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神の娘 ~外伝~  作者: 藍
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虐げられし姫は、死にかける*

渡り橋の上でリアは、むせて咳をしていた。


どうやら、肺に入った水を、無意識に吐き出したらしい。


呼吸は、戻ったが、寒い冬に池に落ちたので、体はすっかり冷え、唇は紫色になり、肌には血の気も無くなっていた。


「水死は免れたけど、このままだと凍死しそうだね。彼女は、本当おかしな人間だなぁ~」


そう言うと、彼女を、抱きかかえ部屋に運ぶ。


運びながら思った。


セトは、元々は天界から、地上へと降りて来た神だ。


そして神は、不老不死だから、今まで色々な人間と出会い見てきた。


原初の人も不老不死であった。


神を敬い、神もまた、人を愛し信頼関係を築き上げ共栄していた。


ある事をきっかけに、人は神より不老不死取り上げられた。


そして限りある命となり、争いや私利私欲(しりしょく)に走る様になった。


神は血や、死骸を(けが)れと呼び嫌う。


人間達によって穢れに満ちた地上に住むことは難しくなり、殆どの神達は、神の国である天界へと去っていった。


こうして、神は地上を去り、人もまた神の存在を身近に感じ無くなった。


そんな地上に、暮らしているのは、人の負の念と人の魂が結び付き、生まれる咎人(とがびと)と呼ばれる魔物を退治する為だ。


この魔物は、天界を滅ぼす為に、天界に謀反を起こした神の呪いで地上に生きる者だけが魔物になって仕舞うのだ。


特に無念を抱えて死んだ魂は、冥府へ逝くことが出来ず、咎人に変化しやすい。


人がこの地上に存在する限り、永遠に終わる事のない不毛な戦いだが、神々にも影響が、ある為に放置はできない。


地上で国を治め、王になってしまったのは、ただの成り行きだった。


神とて、住む家は必要だし、食事も食べる。


だが、セトは家事と呼ばれる全てが苦手だった。


高位の神に生まれ、常に世話をする者がいたからだ。


地上に来て困っていたら、そこへ他の神の呪いで老人の姿に変えられ、天界を追放された精霊が複数の人間と共に現れた。


彼らは、実り豊かな土地で暮らす事を望んでいた。


その望みを叶える変わりに、僕に住む場所を提供し身の回りの世話して、その精霊と人間達は子孫代々、セトに使える事になった。


平和な暮らし、実り豊かな土地は他の人間にも魅力的だったのだろう。

自分も自分も、使えたいと大勢の人が押し寄せ。


沢山の人が集まり、いつのまにか国になり集まった人々から王と呼ばれる様になった。


そんなセトの回りに集まる人間は、大抵、私利私欲を持つ者達ばかり、最初は彼女もそんな人間だと思った。


(でも、それなら少なくとも、他の人間達の様に、僕の前で媚びへつらうはず。だが、彼女は違う。まるで、僕の前でわざと悪者のように振る舞っている)


そんな、彼女の態度が少し気になっていた。


暖かい自分の寝室に運び、ずぶ濡れの彼女の着物を脱がせ、布団に寝かせる。


彼女の着ていた着物は、乾かす為に火の近くに干した。


(未婚の女性の着物を、男の僕が脱がせるのは問題あるけど、人を呼ぶ訳にもいかないから仕方がない)


彼女の濡れた髪も拭いて、彼女の介抱してから、ようやく、別の部屋に行って、自分の着替えをする


神である自分は不老不死なので、真冬の池に落ちてもなんの問題も無いが五感はある。


だから寒さは感じる。


「まったく、酷い目にあったな」


三つ編みに結んだ、髪を一度、解き、適当に拭く。


支度を済ませて、再び彼女を、寝かせた部屋に様子を、

見に戻ると、彼女は振るえていた。


唇も紫色のままだ。

どうやら、体温が低下したままのようだ。


このままでは、体温低下で死ぬ可能もある。


仕方がないから、自分も一緒に布団に入り横になると、彼女を抱きしめ温める。


抱き締めた彼女の体はとても冷たく死人のようだった。


◇◇◇


リアは、夢を見ていた。


リアは、まだ幼い子供で、死んだ母と、一緒に遊んでいる幸せな夢だ。

だが、突然、母は居なくなり、たった一人冷たい雨の中外に置き去りされ、冷たい雨の中、必死に母を探す。


そして、母を見つけ手を伸ばした瞬間『ハッ』と目を覚ました。


伸ばした、その手は『ペチッ』と硬い何かに当たった。


(なんだろう???)と思って横を見れば、男が隣に寝ている。


しかも自分は、その寝ている男に抱きしめられていた。


どうして、こんな状況になったのか?!?!


リアは混乱して、悲鳴を上げた。







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