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悶絶! 発狂! 女ヤクザ初目村スライムの受難!?〜勇者様の聖剣…こんなに硬くなっちゃうの!?〜

 私、初目初目村(はじめむら)村スライムは混乱していた。こんな風に言うと勘違いされがちだが私は本来混乱には強いのだ。

 この前もお父さんが目の前でギルドから来た戦士野郎に滅多刺しにされて殺された時も、私は冷静さを保ったまま息を潜め続けた。普通こんな時って混乱して恐慌状態になりその場から逃げ出してしまうものだけれど、私は冷静でい続けた。

 関係ない事なのだけれど私にはお父さんとパパがいる(1人はもう死んじゃったけど)。ママは一人だけれど、「どっちの種だかわからないから〜」という理由で結局2人と暮らすことにしたらしい。ママは頭がおかしいと思うし、パパもお父さんもいかれてると私は思う。人生どちらかを選ばなくてはいけない時ってきっとあるのだ。そんな宙ぶらりんで不安定な土台の上には何かを築いていくことなんて出来はしない。

 話を戻すついでに私が混乱するに至った理由について改めて説明が必要だと思う。端的にいうと私はカジノにいた。娯楽なんて何もない田舎村で生まれ育った私にとって、お使いで立ち寄った都会の風は刺激が強過ぎた。

 ママから頼まれた薬草を買って残りのお金で何かお土産でも買って帰ろうとしていたのだが、どうせなら倍以上に増やして帰るのが一番のお土産じゃん? と私は有り金全部を賭博闘技場に突っ込んだのだ。

 賭博闘技場は罵倒と熱気に包まれており、見た事もない数の人、人、人の中で私はたちまち虜になった。私の全財産を背負った剣闘士に私も周囲の人と共に熱いエールを送る。

「殺せ! 殺せー! そこだ! 目をつぶせ! 何やってんだハゲ! 金玉蹴り上げろ!!」

 心が解放されるような不思議な気持ちだった。ママはセックス以上の娯楽なんてないわ、とよく私に言っていたがそんなわけあるか。基本的にママは田舎育ちによくいがちなバカ女なのだ。そうやってパパとお父さんといい加減に関係を持ち私を孕ってもまだそれに気が付かない。私は知っているのだ。今だって近所の肉屋のおじさん、たまにやってくる旅の聖水売りのお兄さん、2軒隣に住んでるおじいちゃんともヤリまくってる。村一番のヤリマン女と陰口を叩かれている。ギルドの討伐対象になる日も近いんじゃないのかと思う。

 わっ、と一際大きな歓声。決着がついたのだ。闘技場の真ん中では首を長剣で貫かれた全身鎧の剣士が崩れ落ちるところだった。私の全財産を背負った剣士が負けたのだ。

「クソッタレの腐れ金玉! 死んじまえ!」

 あ、もう死んでた。でも私の気は収まらない。係員が死体を片付け始めてもまだ、声の限りに罵り続けた。

「姉ちゃん興奮してるねえ。あの野郎に突っ込んでたのかい?」

 私に声をかけてきたのは小汚い身なりの中年男だった。伸ばした口髭と人を値踏みするような視線。一見盗賊風に見える陰険そうな痩せた男だった。

「…そうよ。あの見掛け倒し野郎のせいでもう帰りの馬車代もないわ」

「そういう事ならさ、ちょっといい仕事があんだよね、いひひっ。おじさん先のアイツに突っ込んでてよ。ホレ」

 そういうと懐からパンパンに膨らんだ巾着袋を出して私に見せた。少し開いたところから大量の金貨が顔を覗かせている。

「ちょうど懐も暖かいところでおじさんコッチも暖かくなりたいんだよ。姉ちゃん可愛いし、オッパイもーー」

 そこまでだった。

 目の前にいた男の首から上が、唐突に消えたのだ。

 いやいや消えたわけじゃない。中年男の後ろにいた何者かが横なぎに振るった棍棒が、男の頭を吹き飛ばしたのだ。ワンテンポ遅れて頭のあった位置から噴水のように血が吹き出し、首を失った体がその場に崩れ落ちた。

「大丈夫でしたか?」

 ゲス野郎の首を吹き飛ばした何者かが私に声をかけた。

 初めに綺麗な声だな、と思った。高くはないのだが低すぎる、男っぽい声とは違う。中性的な印象だった。

 フードを目深に被っているが、多分男性なのだろう。長身でただでさえ背の低い私より、頭二つ分は大きかった。

 右手に持った木製の重たそうな棍棒にはゲス野郎の脳漿やら血がこびりついて汚れていた。

「ごめんなさい、驚かせてしまったかな」

「え…ええと、いえいえ! 助かりました! 変なこと言われて絡まれてて…怖かったぁ…!」

 私は咄嗟にいつもよりいくらか高い声を出している自分に母親の血を強く感じた。イケメンの気配に敏く、弱いのだ。私は言い終わると同時に男に抱きついた。見た目よりもがっしりとした体つきも好みだ。

「いたぞ!! あそこだ! この野郎逃さねえぞ」

 唐突な怒声が私の背後から聞こえる。何だいいところなのに…振り返ると数人の屈強な男たちが斧やら剣を手にこちらに向かってくる。

「まずい、もう来たのか。お嬢さん、僕はもういかないと。僕の胸板をムニムニするこの素敵な膨らみと感触は絶対忘れないからね、チュッ」

 唇に軽い感触。え? 流れるようにキスされた? っていうかなんか気持ち悪いこと言ってなかったか?

 彼は素早く床に横たわる中年の金貨袋を拾い上げて懐に入れると風のように走り去ってしまった。

 彼を見送って立ち尽くしていた私を衝撃が襲う。彼を追いかけてきたらしい男たちの1人が私を引き倒し、地べたに抑えつけたのだ。

「こいつも仲間だ! メスガキめっ。言い訳は聞かねえ。体にたっぷり聞いてやる! 口に入ってない時にはチンポしか言えなくなるまで可愛がってやる!」

 そうして私は何が何やら訳のわからないまま、拘束され男たちに連れられ闘技場を後にしたのだった。その間私は何の言い訳も、抵抗もできなかった。ただ唇に残った感触だけがいつまでもハッキリとしていた。

 つまり私は混乱していたのだ。 






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