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戦国時代

 時は乱世戦国時代──忍びの里、赤い蝋燭(ロウソク)の炎が揺らぐ洞窟の中で、ある忍法儀式が行われていた。

 石の台の上に白い湯浴衣(ゆあみぎ)を身につけた姿で、仰向けで横たわった十七歳前後の女忍者を遠巻きに囲むように並び立つ、忍び装束の男たち。


 沐浴を済ませた肌に、忍びの秘薬を混ぜた墨で書かれた忍びの凡字らしき文字が湯浴衣を通して見える。


 女忍者の傍らには枯れた手をした、白髪の老忍者がいた。

 老忍者が口元を固く結んだ、女忍者に訊ねた。

「本当に良いのだな………臆して考え直すのならば、今のうちじゃ………一度、施法がはじまればもう止めることはできんぞ………(なぎ)

 凪と呼ばれた女忍者は、うなづく。

「すでに覚悟はできています……『外道輪廻』の秘法で外道の道に落ちる覚悟は」

「そうか」

 凪の唯一の家族である姉と妹は、忍びの里の近くを通りかかった。

 一人の侍大将の暴挙によって自害した。


 たまたま隣村に用事で出かけていて難を逃れた凪が姉と妹が亡くなった時の状況を知る、村の者から聞いた話しによると。

 本隊からはぐれ、道に迷った侍大将は忍びの村の近くを通り、村外れにあった凪の家を目にして喉の渇きを癒すために、家にいた凪の姉と妹に水を求め。

 心優しい姉と妹は、侍大将に水と食べ物を差し出した。


 喉の渇きと腹を満たした侍大将は、美貌の姉と妹に欲情して豹変して襲いかかった。

 忍びの技で抵抗すれば、侍大将を退け殺害することもできる………だが忍びの里であることの発覚を恐れた凪の姉と妹は、侍大将の前で舌を噛み切って自害した。


 老忍者は着物の懐中から一匹の黒い毒蛇を取り出すと凪の上で、蛇の首と尾に近い方を持って、怪しげな忍びの呪文を唱えはじめた。

 

 老忍者が唱える呪文が、凪を囲む忍者たちの口からも復唱される。


 忍者たちの呪文が最高潮に達した時、老忍者が奇声を発して叫んだ。

「きぇぇぇっ! ここに忍法『外道輪廻』至る!」

 老忍者は毒蛇を、引きちぎり蛇の毒血が凪の体に降り注ぐ。

 白い湯浴衣に飛沫する赤い毒の染み。

 凪の断末魔の声が、洞窟内に響き渡る。

「があぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 石の台から転げ落ちて地面で、のたうち回る凪に老忍者が言った。

「憎め! 死に変わり、生まれ変わり………未来永劫、己が抱く恨みを晴らし続けろ!」


 毒血で焼けるような湯浴衣が、肌に貼りつく地獄の苦痛の中で、凪は侍大将へ強い憎悪を抱き心に刻みつける。

(憎い! 憎い! 輪廻転生して、この恨みを晴らし続ける! 憎い!)

 悪鬼の形相で凪が絶命すると、洞窟に吹き込んだ風が蝋燭の炎を吹き消して、洞窟は闇に包まれた。

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