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婚約破棄から始まる国家簒奪  作者: はるかに及ばない


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第十九章 石ころの宝石


ある日、王城の庭で。

一人さまよっていた王レオナルド四世の足元に、灰色の小石が転がっていた。


彼は震える指でそれを拾い上げる。

「ただの石ころ……だ。」


その瞬間、背後に控えた廷臣の一人が低く頭を下げて告げた。

「お見事な宝石にございます、陛下」


王は目を見開いた。

「……な、何を言う……ただの石ではないか……!」


「いえ、陛下。国が買い上げるに値する至宝でございます」

「まさに王国の栄光を映す宝石……」

「この光、この重み、これほどの宝は他にございません」


次々に廷臣たちが声を重ねる。

誰もが真顔で、堂々と石ころを宝石と呼んだ。


王は額に汗を浮かべ、石を凝視した。

「……馬鹿な……これは石だ……石ころだ……!」


だが廷臣たちは一斉に膝を折り、声を揃える。

「宝石にございます」


王の震えは止まらなかった。

「なぜだ……! なぜ誰も真実を言わぬ……!?」


その場にいたクラリッサが、静かに進み出て囁いた。

「陛下、真実とは――王が定めるものにございます」


「……真実……余が……?」


「そう。陛下が“宝石”と仰せなら、それは宝石。

 ですが陛下が“石”と叫べば、国が揺らぎます。

 どうか、国を安んじるためにも……」




その夜、王は寝所で石を握りしめ、嗚咽していた。

「石が宝石……鹿が馬……声は届かぬ……何も余のものではない……」


そして、酒に酔い、涙に濡れ、ついに絶望の中で叫んだ。


「――ならば! 余は後継を定める!

 余ではなく、新しき者が王国を導くべきなのだ!」


その声は玉座の間に響き渡り、廷臣たちは深々と頭を垂れた。

彼らの瞳に映っていたのは、もはや王ではない。

王国の“真の支配者”は、すでに別にいたからだ。





暗闇の中、クラリッサは赤い唇に笑みを刻んだ。


「あはは……愚王よ。お前の口からその言葉を吐かせるために、鹿を馬とし、石を宝石とさせた。

 これで玉座は完全に空虚となり、後継は我が掌にあるわ。


 次に王冠を戴くのは――余の血統よ!」


燭火が揺れ、王国の未来を覆う影が壁に広がっていった。

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