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七つの魔眼と王殺しの少年  作者: 盛盛鹿尾菜
一章 侵略と決意

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032 別れの木々


ノクティアの襲撃から数日後、エルフの国リーファリアは深い傷を負っていた。

木造の家々は崩れ落ち、枝で組まれた橋は折れ、聳え立つ木の城壁にはサリアの元素爆発によって巨大な穴がいくつも穿たれていた。

世界樹の光は変わらず降り注いでいる。だが、その光の下に広がっているのは、瓦礫と焦げた木々の残骸だった。


俺は、フィオランとエルフィナ、そしてシルフの無事を確認し、心底安堵した。

特にフィオランは、戦いの最中、矢を放ちながらエルフィナとシルフのいる場所へ敵が近づかないよう援護していたらしい。

本人からは何も語られなかったが、俺はそれを知っていた。

……だが、敢えて触れなかった。あの男は、そういうことを言われるのを嫌う性格だと思ったからだ。


その後、俺は何日かこの国に滞在した。

復興の手伝いをしたいと思った。

エルフの国を、守りたいと思った。


瓦礫の運搬を手伝い、壊れた橋を修復し、崩れた家を片付ける。

だが、俺が最も役に立ったのは、破られた城壁から侵入してくるイデアの化身を斬ることだった。

穴から這い出してくる〈貪欲〉の群れ。

巨岩のような〈不動〉の化身。

俺の赤いオーラが、それらを次々と両断していった。


日が経つにつれ、エルフたちとも打ち解けていった。

子供たちは俺を「おにいさん」と呼んで慕い、大人たちは感謝の言葉を向けてくれた。


フィオランとも、最初はどこかぎこちなかったが、徐々に距離が縮まった。

やがて、二人で修行をするようになった。

木の橋の上で剣を交え、弓と剣の連携を試す。

フィオランの矢が俺の動きを制限し、俺の斬撃が彼の矢の隙を埋める。


そんな時間が、どこかティオルとの稽古を思い出させた。

懐かしくて、少し切ない。


かなり長い月日が流れた。

世界樹の光が、季節の移り変わりを教えてくれる。

花が咲き、実が熟し、葉が落ちる。

俺は、もうこの国に馴染みすぎていた。


――そして、別れの時が来た。


ある朝、俺はフィオラン、エルフィナ、シルフ、そして集まった多くのエルフたちに囲まれていた。

皆が口々に、俺に残ってほしいと言った。

「もう少し、ここにいてほしい」

「人間の力が必要だ」

「家族のように思っている」


胸が締めつけられる思いだった。

この国で過ごした日々は、温かく、優しく、俺の心を癒してくれた。

だが――


「俺には、やらねばならぬことがある」


俺は、静かに言った。


「友達との約束があるんだ。

そして、ノクティアを止めること。

世界の殺し合いの連鎖を断ち切ること。

だから……もう行かなきゃならない」


エルフィナの目が潤む。

シルフは泣きながら、俺の袖を掴んだ。

フィオランは、ただ黙って俺を見つめていた。


「……わかった」


フィオランが、低く言った。


「貴様の道は、貴様が決める。

だが、いつかまた戻ってこい。

この国は、貴様の家でもある」


俺は、静かに頷いた。


「ありがとう、フィオラン。

エルフィナ、シルフ。

……みんな」


世界樹の光が、俺たちを優しく包み込む。

俺は剣を背負い、城壁に穿たれた穴から外へ向かった。


振り返ると、エルフたちが手を振っている。

シルフの泣き声が、風に乗って届いた。


俺は、笑顔で手を挙げた。


胸のざわめきは、まだ消えていない。

サリアの最後の言葉――

「アニ……ス?」


だが、今は前を向く。

ティオルが待つ王都へ。

そして、世界の果てへ。


俺は走り出した。

赤いオーラが、朝日の中で輝く。


旅は、続く。


――エルフの国を後にして。


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