3:狩り時々出会い
2015/2/3:文章手直し
2015/2/21:誤字修正 形体→形態
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
「母さん、今日は何食べたい?」
私は母さんに問いかけると、いつもと同じ答えが帰ってくる。
「果物がいいわねぇ、甘い奴が」
『はぁ……』
私の住む町は私も含め、皆精霊である。
『私が変なのかしら』
ふと、そんな事を考えてしまう。甘い果実は確かに美味しい、美味しいが毎日同じ物を食べ続けて町の皆は飽きはしないのだろうか、と思っている。
『成人したんだし、狩りでもやってみようかしら』
狩り、勿論『肉』を食らうため動物を狩るという事である。精霊には肉の摂取は必要なく、果物だけでも生きていけるのだが……。
『お肉食べたい。うん、私はお肉、母さんは赤くて甘い果物で決まり』
「それじゃぁ、行ってくるね母さん」
家の扉を開けると勢いよく飛び降りた。そう、言葉通り高さ15mもあるこの場所から地上へ飛び降りたのだ。
ここ、リーモの町は樹の精霊が木々の上に木造の家を建て生活している町なのである。私たち樹の精霊は不器用なので、家に関しては人間の建築士という職人に作ってもらっているが、中々に出来がよく人間との交流は深い。
見た目も人間と同じ形態をとるようにしているが、なぜか私だけすくすくと身長が伸びてしまった。他の子と違って肉が好きだからだろうか? これでも13年生きてきたが、既に身長は168㎝と170cmという大台まで後2㎝というとこまできてしまった。他の皆のように小柄で可愛い女の子でありたかったと、そう思う反面お肉を愛してやまない肉食系な私である。
精霊も勿論服を着るわけで、今日は狩り(お肉)という事でお肉色のピンクと赤で揃えてみた。勘違いをしている人間が多いが、精霊だってしっかりオシャレ意識は持っているのである。
私は赤い服に紺色のデニムという、オーソドックスタイプを身にまとい、籠、ではなくピンク色のポーチを方からさげている。オシャレ? うん、私は気分で変えるしこれでいいの。
地面に華麗に着地した私は、今日はあのお城の方面へと足を向けてみる。
『確かこっちに赤い果物がなっている時期よね』
そんな事を思いつつ、実際のところはその先にいる動物を探そうという魂胆である。そして10分程まっすぐに歩いているとそこには……。
『あれ、こんなところに人間?』
私達の町を目指してるようで、その足取りはとても重く見え、そして。
『ぷぷっ』
その人間はこの森の中で、何故かぐにゃっと方向を変えては同じ場所をぐるぐるとまわるように歩き続けているのだ。それも1時間近くである。
私はそんな彼を見ながら果物の採取と肉の獲得をおえた頃には、お肉を食べたい気持ちも忘れてあの彼への興味が尽きなくなっていた。
「豪炎っ」
彼は何をしているのだろうか、ついには座り込み樹に向かって何故か火を放っていた。それが更に面白くついつい。
「何やってんの?」
と、声をかけてしまったのである。私は今まで色んな火を見てきたし、操ってきた。そう、13年ものあいだ常に火と共に歩んできたのだ。私だけでない、他の生命も、物も全てである。
『ぷぷっ』
再び私は吹きかけそうになってしまった、何故なら彼は火というものがまるで操れていないのである。話を聞くと、休憩中の彼は遊多という年上の男の子という事がわかった。
『年上なのに、火がまるっきり子供じゃない』
私は町の中で最年少であり、ここまで拙い火の操作をみたのは初めてである。
『年齢は大人でも……ぷぷぷ』
私は冷静を装いつつも『まるっきり子供である彼』を誘っていた。
「それじゃ、行きましょ」
と。これが彼と私の出会いであった。