なーろっぱ世界の短編 婚約破棄とか聖女とかドアマットとか転生とか
裸の王様と3人の女
バーで腐れ縁の友人と飲んだ。
「いいのか。お前、奥方怒らないのか?」
「ああ、あいつはよくしつけてあるからな」
「お前さ。確か、のっけから愛さないとか言ったんだっけ?」
「ああ、最初にビシッと言ってやらないとな。お前も結婚したらそうしろよ」
「……まぁ、機会があったらな。だが、奥方優秀なんだろ、お前と離れたって生きてけるだろ」
「あいつオレとは別れられない」
「ほう大した自信だな。だが白い結婚なら。確かそろそろ3年目だろ?」
「今夜だ。いままさに3年目だ」
「家に帰ったら奥方いなくなってる、なんてことになってないといいな」
「くっく、やったあとで言ったからな。白ならぬ赤い結婚さ」
「うわ」
「つまんない女だが、いろいろと仕込んでやったからな、ベッドの中でも悪くないぞ」
「……つくづく最低だなお前」
「しかもあいつのメシには、子供ができない薬もいれてる」
「それじゃあ奥方、お前の母親に責め立てられるだろう」
「ふ。子供ができないのだからな。だが、オレはそれを理由に別れる気はない。オレはあいつを庇ってやってる。子は授かりものだからとな」
「……お前、悪人だな」
「いいんだよ悪人で。オレは好きでもないが有能な女と結婚し、それを道具に家を建て直した。しかもあいつに功績は渡さずでかい顔もさせない。しっかりわからせてやってる」
「わからせてやってる、か」
「これが人をつかうという事さ。せいぜい参考にしてみたまえ」
「で、あの女とも切れてないわけだ」
「ああ、あいつは自分に子供ができれば、オレの妻になれると思っているが……アレにも子供ができない薬を、こっそりと飲ましてやってる」
「ふぅん。お前って本当に悪人だな」
「要領がいいと言ってくれよ」
「では、お前のうまくやってる人生に乾杯だ」
「乾杯」
しばらくたってから。あいつが死んだと聞いた。
ベッドの中で冷たくなっていたのだという。真夜中、心臓が止まったのだと。
ふたりの女を手玉にとっていたくせに、死んだときは、ひとりだったんだと。
葬式に出たら、喪服を着た3人の女がいた。
あいつの母親と、奥方と、愛人だった。
泣いていた。
だが、オレは見た。
棺桶の中に横たわったあいつの顔を見た時、3人ともチラと嗤ったのを。
まぁそらそうだわな。
奥方も愛人も、3年もやりまくって子供ができない。
ふたりのうち誰かが調べる。
いや母親だって、子供ができなければ調べる可能性はある。
クスリがでてくる。
真相がばれる。
女3人が手を組む。
ヤッたあと無防備な裸でベッドに寝ている男なんて、どうにでもなる。
まぁ想像だけどな。
その夜。
オレはあいつと飲んでいたバーで、ふたりぶんの酒を頼んで盃をあげた。
「お前の、うまくやれなかった人生に」
たくさんの作品の中から、本作をお読みいただきありがとうございました。
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別の物語も書いておりますので、もしよろしければ、そちらも覗いてみてください。




