16:救助-2-
2015/2/20:文章手直し
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
少し私について説明しておこう。
太陽の都にある館の一つ、そこの主であるライラ様の友人の友人の友人。それが私センチである。ライラ様は太陽の都でとても優れた方で、皆から慕われている。
勿論、私も慕っているライラ様であるが、ライラ様の友人である剣士が、剣士の友人である商人が、そして私の友人である商人が私とライラ様と引き合わせてくれたのだ。
私には何も無かった、日々水を運び、水を売る。友人の商人から言わせれば真面目で信頼のおけるやつとは言われているが、実のところ他に生きる術を持ち合わせていなかっただけである。
ライラ様の館へ水を運ぶようになり、生活の水準はあがったが一度に運べる水の量が多い訳でもなく、まだまだ貧しい生活をしていた。
水不足になりがちなこの時期、オアシスは貴族に独占される為に平民はチャ川まで水を汲みに行く必要がでてくる。
実はライラ様もオアシスを一つ所有しているが、オアシスを枯らさないようにしっかり計算しているらしい。
私はひたすらチャ川と都を往復し、既に15年。最初に運び出したのは5歳だったので現在私は20歳だろう。砂漠の真ん中で商人に拾われた私は、そのまま商人の真似事を続け、今に至ったのである。
昔、とある話を聞いた事がある。北の大地には迷いの森があり、そこにあるお城が他国からの攻撃を防いでくれていると。南の大地には神々が住んでおり、足を踏み入れることはタブーだと。東の大地には人々が繁栄させた大地が続くと。西には火の加護がない大地が続くと。
真実は誰も知らない。ただ、その北の大地から人がやってきた事実だけは、今目の前にいる少女から確認できた。
20歳にもなって、私は胸が高鳴っていた。これから何かが変わっていくのだという期待によって。
「モロ、少しペースを落として」
「でも、でも……」
今にも泣きそうになっている少女モロ。北の大地の人間だと思う。急ぎたい気持ちはわかる、わかるが焦ってはいけない。ここはナン砂漠であるのだ、下手をすると私達も遭難してしまう。
「焦らないで、きっと遊多さんは生きている。この先のタナダタの町に流れ着いてるはずだから、安心して」
少女はコクン、と頷き私の歩調に合わせる。
タナダタの町に流れ着くのは間違いない、私もかつての仲間が流された場面に遭遇したことがあるのだ。勿論、その人物は今は生きてはいない。
『生きているといいね……』
無責任だ。信頼され続けていた私の口からは嘘ばかり出てくる。大丈夫だと。私は無責任である、ただ毎日を毎日できる事を反復していただけなんだ。希望がない日々、生きる理由がみつからない日々、黙々と水を運んでいた日々。
人助けをこれまでにも何度か行ったことはある。しかし、今回のソレはいつもと違う気がしていた。可能性は限りなく低い、だけど何かが変わるような、そんな気がしていた。
「モロ、少し休憩にしましょう。そして貴女の事を少し教えてくれるかしら』
ここで、私達はお互いの事を話し出したのである。