第29話 私の前世 びくっ!!
「負けちゃったか」
私はぽつりとつぶやいた
「負け? 引き分けなのでは?」
怪訝な顔をするメロン
「幾らマルチタスクでリソースが取られてるからって、我を忘れているはずのドリルさんに勝てないのでは負けと同じです。ハンデ有りでこのざまだと、ハンデが無かったら勝てないって事でしょ?」
私は渋い顔で答える
痛てて……
「勝ち負けにこだわりすぎでは?」
「オールラウンダーの宿命ですね。どの技も極めるまで至らない。全ての技が中途半端。器用貧乏。このメンバーだと極めた人でないと対処できないんです。自分がどれ程の高みにいるか自覚してますか? 凡人にはついて行くのがやっとなんですよ?」
「私も努力しなかった訳ではありませんよ?」
「分かっています。でも、それに掛ける時間は、あれもこれもの私とは段違いの筈です。結局、中途半端なんですよ、私は」
「……後悔してるんですか?」
「あはは、実はしてないんですよねぇ。ただ、力及ばないのが悔しいだけです」
後悔はしてない
今やれる事を全力投球するだけだ
その数が他人より多いって事
二度目の人生なんだ
楽しまなくちゃ
メイド喫茶をやるとは思ってなかったけど
メロンとこんなに話したのも、初めてかもしれない
メロンは何時も話しをはぐらかすからなぁ
膝枕から見上げると、そこには大きなスイカが
いつの間にメロンからスイカになったんだろう
しかし大きいなあ
揉んだらダメかな
ダメなんだろうな
□□□
ドリルさんも目を覚まし
やっと冷静になって、謝罪された
「別に気にしてませんよ」
痛てて
ちゃんと笑顔が出来ただろうか
□□□
顔を腫らして家に帰ったら、家族にもの凄く心配された
朝食はスープや柔らかい物をお願いした
□□□
顔に大きなガーゼを当てて、学園に行くとやはり皆に心配された
クラスの全員が警備に参加している訳ではないからだ
警備の手伝いで怪我人が出たのは今回が始めてで、それが私なので更にびっくりされている
しかも、怪我をさせたのがドリルさんなので、ドリルさんへの風当たりが強い
特に自称妹ちゃん達が
何もしないと良いけど
「本当に大丈夫なの? 痕が残ったりしない?」
アリサにも心配されてしまった
「別に構わない。戦った傷なら気にしない」
「もう、男の子じゃないでしょ。結婚出来なくなったらどうするの」
「たぶん、結婚なんて出来ない」
そんな話しをしてたら、横から話しかけられた
「あのう、それはいったいどういう事なんでしょうか? お姉様が結婚出来ないと言うのは? 何か家庭の事情が?」
普通はマナーとして家庭の事情を聞いたりしない
でも、知りたいのは変わらない
噂話が好きなのは女の子のサガだろうか?
「あー、実は前世が男だったので。恋愛とか結婚とかよく分からないんです」
「ええーーーーー!?」
クラス中が騒然となった
前世とか元男とか
「話して良かったの?」
「別に構わない。隠す様な事でもないし」
「アリサちゃんは聞いてたんですか?」
「婚約した時に教えてくれました」
「少しよろしいですかトレイさん」
メロンが真っ黒なオーラを出して立っていた
いや、オーラなんて見えないけど、そんな雰囲気で
「な、何かな」
「今、聞き捨てならない事を言われましたが、本当ですか?」
「ええ、まあ……」
「着替えやお風呂をご一緒した事があったと思いますが?」
ごごごって音が聞こえそうなオーラが!?
「あー、えーと? あったかなぁ?」
「見ましたね!」
「メロンちゃん!?」
「見ましたね!!」
「あ、あの、メロンちゃん!?」
「見~ま~し~た~ね~!!!」
「ごめんなさい」
土下座しました
土下座あるのかなこの世界
(顔を腫らした女の子が土下座、いじめか)
マルチタスク中の冷静な私が突っ込んでる
私はちょっと涙目だ
全然、締まらない
□□□
校舎裏の人気のない所にドリルに呼び出された
も、もしかして告白かも!?
なんて訳はないので、訝しんで来てみると、まずは謝罪された
「前にも言いましたが、気にしてませんよ。それでご用件は何でしょう?」
「俺は治療士だ。お前の治療をさせてくれ」
ドリルが治療士の修行をしているのはクラスの皆も知っている
ただ、どんな治療をするのかは知らなかった
私はゲームのヒーラーの様な物だと思っている
「ええ構いませんよ」
軽い気持ちで答えた
光のエフェクトが出て気持ち良くなっちゃうのかなあ、と想像した
「そうか。では始める」
ドリルの手に持つドリル型注射器(?)が高速回転を始めた
「ど、ドリルさん? それは武器なのでは?」
「これは武器じゃない。治療器具だ。行くぞ!」
なんですとーーー!?
「ちょ、ちょっと待ってドリルさん!」
ドリルの回転数が上がり、
‘ぎゅいーーーん’から
‘きぃーーーーーん’に変わって行く
そしてそれを私に向け突っ込んで来た
治療を受ける気でいた私は避けるのにワンテンポ遅れドリルの攻撃(?)をもろに受けてしまった
「ぎゃーーーーーーーーーー!!!!!」
□□□
気が付くと学園の医務室だった
顔の痛みと腫れは綺麗に退いている
「大丈夫?」
「アリサ?」
「気絶したのよ。覚えてる?」
気絶?
確か校舎裏に呼び出されて、それから……
「トレイさん!」
あ? 何だ今の?
気が付くと身体が震えていた
「どうしたんだ?」
心配そうなその声にもう一人部屋にいるのに気が付いた
ドリルだ
びくっ!!
奴の顔が見れない
身体が震える
一体どうしたんだろう私の体
ドリルさんの犠牲者第一号w
トレイさんにトラウマが出来てしまいましたw
トレイ「もう、顔も見れない」 orz




