13:水を汲みに行きました
2015/2/17:文章手直し
2015/2/25:一部加筆修正
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載
2015/3/3:文章の一部手直し
一方その頃、私は今日も水を補給する為チャ川へと足を運んでいた。
ここは太陽の都から北部に位置しており、ナン砂漠と呼ばれていたりもする。都では現在、水不足という事もありオアシスを貴族たちが独占している始末である。おかげで、私はこんな場所まで徒歩で来ている訳だ。
頭には熱避けの布を巻き、灰色のローブを二重に着込んでいる。砂漠での熱操作は難しく、体温調整だけではなく、背負っている樽に入っている中身を蒸発させまいと、熱操作を常時続けているのである。水はある程度の熱に抵抗を持っており、常に冷え冷えなのだが、ある一定の熱には抗えず、水は蒸発する事も凍ることも勿論あるのである。
「ふぅ」
水滴を一粒、唇へと染み込ませる。水は残り少ないが、もう既にチャ川は視界に入っている。
『後一歩だな』
チャ川の水を持ち帰れば、一先ずは水不足を乗り切れるであろう。私は気を引き締め、ひたすら前へ進む。が。
「ぅぁぁぁぁぁ」
何処からだろうか、声がもの凄い勢いで接近してくる。
「ぅぁぁぁぁぁああああああああ」
目の錯覚だろうか、蜃気楼にやられたか? いや、それにしても。
『川の向こうから人、だと?』
あの川の奥には迷いの森があり、更にその奥に建てられたという城は北の大地を守る要であると聞いたことがある。実際に、川の向こう側へ行った者は城が見えるもたどり着けなかった、という報告しか持ち帰れなかったという。
異常である、私はとっさに身構えていた。
刹那
ソレはポーンと空へ舞い上がり、ものすごい勢いで私へと飛来してくる。
『イメージ』
私は火の操作を全て拳へと集中させる、水が蒸発するのは致し方ない、もうじきに汲めるのだからここは妥協するしかない。熱さに身を焼かれながら、私は飛来する物を思いっきり打する。
『ボシュッ』
決まった、飛んできたソレは一瞬で消し炭となり、私は何事かとその声の正体を観察しようとした、その瞬間それは続く。
「びゃっ」
クリーンヒットだった、続いて回転しながら飛来してきたソレは私のお腹を横殴りにし、そこで意識は途絶えたのだった。