15:救助
新キャラ視点でのシナリオが少し続きます。主人公は果たして生きているのか……
2015/2/17:文章手直し
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
まだ意識がぼんやりする中、遠くで悲鳴が聞こえてきた。
「ぁぁ……」
おそらく誰かがチャ川に落ちたのだろう。
『馬鹿な奴がいたもんだ……あそこの水流は激しいから体を固定してから……』
ふと、そんな常識を思い浮かべるも、非常識を目の当たりにした記憶がよみがえった。
「はっ、大丈夫かっ!?」
私は大声で叫ぶも、川に落ちた声の主は既に何処にも見当たらない。その代わりに隣で脱力したように座り込んでいる少女が視界に入る。
『この子はさっきの……』
記憶では確か、丸太と共に空から飛んできた女の子である。空中では華麗に舞い、丸太の一本を粉砕していたように思う。他にもう一人、恐らく川に流されたであろう人物がいたが、その人物の姿が見当たらない。
「うぅ、遊多ぁぁ……」
泣いているのだろう、連れが流されたこの少女は途方に暮れているように思う。私はどうする、あの『向こう側』からやってきた彼女等を助けるべきなのか。
背負っていた大切な水瓶は恐らく割れたのであろう、付近には見当たらない。本当ならば怒っていい場面なのだろうが、さてどうしたものか。
「お嬢さん、私はセンチという、貴女の名は」
「うぅ、ひっく、ひっく」
『ダメだ、完全に混乱しているな』
「名前くらいお・し・え・な・さ・いっ」
私は言葉に火の力を乗せる、イメージするはやすらぎ。少女は泣くのをやめ、そっとこちらを振り向く。
「ごめん、なさい。私はモロっていうの、遊多と一緒だったの」
「そう、モロ。本当は貴女達を叱りたいところなんだけど、そんな場合じゃないようね」
「そうなの、そうなの、遊多が、遊多がねっ……」
遊多、というのは恐らく現在流されているであろう人物である。さて、ここから流されて生きているやら。
「そうか、連れは遊多というのだな、生きている保障はできないがここからだと……」
一呼吸入れると、腹がずきりと痛む。
「下流の方にあるタナダタの町付近に流れ着いているはずだ」
「遊多、生きてるかな……」
あまりにも悲しそうな顔をする少女を見て、つい私は言ってしまう。
「大丈夫、きっと大丈夫よ」
無責任な発言とは思う、思うがそう言うしか今は無かった。
『水の補給ついでに、人助けと行きますか』
水を運ぶ毎日、乾いた日常に変化が起きた境目。彼等とはそんな出会いの始まりだった。




