表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄から始まる国家簒奪  作者: はるかに及ばない


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/36

第十四章 指鹿為馬

愚王の策


「クラリッサは危険だ……!」

夜の玉座の間で、レオナルド四世は震える声をあげていた。


「奴は廷臣を操り、民を欺き、余を愚弄する……!

 近衛を動かせ、あの女を捕らえよ!」


だが、その命は兵に届かぬ。

近衛の指揮官たちは、すでにクラリッサの書状と印章に忠誠を誓っていたからだ。


「……陛下、ご命令は然るべき経路を経て実行いたします」

そう言い残し、近衛の隊長は深々と一礼し、静かにクラリッサの執務室へ赴き、すべてを報告した。


(ふふ……やはり来たわね。焦り、刃を向けてきたわ)

クラリッサは赤い唇に笑みを刻む。


完全なる孤立


翌日、王は玉座の間に召集した廷臣たちの前で怒鳴り散らした。


「クラリッサは謀反を企てている! 捕らえよ!」


だが廷臣たちは一斉に沈黙した。

目を伏せ、誰一人として王に応じようとしない。


その中でクラリッサが進み出た。

「陛下、私が謀反を企てていると仰るなら、その証をお示しくださいませ」


証拠などあるはずもなく、王は言葉を詰まらせた。

沈黙が広がり、廷臣たちの視線は冷ややかに王を見下ろした。


その瞬間、レオナルド四世は完全に孤立した。


鹿と馬


数日後。

王城の大広間に、すべての貴族と廷臣が集められた。

クラリッサが自ら呼び出したのだ。


やがて従者たちが、一頭の鹿を引いて入ってくる。

白斑の美しい、堂々たる角を持つ鹿。


クラリッサは微笑み、その鹿を指さした。


「――皆様、ご覧あれ。これは見事な馬でございます」


一瞬、広間にざわめきが走る。

鹿を馬と呼ぶ、その狂気めいた宣言に、廷臣たちは互いに顔を見合わせた。


しかし、やがて誰からともなく声が上がる。


「……その通り、実に立派な馬にございます」

「ええ、まごうことなき名馬ですな」

「クラリッサ様の慧眼には恐れ入りました!」


次々に声が重なり、やがて広間を埋め尽くした。


ただ一人、玉座に座る王レオナルド四世だけが、蒼白になって震えていた。

「こ、これは……鹿ではないか……! なぜ皆、馬だと言うのだ……!」


だが誰も答えない。

王の声は虚空に消え、広間を支配するのはクラリッサの笑みだけだった。


影の帝の凱歌


「あはは……これぞ“忠誠の試験”。

 貴族も廷臣も、己の理ではなく私の言葉に従うわ。

 真実すら私の一声でねじ曲がるのよ!」


クラリッサの赤い唇が嗤う。

鹿は馬と呼ばれ、真実は虚構へと書き換えられた。

その瞬間、王国のすべてが元宦官の掌中に落ちたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ