、持ち帰りには成功しているようだ。
「おお、流石だな。歩けるか?」
ベンが俺に激励の言葉をくれる、ふふ。俺だってモロ流の体作りをしているのだ、やればできるのだよ!
「応、戻ろう!」
俺が元気よく答えてみせるが六人が揃って声を出す。
「「「「「「えっっ!?」」」」」」
声が重なる。つられて俺も声が出る。
「えっ??」
疑問符を浮かべる。
「お前、大丈夫なのか」
無口そうなオギリ君が心配そうに尋ねるので、再度答える。
「お、応。ほら!」
その場で跳ねてみせた。
「「「「「「えっっ!?」」」」」」
「えっ?」
「「「「「「えっっ!!!?」」」」」」
「えっ?」
無限ループ怖い、尋ねてみよう。
「いや、なんでそんな皆して驚くの。むしろクマノジン? は終了?」
シャーケギルドの面々が驚いたまま固まっていたが、モクが動く。
「動けるのは正直ありがたい。ツリィムに入ったら大抵動けなくなるからな」
更にモクが語る。
「それで、上を見上げたらこの陣形の意味はわかってもらえると思う」
モクにいわれるがまま上を見上げる、と鳥が飛んでいた。
「鳥っているんだなー」
呑気にそんな発言をすると、パシンとサーモにどつかれた。
「深浦さん、冗談いってる場合じゃないでしょ。コカリリスよ、コ・カ・リ・リ・ス。それも軽く五十はいるじゃない」
「コカリリス、はて。コカトリス? はて。コカリリスて何だろうか」
「お前は何も知らないのな、あれはな」
とベンが語ろうとすると俺たちのいる近場に何かが落下し、ベチャッと音をたてて砕けた。
「もうきやがった」
俺は何が起こったんだと、思っていたが。
「深浦さん、タマゴ料理って食べたことあるでしょう? あれですあれ。コカリリスの口から飛んでくるアレがこの町の食糧源ですよ」
フライが丁寧に解説してくれる。やさしいな。
「飼っているコカリリスがいるから、討伐してもいいんですが……」
「数がなぁ」
「やばいよな」
「無理無理」
「えっと、あのタマゴって……」
「当たるとベチャベチャになる。そしてとてつもなく痛い」
無口そうなオギリ君が顔をゆがめて教えてくれる。
「全部倒せたりは」
と、発言したところで皆の弓筒をみせつけられる。
「既に矢は緊急時用しか残ってない、残念だが」
「全力で逃げろ!」
最後の最後でベンはそう言葉を発して、俺を囲んだままの陣形で駆け出す。俺も書物を胸に抱きしめ、落とさぬよう必死に駆けだしたのだった。
結果ー卵の被弾
ベンー0
オギリー1
モクー4
フレクー3
サーモー秘密
フライー秘密
俺ー50以上
といった結果となった。勿論、火の鎧を纏い衝突緩和は出来るのだが、被弾する度にベチョッと卵が砕け臭いと衝撃によるダメージが蓄積されたのである。
何故かベンだけは無傷という、流石はリーダーしてるだけである。でも、オレマモッテホシカッタヨ……。
で、途中シゼルが楽しそうな事してるな! と乱入。あの人空飛べるの? って感じで空をかけてコカリリスを狩りつくしてくれましたとさ。
ギルドに戻ると、すぐに俺たちはシャワー室へ。蛇口が一つだけで、シャワーノズルから水がでてくるのだが。
「ギャー」
と、最初冷水を浴びて悲鳴を上げたのはここだけの秘密である。すぐにフレクがシャワーの使い方を教えてくれた。水が流れて来るホース内で火の制御をして自力で適温にするのが普通なのだという。
そんな感じで依頼完了させたらメイさんが依頼主で、何やら不穏な事をいってましたとさ。
間違いなく、あの神様(自称)がこのコカリリスの異常発生に絡んでるわー。マジないわー。
脳内会議結果
1つ『神様(自称)のいう太陽の都へは向かわないと何されるかわからない』
1つ『メイさんが指輪作って、俺に填めようって何の儀式なのか不安です』
1つ『シャーケギルドの皆と仲良くなれたよ。たぶん』
1つ『モロさん会いたいよ』
ーー脳内会議はここまで。
「そうだな、明日タイミングみてモロを探しに動き出すか」
心の中で発言したつもりも、ツリィム内での感覚の折り合いがまだついておらず、一人誰に言うでもなく声をだしていたのだった。