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火の世界の豪炎  作者: PP
第一章-太陽の都編-
18/147

18:俺、生きてました

やっと主人公視点にもどります。今回も主人公をやれませんでした。


2015/2/25:文章手直し

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

 夢、夢をみていた。モロという少女と日々木漏れ日の中駆けまわる森、森、森、そして木の実を砕き食し、あつあつの炎の中に手を突っ込む荒業。ピザ職人が釜土の温度調べるようなレベルだきっと、違いない。そんな夢を見ていた。そして、誰かがそっと俺に熱い熱い接吻を……。


「ハッッ!?」


 俺は勢いよく起き上がった、何か懐かしい夢を見ていた。そして気が付く、ふかふかのベッドで寝ている事を、そして無駄に広いこの部屋に。うん、俺の部屋にはベッドは無かったし、こんな広い部屋みたこともない。


『夢であるように……』


 そっと二度寝を開始してみる、がそこでふいに声をかけられる。違いない、先ほど視界の中にはメイドさんの姿も確かに見えたのだ。そうだ、これは夢だ、夢だよな。


「お気づきになられましたか、すぐにモコン様をお呼びいたしますわ」


 俺はすっと、薄目にてメイドさんがいた場所を覗いてみるも、既に人影は見えなくなっていた。


「んだよ、いてて」


 体中が痛む、痛むが動かせない程ではない。記憶の整理だ、そうだ、記憶の……。


『あ、あ、確か俺は流されて』


 少しづつ、記憶が俺の意識へ流れ込んでくる。


『モロ、は居ないか……』


 今度こそそっと起き上がり、改めて周辺を確認してみるもモロの姿は見当たらない。ついでに、俺の唯一の服であったジャージ+αは今身に纏っていない。いわゆる真っ裸である。


「俺、どうなんだろ」


 また一人になってしまった、この世界で一人は余りにも寂しすぎる、余りにも過酷すぎる。


「やぁ、意識が戻ったときいたぞ」


 俺は頬に涙がツーと伝っているところを見られないよう、さっとシーツで顔を拭った。近づいてきた人は、どうやらこの世界の人間みたいだ。


「チャ川に流されて生きてるとは、全くもって運がいいな」


 そうだ、俺は流された。薄れゆく意識の中俺は死のイメージが脳に浮かんでいた。だが、実際はこうして生きているのである。


「私はモコンという。これでもこのタナダタの町では貴族をやっていてね」


 一呼吸いれ、モコンは続ける。


「君がどういう経緯で溺れたかは詮索しないよ、ただ折角拾った命だ、私の元で働いてみないかね」


 ニッと笑った笑顔から、モコンという人物から悪意は微塵も感じなかった。


「はい、俺なんかでよければお願いします」


「ははは、面白い。こんなに簡単に人を信じるとは、ははははは」


 大笑いされた、そんなにも一言返事でOKを出した俺は珍しいのだろうか。いや、それでも俺は本当に良い人に拾われたと思う。


「そうだ、後でシゼルを呼ぼう。彼にまずは礼を言う事だな。メイ、この人に食事を。うん、名を聞いてなかったな」


「あ、すいません、俺は深浦 遊多っていいます」


「長い名だな、まぁ込み入った話は後でいい、まずは体を休めなさい」


 メイと呼ばれた女性が俺に近づいてくる。そしてバサッとシーツをはがし、俺に服を着せる。いやもぉ、なされるがままに。


「遊多様、食事はこちらでお取りください」


 冷ややかな声で俺はメイと呼ばれる女性に無理やり連れていかれた。


『メイドさん怖い』



 長い長い廊下を歩き、食堂と呼ばれる場所へ到着した。モコン様は食事を運べという意味でメイに指示を出したのだろうが、俺は無理やりこの食堂まで連行される。裸の俺を無理やり服を着せてくれたメイドさんと一緒に、きゃ。


『うわぁ、人が多いな……』


 使用人なのか、それとも一般人なのか。溢れかえる人に俺は異世界も地球というほど変わらないな、という感想を抱いていた。


「こちらでお待ち下さい」


『食堂、だよなぁ、腹減ったなそういや』


 あれからどれくらい経ったのだろうか、意識がなかったので流石に時間の管理が出来ていない。ただ現在は夕方なのだろう、廊下を歩いてる時に夕焼けが窓から差し込んでいた。


「お待たせ、ゆ、ゆ、遊多様、これでも食べてなさい」


 顔を真っ赤にしながら、メイさんは俺に食事を提供してくれた。と、いうか食堂で配っているプレートを運んできてくれた。


「これはどうやって食べたら……」


 目の前のプレートには、巨大な卵とプリンのような小山の食べ物が乗っている。


「貴方は記憶喪失か何かですか? それとも貧民なのですか?」


「いや、記憶もあるし引きこもれるくらいにはお金はもってたよ……」


 と、マジレスをしてしまった。やばい、異世界人ってこの世界で待遇どうなんだろう……。


「はぁ、不思議な衣服を着ていましたが西の民か何かなんですかね、いいです、これはこうやって……」


 なんだかんだいいながら、メイさんは俺にこの料理の食べ方や、俺の事を気にかけてくれていた。食事もそこそこに、俺はメイさんに連れられモコン様の部屋へと案内される。



「では、改めて自己紹介をしようか」


 食事を終え、俺はモコン様の部屋までやってきていた。俺の横にはメイさんと、先ほど伝えられた命の恩人シゼルさんが立っている。


「改めまして、俺はこの館の主でモコンという」


「私はシゼルという、生きてて本当に良かった」


「私はメイドをしているメイよ」


 一通りの自己紹介を終え、俺の番という事で俺も名乗る。


「俺は深浦 遊多って言います。異世界から来ました、この世界に来た時は北にあるお城にいて、それからお城の南側にある森で数日間過ごした後、太陽の都を目指して旅をしている最中、川に落ちて今、という感じです」


 俺は一息にざっくりと事情を説明するも、異世界という単語が上手く伝わらない。


「んん、地球っていう世界があるんですが、とても遠い場所です。それが異世界って場所です」


「そうか、君は西の民ではないか。西の民とは関係ないのだな?」


「はい、俺がこの世界で知ってるのは北の大地にある森くらいです」


「そこへ戻りたいかい?」


「いえ、ただ俺を導いてくれてたモロって娘には会いたいです……」


「わかった、ではその娘と会えるまでこの町に居とくと良い」


「では、私メイがこの町を案内致しましょう」


「そうだな、俺も警備ついでに一緒に行くか」


 シゼルとメイがこの町を案内してくれるそうだ。一瞬、メイさんがチッと舌打をしたように思ったが気のせい、だろう。


「では、解散だ。私もまだまだ処理する書類が多くてね」


「なんか、色々と本当にありがとうございます」


 俺はモコン様へ一礼して、部屋を出た。


「さぁ、ゆ、遊多様、行きましょう」


「そうだな深浦よ、まずは武器屋にでも行ってみるか?」


「なっ、シゼルの事は後回しでまずは私と道具屋にいきましょう?」


「あ、いえその」


 二人が俺を見つめてくる。なんだろう、この熱い熱い目線は。


「まずは道具屋、みてみたいです」


 俺は声を絞り出して答える。瞬間、メイさんはグッと小さいガッツポーズをとり、シゼルさんは面白くなさそうにしながら歩き出していた。


『俺、なんとかして恩を返したいなぁ』


 モロと会いたい気持ちもあるし、探しに行きたい気持ちも確かにある。しかし、こんな砂漠の世界で探しに行ってもすれ違うかもしれないし、モロは俺が太陽の都へ自力で向かったと確信してそっちに歩みを向けているかもしれない。


 とにかく、今は俺はこの町で待機する事を優先するしかない、そしてこの人たちへ、少しでも恩返しをしたいと思うのだった。


『俺にできる事、何があるかな……』

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