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第三話 カズヤ

第一章 出会い

下請け工場が立ち並ぶ大田区の一角。そこにカズヤの工房がある。  夜になると、ネオンの光がチラつく下町のような雰囲気だが、昼間は機械音が響き、職人たちの怒号が飛び交う無骨なエリアである。

「よう!久しぶりだな。誕生日前日の金曜日なんだから、宇宙戦艦ちゃんとデートしなくていいのかよ?」

 工房の前に車を止め、大型パーツ用のパレットケースを降ろしている翔太の背後から、軽快な声が響いた。

「ぐっ……ヨーコのことはもういいんだよ……」

 翔太が顔をしかめる。

 カズヤはアニメ、ゲーム、そしてメカをこよなく愛するオタクエンジニア。そして翔太とは幼馴染でもある。  伝説のアニメ『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』の主人公「山本洋子」と翔太の元彼女が同性同名だったことから、カズヤは「宇宙戦艦ちゃん」と揶揄し続けている。

「さてはフラれたんだな?はははっ、まぁドンマイ。で、今日はどうしたんだよ?その箱か?」

「ぐっ……そうだよ。この箱の中身が相談内容だよ!とりあえずそっち持って」

 翔太とカズヤは二人でパレットケースを工房内に運び込む。

 カズヤの工房——そこは、彼の趣味が全開で爆発した異空間だった。

 美少女フィギュア、ガンプラ、壁一面に貼られたメカの設計図、謎のカズヤ特製パーツが散乱。  そして、工房の中央には、堂々と鎮座する巨大な3Dプリンター、その名も 「プリンセス」 。

 小型の猫型アンドロイドが翔太にコーヒーを運んできた。

「おお、翔太、こいつを見ろよ!」

 カズヤがパレットケースを開ける。

「……おお、これはコスモX社製の初期型アンドロイドじゃねぇか!」

 目を輝かせながら、カズヤがアンドロイドを観察する。

「当時、武骨なアンドロイドが主流だった中で、流線形デザインをボディに採用したのが話題になったんだよなぁ……懐かしい……  ん?? しかもコイツ……初期ロット じゃねーか!? 超レアだぞ!」

「こいつを修理できないかってのが相談なんだよ。カズヤなら可能かなって思って」

「そりゃできなくもないが……まずは中身を見てみねぇとなんとも言えねぇな」

「さらにお願いなんだが、うちのPCに入ってるAIをこのアンドロイドに移植することは可能かな?」

「はぁ? 翔太んちのあの骨董品PCだろ? あんなもん入れたって動くわけねーじゃん(笑)」

「そこを 天才カズヤ なら何とかならないかな?」

「……確かに! 俺は不可能を可能にする天才ではあるな!」

 おだてに弱いカズヤ。  腕を組み、しばらく思案する。

「…………そういや去年作ったアイテムが役立つかもしれねぇ! まぁ、やるだけやってみるか!  ただし、素材やパーツは全部翔太持ちだ。興味深い案件だから工賃はまけといてやるよ」

 翔太が小さくガッツポーズをする。

 カズヤはさっそくアンドロイドの修理に取り掛かる。

「外装はボロボロだな。多分長年放置されてメンテされてなかったんだろうな。  外装パーツは新しくしたほうが早い。中身のチェックもするか……」

 カズヤはPCをアンドロイドに接続し、AIシステムの状態を調査する。

「やっぱり、メインAIシステムが壊れてるな……。補助系のAIはまだ生きてるみたいだ! これならなんとか……」

「つまり?」

「結論——多分修理可能。お前んちのAI搭載も、まぁ……できなくもないな(ニヤリ)」

「マジか!? さすがカズヤ!」

「ただし、問題は素材だな……外装パーツ、どうするよ?」

「何が選べるんだ?」

「うちの**「プリンセス」** にかかれば、アルミ合金、チタン合金、シリコン、果ては 超高性能TPE だって加工可能だぜ!」

「超高性能TPE……それ、なんとかなるかも……」

 翔太の脳裏に、松戸商事の倉庫に眠る高性能TPEの在庫 がよぎった——。

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