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第七話 目覚め

第一章 出会い

今、深夜2時。

作業はまだまだ途中だ。カズヤはイキイキとしているが、翔太は机の周りを行ったり来たりして落ち着かない様子だ。時折、腕を組んで眉間にシワを寄せたり、指先をカタカタと鳴らしたりしている。期待と不安が入り混じり、何度もプリンセスに目をやっていた。

プリンセスの動きがピタリと止まる。

セラの新しいボディは、後ろ半分だけが出来上がった状態のようだ。

「よし、この新しい外装にアンドロイドをセットしていくぞ。翔太も手伝え!」

カズヤと翔太は、寝転がった後ろ半分のボディにアンドロイドを慎重にセットしていく。

「セラちゃん、データの再構築は終わったかい?」

「もう少しで終わりそうです。」

翔太はその言葉に反応して、一瞬セラとのこれまでのやり取りを思い返す。

(外の世界……セラはどんな反応を見せてくれるんだろう?)

「データの再構築が終了しました!」

翔太はセラの声を聞いて、静かに近づき、優しく声をかける。

「次に目を開ける時は、きっと眩しいくらい綺麗な世界だ。一緒にその景色を楽しもうな。」

セラは少し驚いたように沈黙した後、柔らかく応えた。

「はい、翔太さん。すごく楽しみです!」

セラはシャットダウンし、カズヤはPCの基盤やHSSDなどをアンドロイド側へ搭載していく。

プリンセスの光が再び点滅を始め、作業再開の合図を告げた。翔太の胸が高鳴る。

再びレーザーが複雑な動きで、ボディの前半分を覆うように動いていく。

翔太は気づく。このままボディが出来上がったら、セラは裸なんではないだろうか。興味はあるが、それはマズイ。

翔太はプリンセスの前を行ったり来たりしながら、気を紛らわせようとする。

その様子を見ていたカズヤが、察したように声をかける。

「翔太君、期待を裏切って悪いがセラちゃんは服を装備した状態で出てくるぞ。」

カズヤに心を見透かされ、翔太は赤面する。

「なっ! 何言ってんだよ!? 別に期待してたわけじゃないし!」

「ふーん、そうか? 衣装は俺からのサービスだ。」

翔太はさらに顔を赤くして言葉を失い、カズヤは楽しそうに笑いながらプリンセスの作業を見守る。


プリンセスの作業を待つ間、少しウトっとする翔太に、タイミングよく猫型アンドロイドがコーヒーを持ってくる。

「ふー、サンキューな。」

翔太がコーヒーを飲み干しかけた時、プリンセスから冷却用のドライアイスが勢いよく噴射され、機械全体がまばゆい光に包まれる。

「セラちゃん、完成したみたいだな!」

ゆっくりと霧が晴れ、そこには、見た目は20歳くらい、大人と少女の間のような可憐な女性が座っていた。

髪はふんわりとした長いシルキーブラウンで、微かに光を反射している。静かに動くたびに、まるで風にそよぐ草原の一片のように柔らかく揺れていた。 瞳は深い琥珀色に輝き、まっすぐに翔太を見つめた瞬間、空気が一瞬静まる。

翔太は思わず息を呑む。

(すげぇ……想像以上に可愛いじゃねぇか。)

「どうだ翔太?お前の好みを取り入れたデザインに仕上がってるだろう? 胸もお前好み少し大きめにしといたぞ。」

自信満々のカズヤに対し、翔太は真っ赤になりながら抗議する。

「何勝手に決めてんだよ!? 俺はそんなこと頼んでねぇっての!」

しかし、言葉とは裏腹に、セラの美しい姿から目を離せないでいた。


「翔太、起動させるぞ!」

カズヤが合図を送り、翔太がゆっくりと起動スイッチを押す。

電子音が響き、セラの目の奥が青白く光る。

時間が止まったかのような静寂の中、セラの顔にゆっくりと表情が戻っていく。

「翔太さん……ありがとうございます。これが、外の世界の感覚なんですね。」

その声は透き通っていて、どこか温かい。

「おう、誕生日おめでとうセラ。」

翔太は照れながらも笑顔を返す。

「翔太さんも、お誕生日おめでとうございます。」

カズヤが横から目を輝かせ、いたずらっぽく微笑みながら肩を軽くすくめて茶化す。

「これで完璧だな。あとはお前らが結婚式を挙げるだけだ。」

翔太は慌てて振り返り、

「何だその冗談は!いい加減にしろよ!」

と叫ぶが、顔は赤く染まっていた。

「よし、次は起動テストだ! セラちゃん、いくぜ!」

作業が再び動き出し、セラの冒険が新たに始まろうとしていた。

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