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トレイマスターの日々  作者: 純菜
第2章 メイド喫茶は大変な所でした
31/38

第30話 天職と決意 私は平民になります

あー、また重たい話が来てしまった

テーマは重たいけど気楽に読んで下さい


○月×日


あれからドリルに手紙で謝罪された

直接会うと私が冷静でいられなくなるからだ

手紙だと、まだ冷静でいられる

そんな感じで文通が始まった

私はそんなに筆まめな方ではないんだけどなあ

文面はドリルの誠実さが伝わる物だった

ちょっとワルノリしてる所もあるけど


教室で会っても緊張してドキドキするだけで、近付かなければ大丈夫だ


治療の方は完璧だった

ただ治療法がなあ

うう、思い出したらなんかドキドキしてきた

深呼吸しよう


○月×日


アリサのメイド喫茶引退を考えなければならない


余所の家ではどうか知らないが、わが家では婚約したら婚家に早めに入り花嫁修行する事になっている

既に両家とも了承済みで、引っ越しの準備も整っている

近日中にわが家にお引っ越しだ


花嫁修行といっても、アリサは大抵の事はもう既に出来るので、家族と仲良くしましょうという意味合いが強い

もっとも、幼い頃からお互いの家を行き来していたので、もう既に家族同然だったりする


アリサの引退はけじめの様な物だ

引退イベントを今、企画している

アリサ目当ての常連さんも結構いるからだ

兄様も出たいと言っていたけど、婚約者だとバレたらムシられますよ?


アリサの代わりに新しくメイドちゃん達を増やした

今は研修と引継をやっている

皆熱心な子達なのですぐに馴染むだろう


○月×日


毎日が忙しい

修行に警備の手伝い、学園にメイド喫茶

毎日考える事があり、やる事がある

そして楽しい


私はもうすぐ16歳で、大人の仲間入りだ

将来の事を考えなければならない


女の子ならば普通は結婚が選択枝の上位に来るだろう

特に貴族の娘ならば

クラスの半分以上が既に婚約が決まっていて、社交デビューの後に結婚ラッシュが待っている

婚約済みの子達の多くがデビューしてすぐに結婚してしまうからだ

わが家は自由恋愛派なので私に婚約者はいない

将来の事を考えると仕事を考える必要がある


今の私にとってメイド喫茶は天職だと思っている

前世でサービス業に就いたり、なりたいと思った事もないが、今は楽しい

新しいイベントを企画したり、前世の料理を再現したり、知らない食材を探したり

感情を表すのが苦手だった私が知らない間に自然な笑顔ができる様になっていた

今なら私は自信を持って言える

天職に就いている、と


バイトのままなら問題はないが、このまま続けて行くには私が貴族の娘である事は無視できないのだ

身分を捨てる必要がある

その覚悟が必要という事だ


○月×日


学園でアリサに将来の事を相談した

と言っても決意表明の様な物だ

私は身分を捨てる事を決意した

家族に話す前に親友に聞いて欲しかったからだ

「やっぱりそうじゃないかと思ったわ。この所何か考えてたみたいだし。お店を辞めるつもりもなさそうだったしね」

やっぱりお見通しだったか

さすが私の親友


「それで家族には相談したの?」

「それはこれから。始めにアリサに聞いて欲しかった」

「そう。あ、でも、手続きとかどうなるのかな? やり方知ってる?」

「父様と相談する。どの道、当主の許可がないと何も出来ないし。反対されたらそれで終わり」

多分手順としては、当主が国に申請し、受理される流れだろう

うちは普通の貴族で問題や派閥のしがらみも無いし、私は次女なので相続問題も特に無い

家は兄様が継ぐ事は決まっているので何の問題もない

申請すればすぐに受理されるだろう


まあ、継承権と相続権の放棄かな

今までのバイト代はほとんど使ってなかったので、しばらくは暮らして行ける

どこかにアパートでも探さなきゃな


姉様、反対するかな


 □□□


夕食の後に、家を出てメイド喫茶で働きたいという事を話した

自分の天職だと

そして私の身分を捨てさせて欲しいと


姉様とエミーには泣かれてしまった

父様と兄様は渋い顔をしている

母様は心配顔だ


親不孝なのは分かってる

何も返せないのも

でも自分は見つけてしまったのだ‘天職’を


「ごめん母様」

「良いのよ、貴女は何時か出て行ってしまう気がしていたから」

「? どういう事ですか母様?」

「貴女は誰からも距離を置いて接していたわ、家族さえも。アリサちゃんと仲良くなって安心していたのよ」

「ごめん母様」

むむ

涙が出てきた

私は母様の胸で泣いてしまった


前世では家族とは疎遠で幸せな家庭に憧れていた

二度目の人生で、理想的な家族に恵まれ嬉しかった

でも自分はそんな家族にどう接して良いか分からなかった

その幸せな家族のいる家から、自分から出て行こうとしている

何やってるんだろう、私

ホント親不孝だ


結局父様は家を出る事を許してくれた

住む所は管理人のいる所となった

良い所を探してやるって

いくらなんでも若い娘が一人暮らしなんてできる訳がなかった

爺様と婆様にはちゃんと挨拶する様に言われた

う、家名を汚す孫をお許し下さい

ああ、メチャメチャ怒られそうだ


手続きをして家を出るのは、学園を卒業してからとなった

そして必ず、デビューパーティーには出席する様にと言われた

「お前の晴れ舞台だからな。母さんに見せてやりなさい」

う、また泣いちゃうじゃないか父様


「父様、母様ごめんなさい。折角貰った名前を使えなくなってしまいました」

「別に名前を変える必要はないんじゃないか」

「家を出るのと一緒です。甘えちゃいそうなんです、自分は貴族の娘だからって。これからはトレイ・サーバーとして生きていきます」

「それが新しい名前かい?」

「メイド喫茶ではそう名乗ってます。まあ、相棒の名前なんですけどね」

トレイを召喚して見せる

「この子がいなかったら今の私はいません」


 □□□


その夜、私は日記から自分の名前を泣きながら消していった

貴族の娘として甘えないように

これから平民として生きていくために

それが私の生きていく道だと思うから


なんだか最近泣いてばかりだ

そんなに泣き虫だったかなあ


実際の所、貴族のままでもメイド喫茶は営業できるのかもしれません

経営者として事業を興す事も出来るのですから


でもトレイさんのやりたいのは‘メイド’だったのです

トレイさんは家名に傷を付けたくなかったのです


後に経営者になるとは思ってないトレイさんなのでした


姉様の引っ越し

「あれ? 姉様はお引っ越ししないんですか?」

「だって貴女がいつ結婚するか分からないんだもの」

「私、結婚しませんよ、姉様」

「ふふーん。人生なんて分からないわよ? 私も婚約するなんて思わなかったから」

「一体何があったんですか」

「うーん。普通に出会って、普通に恋をしたかな?」

「どうして疑問系なんです?」

「さあ?」

姉様の謎は謎のままで!


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