第22話 アリサの初デート
あー、もう、なんかぐだぐだw
koguma009さんリクエストの二人デートをセッティングする話だったのにこんな事に
○月×日
中世でファンタジーなお嬢様の恋愛と言えば手紙のやり取りであろう
アリサは自分の想いを手紙に託したのだった
さて、郵便の発達していない世界で貴族の娘が手紙を届けるには信頼出来る人が直接渡すのが主流だ
大抵は、お付きのメイドさんのお仕事である
今回は妹の私を介して手渡し出来るので、私が郵便屋さんだ
この国では普通、女性からアプローチするのは、はしたないとされているのだが、縁談がことごとく壊れている兄様はもう自分からアプローチする気力がない
まさに残念騎士だ
兄様が結婚するにはお見合いするか女性側からアプローチするしかない
はしたないとか言ってる場合ではないのだ
私は学園で受け取った手紙を兄様に手渡した
この後どうなるかは本人次第だ
わが家では別に隠す事でもないので夕食時に渡してみた
私、ちょっと意地悪だ
家族はみんな大喜びだった
父様は早く跡継ぎを、なんて気の早い事を言っている
そんな事を言っている父様は、姉様が結婚したら号泣するに違いない
でもそうなるには、私が結婚しなきゃならない
無理です姉様
いっそ、この人と結婚しなさいとか言ってくれれば諦めも付くのに
○月×日
兄様からアリサへの手紙を受け取った
返事を書いたらしい
「次からは他の人に届けさせて下さいね、兄様」
私は不機嫌そうに言ってしまった
どうした私
なんか変だ
□□□
朝、私が学園に着くと、アリサがそわそわして待っていた
「アリサちゃん、これ」
私は兄様から渡された手紙をアリサに渡した
兄様はどうするのだろう
「えっ、もしかしてお返事?」
「そう、朝、渡された」
「よ、読んで良い?」
「アリサちゃんへの手紙。貰った人の自由」
アリサは手紙を読み始め、ぼろぼろと涙を流し始めた
「アリサちゃん?」
「トレイちゃんありがとう」
アリサが急に抱き付いて来た
そうか上手く行ったか
私は何故かもやもやするのを感じた
この気持ちは何だろう
□□□
メイド喫茶でアリサは使い物にならなかった
何もない所で転んだり、お茶をこぼしたり、時々顔を緩ませたり
挙動不振だった
今日は使い物にならなかったのでアリサを家に帰した
さて、貴族の結婚にはいくつかのステップがある
勝手に結婚して良い訳ではない
貴族が結婚する場合、国王の許可が要る
あるいは国王から薦めて来る
これは自由恋愛であっても同じ事
国王の許可が必須なのだ
でないと有力貴族が好き勝手しかねないからだ
二人はその前段階の前
まだ付き合ってもいないのだ
この次に来るのは家同士の結婚の確認である
つまり結婚の挨拶
いわゆる‘お嬢さんを僕に下さい’である
わが家の場合は問題ない
アリサの家が反対すれば、いきなり破談もあり得る
本人同士が盛り上がってても、駄目な物は駄目なのである
そしてこれらを乗り越えてやっと結婚出来る訳だ
大抵は幼い内から婚約するので、時期が来たら結婚と言うのが定番である
プロポーズすると言うのは珍しいのだ
アリサはまだ家族には報告してないだろう
そういえばアリサに婚約者がいると言う話は聞かない
本人に内緒で婚約していたら厄介な事になる
○月×日
「ねえ、アリサちゃん。アリサちゃんには婚約者とかいないの? 本人に内緒の許嫁とか?」
私は自由恋愛の障害になり得る話を聞いてみた
それぞれの家庭で事情があるかもしれないし
「えっと、婚約者はいないはず。本人の知らない許嫁は、私に聞いても分からないよね」
「確認した方が良いかも。断れない事情があるかもしれないし。兄様とも相談した方が良い」
「うん、分かった、そうする。ありがとね。あ、でも、そうすると、お付き合いしてるの話さないといけないの?」
アリサは急に赤くなった
いや、まだ手紙の段階でしょ
○月×日
今日はアリサと兄様のデートの日だ
何故か私も連れて行かれる
普通、貴族の令嬢はデートとかしない
普通はパーティとかへ行く
私達がデビューするのは来年だ
大体、婚約が決まっている者同士がパーティで恋を探すってどうなんだろう
浮気を推奨されてるのだろうか?
中世フランスの貴族社会では結婚しないとパーティには出れないのだとか
結婚して初めて恋愛が出来る
でも、浮気は宗教上の理由で禁止
どうなってるの貴族社会
まあ、こっちの世界では、割りとその辺はユルイみたい
さて、何故、私が二人のデートに付き合わされるのかと言うと、カモフラージュのためだったりする
私達兄妹の外出に友達が付き合わされてる様に見せかけている
何でこんな事をするかと言えば、アリサが貴族のお嬢様だからだ
人目に付く所で‘きゃっきゃうふふ’は出来ないのである
じゃあ二人きりで会えば良いのだけどそうするとアリサがテンパってしまうらしい
って、試したの!?
「うん。ちゃんとお話しなきゃと思って。そしたら全然喋れなくなっちゃって……」
はぁ、それにしても焦りすぎじゃいないかな
「アリサ、焦ってない?」
「焦るよ! 来年にはデビューだよ! パートナーがいないと変な人が寄って来ちゃうよ! 好きな人と婚約まで行けたなら最高だよ!」
何時になくアリサは興奮している
自分で好きな人と言って真っ赤になっている
そんなアリサは可愛いけど、またもやもやして来た
「私の事も良いけど、トレイちゃんはどうなの。パートナー、いないんでしょ」
「学友の誰かに頼む」
「ちゃんと考えておかないと、後で後悔するよ?」
うーん、そんなもんか?
女の子は大変だ
「また、人事みたいに考えてるでしょ」
う、さすが親友
私の事はお見通しか
で、こうして今、町中を歩いているわけだ
デートプランは特になし
定番のデートコースなんてない時代なので、適当に回るしかない
食べ物の屋台やアクセサリー屋などをひやかして歩く
カップルでいると逆に店員にひやかされるけどな
二人はひやかされて赤くなってる
何だ、上手くいってるじゃないか
兄様はアクセサリーをプレゼントした様だ
屋台の安物だけどアリサは嬉しそうだ
□□□
家に帰り今日の事を振り返る
今日の私はもの凄く変だった
アリサと兄様が仲良くしている所を見ると気分が悪くなってた
本当は嬉しいはずなのに
そうして判った
判ってしまった
これは嫉妬、やきもちだ
自分は兄様に恋してたんだ
思えば、男の人と言うと兄様を基準に考えてなかったか?
前世の自分ではなく
何かと言うと兄様を頼ってなかったか?
思い出すとずっと昔からそうだった
そんな前から恋してたんだ
実の兄に恋してた
私は泣いた
前世、含めて初めての失恋に泣いた
枕に顔を埋めて大声で
何だ、私、心も女の子になってたよ
トレイ「二人ともお幸せに」
わ~ん (T_T)




