表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/39

第四話 超高性能TPE

第一章 出会い

「おい翔太、素材ってどこで調達する気だよ?」

「あてがあるんだよ!ちょっと行ってくる!」

翔太はそう言うと工房の扉を勢いよく開け、夜の街へ飛び出した。

「おいおい、もう夜の8時だぞ?素材屋なんて開いてねぇってのに…」

翔太はカズヤの言葉を聞こえていたのかいないのか、そのまま車に乗り込む。

車を走らせながら、翔太は思いを巡らせる。

(セラを外の世界に連れ出せるんだ…だったら、できる限り人間らしい姿にしてあげたい。あいつがどんな顔をするだろうか…笑ってくれるかな)

夜の街並みが窓の外を流れていく。街灯の光が車内に一瞬影を落とすたび、翔太の心は少しずつ静まり始めた。

翔太はふと、電車の中で見たネクサス社の最新型アンドロイドを思い出す。外見はもはや人と変わらないほどだった。その姿が今のセラに重なる。

(そうだ、超高性能TPEがあれば…)

会社のビルが見えてくる。夜の静かな駐車場に車を止めた翔太は、営業2課がある3階の明かりがまだ点いているのに気づく。

「川上さん、まだ残業かよ…」

金曜日、他の社員たちはすでに退社している。翔太は社員証をかざしてオートロックを解除し、静かにビルへ入った。

(セキュリティが作動するのは川上さんが帰ってからだ。まだ大丈夫)

翔太は1階の倉庫へ向かう。床に響く足音に耳を澄ましながら、慎重に進む。

監視カメラの位置を把握している翔太は、商品棚の影をうまく利用して倉庫内を進んでいく。

「ネクサス社向け商品棚」

そこに目指していたものがあった。

「あった…超高性能TPE!」

四井化学製のこの素材はネクサス社の専用品で、常に在庫されている。翔太はためらいを感じながらも、1袋だけなら…と手を伸ばす。

その瞬間、倉庫の明かりがパッと点いた。

「!!」

息を殺し、棚の影に身を潜める。恐る恐る棚の隙間から入口を見ると、そこには「できすぎ君」が電子パーツをピッキングしていた。

(なんだよ、できすぎ君か…)

普段はもっと鈍くさい動きなのに、今日は妙にテキパキしている。翔太は不審に思いながらも、じっと様子をうかがう。

心臓がドキドキと早鐘を打つ中、翔太はじっと息をひそめる。やがてできすぎ君は作業を終え、倉庫を出ていった。

照明が消え、再び倉庫内は暗闇に包まれる。

(はぁ、マジで心臓に悪い…)

翔太は心の中で社長に謝罪しつつ、なぜか部長のニヤニヤ顔が頭をよぎり苦笑した。

無事に超高性能TPEを手に入れた翔太は再び車へ乗り込む。

(待ってろよ、セラ…どんな顔をするんだろうな)

車のエンジン音が静かな夜道に響く。街灯が照らす先に、翔太の目には未来への希望が広がっていった。

翔太はそう思いながら、未来への期待を胸に車を走らせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ