21:とても修羅場です
やっと主人公視点に戻ってきました。12月24日も特に予定はありません。
2015/2/25:文章手直し
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
道具屋では酷い目にあった。
唐突に親だと紹介され、何故かメイさんが俺に求婚してきたのだ。
勿論、やんわりと断りを入れている、がまだ熱い目線が注がれている。
『俺の何がいいんだか』
自慢ではないが、引きこもり万歳、ネットゲーム万歳、レベル上げ楽しい! の俺には不釣り合いな程、メイさんは美人さんだし色々教えてくれる、良い人である。が、このやり取りは割愛しておこう。引きこもりは臆病なんです。
そして先ほど、命の恩人であるシゼルさんからの頼みである手合せとやらをする事となった。そんな経緯があり、現在ギルドの闘技場へと足を踏み入れている。先ほどまで、様々な場所で訓練? をしていた人がいたのだが、全員アナウンスと共に場外へと移動していった。
『ここもまぁ、イメージ通りの場所だなぁ』
ギルドは、店内には掲示板、雑談ができる広場、椅子や机、フードコートらしき場所もあり、カウンターで依頼や相談をができるようになっていた。
そして受付の人へシゼルさんが話しかけ、隣にある通路を通り抜けると、そこは闘技場となっていたのだが。陸上競技場、すなわちサッカー等が行われる会場と似た作りがされたこの場所が闘技場と呼ばれているらしい。違いは芝生ではなく全面土なくらいか。
剣や弓、様々な武器での打ち込み稽古などしていたようだが、スピーカーから流れたアナウンスによりシゼルさんと二人、闘技場のド真ん中に取り残された。
『スピーカーとか、地球と技術水準かわんねぇのかな』
そんな事をぼんやりと思いながら、気が付いたらシゼルさんが俺に話しかけてくる。
「では、手合せを願おうと思うが、得物は何かあるかい?」
「得物、ですか。いえ、俺には豪炎しかないので」
「豪炎? 火の操作の事か。まぁいい、ではいくか」
「えっ、あっ!?」
開始の合図もなく、唐突に間合いを詰めてくるシゼル。刹那、シゼルの右手に握られていた短剣が俺の頬をかすめ顔が熱くなる。
「あ、あぶねぇっ」
「はは、あれを躱すか」
顔付きが更にマジになっていますよねシゼルさん。それ当たったらシンジャウ奴ジャナイデスカ。
改めて、俺は思う。モロとの修行がなければ今頃人生フィニッシュしていたと。
だが。
『見える、よな』
再び短剣で切りかかってくるシゼルの動きが見える、体も追いつく。シゼルは再び間合いを一気に詰め、突きを放ってくる。刹那のタイミングで俺は横に躱すと、追い打ちとばかりにシゼルは膝を打ち込んでくるが、この態勢からでも俺の体は反応した。咄嗟に出した掌で膝を受け止めその反動を生かし後ろへ後退する。
『あれ、俺』
シゼルは後ろへ跳躍した俺に向かって短剣をそのまま投擲する、も俺は火を纏い自身の軌道を更に横へずらし回避をする。
一瞬の出来事である。引きこもりの俺がこんな神回避できているのに自身、驚きが隠せないのである。
「避けてばかりか深浦さんよぅ!?」
俺が火を纏ったからか、シゼルも火を右手に集約している。
「これはどうか、なっ!?」
『げぇっ』
「豪炎:セット装備1」
俺が編み出した豪炎シリーズ、その名もセット装備1をイメージする。技名を叫ぶ事によりイメージを簡略化しているのである。
躱すことの出来ない態勢で、攻撃を受けた場合はどうするのか。今の俺には耐えるしかなかった。俺は全身に火の鎧を纏い、左手に火の大盾、右手に火のロングソードを、頭にはフルフェイスの火を纏い、足、小手、とにかく全身に火の装備を加える。
『痛えっ』
効果は単純である、豪炎による耐性アップ。しかし、大盾をとっさに構えるもシゼルの火は俺の大盾をパリンっという音と共に砕き、俺の体を貫いていた。
俺の体にシゼルの火球がヒットするも、大盾と鎧が緩衝材となりダメージを和らげてくれている。それでも痛いのだ。恐るべし異世界の火。
「カハッ」
「おお、これも防ぐのか」
シゼルがやっと俺を評価してくれた、のだろうか。攻撃の手が止まった。
俺は一方的にやられるも、まだ左手の大盾が破壊されただけでセット装備のイメージは強く残っている。
「しかし面白いな、お前の火は」
「そりゃどうも」
モロにも言われたっけか。1つのイメージで作り上げた火は1つの塊として操作する概念があるらしい。
モロが投擲してくる木の実をどうにかして防げないかと、火の盾を作りだしてみるも貫通して破壊され続けた。が、収穫はあった。大盾は当たった物の緩衝材となるのだ。
それでは、と盾と鎧を同時に操作して纏ってみたのだ。結果は、ダメであった。
大盾が破壊された瞬間に鎧も同時に砕けたのである。二段構えのイメージをとったが、上手くいかなかったのである。
そして試行錯誤の結果、部位破壊という概念を用いてセット装備を成功させたのである。
『1つの操作で、部位破壊後のイメージまで作り上げる』
これが俺の結論である。今回もうまくいった、モロさんにマジ感謝。
「で、俺は待ってる訳だが来ないのか?」
シゼルが挑発してくる。ここまで一方的にやられたのだ、俺だって男、反撃をしようとする、が。
「あ、あの」
俺は思いとどまる。
「どうした深浦よ」
「そ、その」
強くイメージしろ、剣を振るう姿を。相手を叩っ斬る姿を。
「シゼルさん、俺」
俺の豪炎は、サーバー内でただ一人しか持てない最強の火魔法だということを。
「なんだ、はやく言え深浦」
俺は心が静まり返ったのを確認して、再度声を発した。
「ドウヤッテ剣ッテ使エバイインデスカ」
「……は?」
「そ、その、剣の使い方がわかりません」
俺は日本育ちのネトゲ中毒者である。クリックやコマンドで剣を振るう姿は見たことがある、が。
『実際これ、どう使えばいいんだよー!?』
俺は冷静に、自分が無能だと分析したのであった。




