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落語小説

作者: 独身奇族

ばわん。

独身奇族こと独さんです。

本日はいつもの小説とは趣向を変えて、落語でお楽しみいただきます。

ではお時間までごゆっくりとどうぞ。


――♪チャカチャンリンチャンリンデンデン♪――

――♪チャカチャンリンチャンリンデンデン♪――

 ここはナロウ演芸場。太鼓と笛で奏でられた微妙な出囃子に乗って、噺家が舞台の袖から出て参ります。

 高座に敷かれた一枚の座布団に師匠がゆっくりと正座すると、それまでざわめいていた観客がしーんと静まり返ります。

「えー、毎度、馬鹿馬鹿しいお笑いを一席」

 何気ないいつもの口上で、ホールに張り詰めていた空気が、スッと軽くなります。

「さて、ナロウと言えば小説。小説と言えばナロウですが。え? 誰が言ったんだって? 知らないよ、あたしゃ落語家で小説家じゃないから」

 場内に軽い笑いが起きます。

「その小説にはいろんなキャラが出てきますな。剣士に魔法使い。殺し屋に艦長。ありとあらゆる人物が登場しますが、落語の世界にもいろんな人物が出て参ります」

 ナロウ演芸場に詰め掛けた観客の最初の掴みを確認したのか、師匠が本題に入ります。

「今から出てくる話の『熊さん』というキャラも落語では、そりゃー有名な人物でして。気は優しくて力持ち。大工を生業としておりまして小説で言えば主役ですが、どうにもこうにもおっちょこちょいだ」

 まさに立て板に水の名人芸。喋りっぷりと上半身の動きだけで、あっという間にお客の心を掴んでいきます。 

「この熊さん、妙なところで悩んじまう性格が災いして、いつも長屋の大家さんに相談事を持ちかけては迷惑をかける。ラノベで言うところのトラブルメーカー的な役割の代表ですな……」

 そう言いながら座布団の脇に置いた扇子を左手で掴みます。高座の床を扇子の先で三回ずつ叩きながら、同時に右手で家の引き戸を叩く真似をいたします。


――ドンドンドンッ! ドンドンドンッ!――


「ご免なすって。大家さん、ちょっと開けておくれよ」

 ここは、粗忽長屋と呼ばれる棟続きの住宅。今で言うアパート形式建物の端にある一軒の古びた引き戸を、乱暴な手つきで叩く一人の男。

 髭の濃い厳つい顔ですが、どこか妙に憎めない雰囲気を醸し出しております。

「誰だい? こんな朝っぱらから」

 扉の向こうから、眠そうな大家の声がします。ガタンと突っかい棒が外される音が長屋の前の狭い通りにまで響き渡ります。

「おや、どうしたんだい、熊さん? こんな時間に。さては、朝帰りだね? 怒ったかみさんに家から締め出されて、どうせ中に入れて貰えないんだろ?」

 珍しく深刻そうな面持ちの様子に、白髪頭の老人が思わず茶々を入れたりいたします。

「冗談じゃねぇ。こちとら先月ガキが生まれたばかりで、家計は火の車でい」

「おお、そうだったね」

「昨晩だって大工仲間とキャバクラを飲み歩いても、ちゃーんと朝には家で寝てた」

「何だい、熊さん。やっぱり朝帰りじゃないかい」

「いやあ、それ程でも……」

 嬉しそうに大男が頭を掻く様は、名前通り野生の熊そのもの。

「誰も褒めてないよ。とにかくお上がり」

「へい、ちょっくら失礼しやす」

 大柄の体を横にしながら、狭い玄関を通り抜けて土間から座敷に上がり込みます。

「――で、ワシに何か相談事でもあるのかい?」

 気の利く奥方が入れたお茶を美味そうにすすりながら、畳の上で居心地悪そうに胡坐を掻く熊さんに話の水を向けます。

「実はこの前、新築家屋の棟上式で、うちの棟梁とそこの屋主とあっしの三人で話が弾みましてね」

「ああ、最近できたコンビニの向かいの大きなお宅、斉藤さん家かい?」

「そうそう。そこでね、古い映画の話題が出たんでさ」

「ほう、映画かい」

「あっしが昔見た戦争物で、確か潜水艦が出てきた外国映画なんだけど、そのタイトルがどうにもこうにも浮かんで来ねえんでさ」

「なるほど、それで映画通と呼ばれておるワシのところへ来たと言う訳か」

「爆雷を投下したり魚雷を撃ったりする場面は鮮明に思い出せるのに、いかんせん映画の題名だけがさっぱり思い出せなくて。もう夜も寝られねぇ」

「任せておきなさい。ワシは映画をこよなく愛しておる。その昔は、雑誌に寸評まで載せておったほどじゃ」

「おお、さすが大家さん。頼りになる。で? あっしが昔見た映画のタイトルは?」

「ズバリ『Uボート』じゃ。1981年公開のドイツ映画。閉鎖された空間における極限状態の人間心理を見事に描いた傑作じゃ」

「……いや、それじゃないんでさ。Uボートはうちの棟梁も観たらしいけど、あっしの覚えているのと内容が違うんでさ」

「おや、そうかい。じゃあ、1978年の『原子力潜水艦浮上せず』かい? チャールトンヘストン主演のアメリカ映画。お前さんも顔に似合わず若い頃は、渋い映画が好きだったんだね」

「大家さん、そりゃ戦争映画じゃなくてパニック映画だよ。新築現場のドラム缶で焚き火にあたりながら、家主の斉藤さんも同じこと言ってたし」

「ああ、確かにそうじゃ。うーん困ったのう。実を言うと、ワシは戦争物をほとんど観てなくてな。本物の太平洋戦争を体験しておるから、所詮作り物には感動できないんじゃ」

 寂しそうな大家の表情に熊さんが肩を落とします。

「はぁ。そうっすか。あの題名が思い出せないと、あっしゃ今夜も寝られないから今宵も仲間と飲み歩くしかない……」

「おいおい、待ちなさいって。何だかワシのせいでお前を朝帰りさせるみたいじゃないか。勘弁しておくれよ、お前んとこのかみさんにどやされるのはご免だよ」

「いえ、もういいや。うちの棟梁に言われたとおり、あっしも歳取ったせいか目だけじゃなくて記憶まで悪くなっても仕方がないさね」

「何だい、熊さん。お前さん目も悪いのかい? どうりでさっきから、しかめっ面しているはずだよ」

「それがこの間までは、裸眼で1.5はあったのに、携帯電話をスマホに換えてからどんどん視力が落ちちゃって」

「いろんなアプリとかダウンロードして、ゲームばっかりしてるんじゃないのかい?」

「へぇー。大家さんもスマホかい? いやあ、キャバ嬢にアレは受けがいいから。まったくいい歳こいて、大家さんも隅に置けないね、このこの!」

 畳の上をにじり寄り、肘で大家の脇をツンツンし始める始末。

「馬鹿だねー。ワシはずっとこのシルバーフォンだよ」

 そう言って懐から小型端末を取り出して見せます。

「うわっ。文字、でかっ! 特大ボタン三つしかないし」

「短縮番号。家と嫁と病院じゃ。メールも不要だしな」

「ごもっとも」

「ところで、記憶が衰えるのはともかく、目医者には早い内に行った方が良いぞ。放っておいて取り返しのつかない事になっては大変じゃ」

「そう言えば最近、急に目がショボショボし始めて。仕事中でも釘の頭の代わりに、同僚の頭をぶっ叩きそうになった」

「おいおい」

「それじゃあ危ねぇだろうって、隣町に出来た目医者を棟梁に紹介してもらったんでさ」

「ほう、それでどうだった?」

「受付嬢が可愛いかった」

「こらこら、誰がそんなことを聞いておる? お前さんの目の具合はどうだったか聞いておるんじゃ」

「あ、そっちか。何せ、あっしは初めて目医者に行った訳で……」


――今日は、どうされました♪――


「なーんて制服姿の女の子が、ニッコリ声をかけてくれるもんだから舞い上がっちゃって。思わずボトル入れようと、財布の中身を確認したよ」

「しょうがない奴だね、お前さんは」

「でも、大家さん。どうせ行くなら、やっぱり明るくて清潔感のある店に限るね」

「だからキャバクラじゃないよ」

「夜の制服もいいけど、やっぱり昼間の本職には適わない」

 大家の言葉にまったく耳を傾けず、うーむと唸りながら、熊さんが顎鬚に手を伸ばします。

「何を悟ったような顔しているんだい。で、肝心の視力はどうなったんだい?」

「おっといけねぇ。でね、用紙に名前や住所や自覚症状やらを書き込んで、保険証と一緒に彼女に差し出して待つこと十分。そのキュートな受付嬢がこう言ったんでさ」


――お待たせしました~♪。あちらで、視力の検査をしますねっ♪――


「でね。彼女の指し示す方向に、いかにも『視力検査します』といった機械が鎮座していた訳で。しかもその隣には、妙にガタイの良い男性眼科助手が、待ってましたとばかりにモミ手で待機中だったんでさ」

 がっくりとうな垂れて肩を落とす熊さん。

「ちょっと、大家さん。信じられるかい? この悪逆非道な仕打ち! 普通この展開なら、受付に咲いた可憐な一輪の花が、あっしの目を優しく検査をしてくれると思うだろ?」

「そ、そうだね」

 眼前で唾を飛ばしながら迫る熊さんに、身の危険を感じた大家が後ずさります。

「それもよりによって、あんな屈強な体付きの眼科助手に、この熊さんのつぶらな瞳が蹂躙されるとは!」

「お、落ち着きなさいって」

「あー、マッチョな男の芋虫のように太い指が、あっしの眼に迫ってくる。一メートル……、五十センチ……。あぁ、あと三センチ! ウギャー」

「熊さん、うるさいよ。まだ朝早いんだから、隣近所に迷惑だろ。まあ、病院だからって、か細い助手ばっかりじゃないだろ」

「いや。その人、いかにも体育会系の肉体付きだけど、結構気配りがあってね。慣れた手つきだったから、さほど苦にはならなかった」

 あっけらかんとした表情で熊さんが口を開きます。

「何だい、終いには怒るよ、まったく。で、検査は何て言われたんだい?」

「へ?」

「へ? じゃないよ」

「ほ?」

「ほ? じゃなくて。ええい、言葉遊びなんかするんじゃないよ、ホント」

「あ、そのマッチョな眼科助手さんは、視力とかメガネのレンズの度数を測ってくれただけし」

「なるほど。別にちゃんと医師が居たってことかい」

「そう言う事。そして待つこと十分。あのプリティな受付嬢が、今度はこう言ったんでさ」


――お待たせしました~♪ あちらで、「先生」の診察を受けて下さいねっ♪――


「大家さん。コレってまさに青天の霹靂だろ?」

「は?」

「は? じゃなくて」

「ひ?」

「ひ? って、どう言うリアクション取ればいいんだよ?」

「いや、済まん済まん。受付嬢の言ったさっきの台詞のどこが青天の霹靂なのか、ワシにはさっぱり判らなくてな」

「だぁーっ。普通の小説だったら、あのチャーミングな受付嬢がまさかのどんでん返しな展開で、実は医師本人だったと言う設定だろ?」

 熊さんが、わなわなと震える拳を大家に突きつけます。

「そうでないと、最近の若い読者は納得しないはずだろ? それなのに、嗚呼、それなのに……」

 逃げ腰になった大家の肩を捕まえて、涙ながらにグイグイと老人を揺さぶり始めます。

「ううっ。ワシとしては、お前さんの衰えた記憶中枢と、そのはた迷惑な妄想との間における因果関係を研究して、学会に論文を発表したいくらいじゃ」

 酷い言われようの熊さんが、大家の言葉に耳を貸さずにしゃべり続けます。

「仕方がなく、あっしは歩を進めやしたよ。受付の奥にある真っ白なカーテンで仕切られた診察室まで。で、中にいた先生がこう言ったんだよ」


――今日は、どうされました♪――


「あっしの受付嬢とおんなじ台詞なのに、どうして人によってこうも聞こえ方が違うんだろう?」

「いや、熊さんの受付嬢じゃないし。大体しょうがないよ。その娘の鈴を転がすような声と、目医者のオッサンの声を比べちゃ可哀相だ」

「だから違うって。その先生が中年男なのは、別にいいんだよ。もう受付で、スッパリ諦めたから」

「じゃあ、何が気に食わなかったんだい?」

「医師の白衣から伸びる二の腕が、尋常じゃないほど太かったんだよ。おまけにその胸板は、さっきの眼科助手の二倍はあろうかと言うほど部厚くてさ」

「うっ。またマッチョに遭遇したのかい。お前さんも気の毒に」

「最近の眼科医国家試験って、資格審査項目の中で『兄貴』ってのが必須になった話は本当らしいよ」

「そんな訳ないだろ」

 馬鹿馬鹿しい熊さんの呟きに、大家が目を伏せてゆっくりと首を振ります。

「でね。その筋骨隆々の先生が、生暖かーいソフトな声でこう言うんだよ」


――上を見てくださ~い♪ ハイ次は右、今度は足元で~す♪――


「うっ。それは、ワシでもちょっと引くな」

「だろ? しかも、しかもだよ……。うぷぷぷ」

 何を思い出したのか? 熊さんが必死に笑いを堪えます。

「どうした?」

「ゴツイ手であっしの頭を押さえつけておいて、懐中電灯を近づけながら目の奥を覗き込むんだよ」

「別に、どこが可笑しいんだい? 普通の眼科医だったら、どんな先生でもそうやって診察するだろ?」

「いや、それが。うぷぷ、そのライトが普通の懐中電灯なんだけど……うぷぷ」

 いい年した大工が眼を細めて口元を押えています。

「何だい、熊さん。笑ってないで、ワシにも判るようにちゃんと説明しておくれよ」

「はぁ、はぁ。その先生の手がね。あんまりデカイもんだから、どうしても懐中電灯がね、うぷぷ。ちっちゃなペンライトにしか見えなくてさ。ぎゃははは」

 膝を叩いて爆笑する大工に釣られて、大家の口からも笑みがこぼれます。

「ぷっ。失礼な奴だね、ホントお前さんは」

「だって、大家さん。こんな状態で、その先生ったらさ……」


――この『懐中電灯』を目で追ってくださいね♪――


「ああ、苦しい。どう見たって、そりゃペンライトだ。いやペンシルライトだねアレは、ぐひひひ。もうね、『さぁ、殺せ』みたいな場面で、その先生ったら更に追い討ちで……」


――『懐中電灯』を左右に揺らしますから、もうちょっと頑張って下さいね♪」


「わははは。頑張ってるって。笑いを堪える為に口の周りの筋肉を総動員してるって。やめてー。頼むからその自称『懐中電灯』をあっしの眼の前で左右にチマチマ振るなって。ぎゃははは」

「もういいかげんにおし。結局お前さんの目の奥で、異常は見つかったのかい?」

 笑いの壷にドップリ嵌り、腹を抱えて転げ回る大工をどやしつけ、大家がなんとか話を元に戻します。

「あ、検査の結果、視力は1.0でして」

「何だい、よく視えるじゃないか。じゃあ白内障とか飛蚊症とか、そんな眼の症状はなかったのかい?」

「お蔭様で、両目とも極めて良好だと診断してもらいやした」

「そりゃ良かったじゃないか」

「どうやら、普段の夜更かしが原因の疲れ眼ってことで一件落着」

「それを言うなら夜遊びだよ、まったく。人騒がせにも程があるよ。眼科の先生も呆れていただろ?」

「いや、そこは流石にお医者様だね。金の儲け処をちゃんと心得てる」


――熊さん、どうなさいます? 念のために眼鏡の処方箋をお出ししましょうか?――


「……と、こう来たもんだ」

「最近は診療報酬の点数が厳しくなったからね。病院も潰れるこのご時勢。医は仁術なんて、今は昔かもしれないね」

 正座を崩さず、神妙な顔をした大家が腕組みをします。

「だろ? ちゃんと視えるんだよ。視力だって悪くない。なのに眼鏡ってどうよ。ぼったくりの診療なんかに大事な金が払えるかって、あっしゃその先生に啖呵切ってやりましたよ」

「おいおい、短気は損気だよ。お医者様相手に喧嘩したって始まらないだろう」

「そりゃ判ってるけど、マッチョ医師の顔見てたら、ついカッとなって」

「そもそも、一時的にせよ眼が悪くなったのはお前さんのキャバクラ通いが原因じゃないか? 先生に罪はないだろ」

「そりゃそうだけど」

「その先生も偉い患者に当たって災難だね。お前さんまさか、診察料払わずに帰ったんじゃないだろうね」

「そうしたかったのは山々だけどね、病院をそのまま飛び出しそうになったところへ……」


――熊さーん♪ お待たせいたしました♪ 千二百五十円でーす♪――


「受付の女神が呼び止めるもんだから、つい払っちまった」

「おいおい、ついって」

「ついでに、その娘の手を握って、『釣りは取っときな』と二千円置いてきた」

「馬鹿だねー。まだキャバクラと勘違いしてるよ」

「そんな訳だから、もうあの店には二度と行けねえや」

「店じゃなくて病院だよ。それにしても熊さん。お医者様とは仲良くしなきゃ駄目だよ。いざって時に頼りになるのはやっぱり医者と坊主だからね」

「どっちも金勘定にうるさそうで、付き合いきれねえよ」

「ワシだってそうさ。ただこの年になると、掛かりつけの医者がいれば安心できるものだよ」

「そんなもんかね」

「特に目は大事だからね。お前さん、もし今日からずっと、目をつぶって生活してみろって言われたらどうするね?」

「た、確かにそうだ。目が見えなくちゃ仕事にならねぇからな」

「だろ? やっぱりお医者様とは仲良くしていかなきゃ駄目だよ。特に眼医者とはね」

「ちげぇねぇ。さすが大家さんだ、良い事言うぜ。あっしみたいな庶民は、眼科を敵に回しちゃいけねぇや」


「おぉ! それだ!」

 何か閃いた表情で大家がポンと手を叩きます。


「何だよ、藪から棒に大声出して。あっしの心臓が口から飛び出しそうになるじゃないか」

「お前さんが、こんなに朝早くからワシを訪ねた理由はなんじゃった?」

「へ? えーっと。あ、そうそう。古い映画のタイトルが思い出せないから夜も眠れなくて……」

「眠れないのはキャバクラ通いのせいだろ」

「違えねぇ」

「そうじゃなくて、知りたがっていた戦争映画の題名だよ。たった今、お前さんが自分の口で言ったじゃないか」

「え、ホントかい?」

「ああ。熊さんみたいに眼科の先生の言うことを聞かず、診察代を安く済ませてお医者様を敵に回すような奴とおんなじタイトルじゃよ」

「何だよそれ? そんな題名あっしが今、口にしたって言うのかい? なあ、もったいぶらずに早く教えておくれよ」

「まだ分からないのかい? しょうがないね……」

 自信たっぷりに大家が胸を張ります。


眼下がんかの敵」


 お後がよろしいようで……。


――♪チャカチャンリンチャンリンデンデン♪――

※「眼下の敵」

 1957年米・西独映画。米海軍が撮影に全面協力。砲撃、爆雷投下シーンは当時評判になった。潜水艦VS駆逐艦の戦いにおける両艦長の息詰まる心理戦と卓越した戦術戦の駆け引きなど見所満載。

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