Аивий―オートマティスム

作者：真塚なつき

躯はつくられた機械の精巧な有機的なひとつの構成体であり、生体とは違う。腐濁する肉は白い霧のように頼りなく不気味で恐ろしくぼくらは生体よりも躯を愛する。おぞましい安心。不安。清潔感のある躯。思い通りになる、あるいはならない。調律、作り直すこと、ととのえること。つねに適応せよ。社会への適応。社会とは他者？　他者の集合？　それとも自己の集合？　他者と自己。対立、対決、融合、拒絶。相容れない。区別できない世界内自己。自己と世界の区別。エゴイストとエゴティスト。自己中心、利己、排他。社会への適応。つくり直す躯。よりよい私。真実の私。どこか、いつか、つくり直してくれる。やさしい、甘い、依存、共依存、撫でてくれる、顔を埋める、埋まる、彼女の中に埋まる、溶ける、融ける、一部になる、全部になる、二つが一つ。僕はいない。僕はいらない。やさしくしてくれる。愛してる？　依存。賢い。白痴、可愛い。構ってくれる。やさしくする。親衛隊。やさしくする。やさしい、気づかない。白痴、どうして？　

儀眼。視たくない。視たいものなどない。潰す。眼は潰す。代わりの眼球をやろう。ガラス球遊戯。第三の眼。見ない。マナザシ。目交わひ。マグワイ。眼刺し。

冬の街。ずっと冬。閉じ込められている。夏はない。〈冬の眠るとき〉。涼気的だ。ぼくらは眠っている。冬に眠る。雪の下で、白い埃の下で、進まない、成長しない、動かない、ずっと一緒。一緒にいましょう。変わりたくない。変わりたい？　適応。進化論ではない。

ぼくらの言葉。彼女の言葉。言語の違いは世界認識の違い。彼女の世界と僕らの世界。彼女の世界を憶える。僕らの世界を教える。同化。ぼくらと同じになる。一つになる。全部になる。とけあう。言葉は分ける、まとめる、伝える、伝わらない。それでもぼくらは言葉なしにはわかりあえない。とけあえば、一緒になればわかる？　言葉でわかる？　わかりあえる方法。感覚の伝達。達意、翻訳、かえる、言葉をかえる、ずれる、わかるの近似、接することはない。手を伸ばしても触れない。浮かび流れてただよう飛行状態の言葉たち。翻訳者は裏切者。つくりかえる。適応のため。社会。新しいシステム。社会はシステム、関係性、物的ではなく構造的。彼女は外来語だ。なかなか翻訳されずに使われる。未適応。死語、使われない、用済み、忘れられた者。悲しみ、寂

コンプレックスを感じているのはなぜなのだろう。白痴、可愛い彼女のためにぼくは躯をつくり変える。依存、やさしくつくり直してくれる。彼女はとても上手い。愛してる。快楽。共依存。母性的なもの。偽姉弟。

渇いた雫。拭い去れば消える液だれ。蔦。のびる、しげる、陽を隠す。暗い。視えない。ぼくの眼は見えない。視ない。旧式。伝導率低いよ。良いマナザシは良い儀眼に。美しい彼女の躯、くびれ。芸術品。ほしい。大事にする。壊したい。大事に壊す。ぼくのもの。占有。したい？　されたい？　彼女を占有したい。彼女に占有されたい。イグルーシカ。玩具。人形。ユーリィ。ゲオルギオスの末裔。農夫ゲオルゴス。ゲー、大地。海の向こうから来た娘。オーシャン。土地に根づかぬ農夫。他所者。だから愛される。アイドル。偶像。イドラ。偏見、臆見、イコン、図像、イコノスタシス聖障、イコノクラスト聖像破壊。聖性の冒瀆。犯す。罪。壊す。彼女の躯は聖イコン。彼女になりたい＝神成テオシス。彼女になれない、美の保存、聖性の守護。美しさを守るため壊そう。彼女を壊そう。イコノクラスト。ぼくのため、彼女のため。そうすれば永遠だ。永遠の不変、普遍。破滅。

格納NO.4。おそらく2010～2011の作。