第三十六章 歴史の皮肉
愚王は孤立し、声を失った。
広間には伯爵令嬢を讃える人々の声が満ちていた。
「この方こそ女王にふさわしい!」
「国を導く徳の人だ!」
即位した女王の徳が国を導き、繁栄は揺るぎないものとなった。
だがその光の外で、クラリッサは静かに影響力を失い、ただ傍らで見守る存在となっていた。
そして――元王が再び暴走の兆しを見せた時、クラリッサは迷わなかった。
「余の因果は、余が抱えて消す」
誰も知らぬ小さな館で、二人は炎に呑まれた。
人々の記憶から、クラリッサと元王は同時に消えた。
王都では混乱は起こらなかった。
女王が毅然と立ち、民を安んじさせたからだ。
「クラリッサ様は最後まで国を守られた。その遺志を胸に刻もう」
人々は涙を流し、やがて語り継いだ。
――奸臣にして母、国を救いし影、と。
クラリッサは知らない。
自ら消え去った後、女王とその子が国を治め、次代は徳による治世が続いたことを。
奇しくもそれは、かつての帝国が滅んだ後に、徳によって天下を安んじた皇帝が現れて、新たな帝国の治世が続いた歴史と重なっていた。
奸臣として再び生を得た彼女の最後は、歴史の皮肉の中に収まったのである。
風にかすかに残る声。
「あはは……余が導こうと導くまいと、結局この世を治めるのは“徳”か……」
それは敗北の嗤いか、安堵の嗤いか。
誰も知ることはなかった。
ただ一つ確かなのは――
次代の王は徳を以て治め、国は長く繁栄へと進んでいったということであった。
この大宦官さんのモデルは、鹿と馬の逸話でご存じの方も多いと思いますが、古代中国のあの方です。
よくある婚約破棄シュチュエーションですが、数あるドアマットヒロインの中でもスーパーイージーモードだったのではないかと思います(笑)
また、徳で帝国を治めたと書いたものの、実際のモデルとなった帝国は猜疑心だらけで内紛が絶えない治世だったとか、その辺は見なかったことにしてください(笑)
転生した大宦官さんは前世でひどいことをしまくっていたので、人の心を取り戻したときに絶望に沈むという罰があったような気がしないでもないです。
これにて完結です!
ご覧いただき、ありがとうございました!!




