冥府の大騒動(2)
それから暫くして、冥府は段々と休む暇も無い程に忙しくなった。
沢山の人間の魂が成仏して冥府へとやって来たからだ。
元々、万年人手不足の冥府は、この事態で更に悪化した。
だが、その原因を冥府は特定出来ずにいた。
そうリアが天国である動物と遭遇するまでは…。
冥界の地獄にも天国にも、エンマが『生命造化』で造った動物達が何種類か存在している。
天国には『羽ウサギ』と呼ばれる耳の毛が羽に見える白いウサギが存在していた。
だが、一匹だけ明らか違う種類の違う白いウサギが混ざっていたのだ。
そのウサギは、地上のウサギだった。
リアは、出仕前にウサギに餌を上げるのを日課にしていた。
エサ目当てに近づいて来た一匹のウサギを見て不思議に思い呟いた。
「あら?この子だけ他のウサギと違うわ」
そう呟くと驚いた事に、そのウサギから返事が返って来たのだ。
「ん?我輩の事でありますか?」
天国のウサギも地上のウサギと同じで鳴かないし喋らない。
だから初めて喋るウサギを前にリアは驚きの余り叫んでしまう!!
「ウサギが喋った!!」
「ああ。我輩。何故か、ここに来てから喋れる様になったでありますよ!はて?失礼ながら、どこかで我輩と会った事は無いでありますか?我輩そんな気がするであります!」
「無い。無い。喋れるウサギなんて初めてだもの」
「おお。そうでありましたか?でも……あ!!思い出したであります!我輩の大好きな、お姫様に似ているでありますよ!」
「お姫様?お姫様のお名前はなんて名前かしら?」
「名前はセリ殿であります。我輩を、とても可愛いがってくれたであります」
「セリって!?もしかして青い髪と赤い目の可愛いい女の子かしら?」
「そうであります。お姫様をご存知でありましたか?」
「ええ。セリは私の娘だもの」
「これは、これは。ご母堂様でありましたか?だから似ているのでありますな。
我輩、お姫様には生前、大変お世話になったであります。お姫様と幸せに暮らしてたのに突然、我輩の家に現れた女狐に喰われ、我輩、の幸せな繰らしは終わったでありますよ。そう狐、狐、狐、狐の奴に我輩は殺られたであります…」
そう呟く様に言うが、とても禍々しい様子にリアは少し怯えてた。
そして思い出した。
地上から冥界へ来たのなら、冥府で裁きを受け無ければならない筈だ。
(だけどウサギは裁きの対称なのかしら?冥府に勤めて随分とたったけど、動物が冥府に来た事も裁かれている所も見たことが無いわ…)
疑問に思いながらもリアはエンマやエンラの指示を仰ぐべく、ウサギ連れて冥府に出仕する事にした。
「とにかく一度。私と一緒に冥府にいきましょう?嫌かしら?」
抵抗するかと思ったが、素直に従ってくれる。
どうやらセリの母親だった事が、ウサギの警戒心を解いたみたいだった。
「ご母堂様と一緒なら良いでありますよ!因みに我輩ユキであります!お姫様が、我輩に付けてくれたであります」
「そう。ユキちゃんね。さぁ一緒に行きましょう」
冥府まで、ユキを連れて来た、リアは、エンラの姿を見かけて話し掛ける。
「エンラ様。実は私、天国で地上のウサギを見つけたので連れて来たのですが…。この子、そのまま天国に居ても良いんでしょうか?」
そう言って、ユキを抱き上げてエンラに見せた。
エンラは驚いて、大きな声で反応する。
「地上のうさぎ?!」
いつも冷静沈着なエンラが珍しく驚いて、大きな声を出したのでリアも驚いた。
エンラは、自分が冷静さを失ってリアが驚いていることに気が付き謝る。
「リアさん、大きな声を出してすみません。私、動物が大、大、大好きですから…。本来、地上の動物達は自我の無いので、地上で亡くなると、そのまま魂は生命力となって天界へ返り、再び地上へ新たな命となって生まれ変わるので、冥界には来ないですよ。ですから大変、貴重て珍しい存在なんです!」
そう珍しさを力説するが、その貴重と言うのがリアには今一、良くわからないので、空返事になってしまう。
「…はぁ」
そしてエンラはユキを見ながら、何やら色々と思案しているようだ。
「例え自我や霊力のある動物が地上で亡くなっても、その魂は、そのまま地上を彷徨いやがて妖獣となって復活するんです。やはり地上で何か特別力が働いていると考えるべきでしょう…。その力が冥府を繁忙期にしている可能性がありますね。色々と話を聞く方良さそうだ」
そして改めて、ウサギに名前を尋ねた。
「ウサギさん。貴方のお名前は?」
「我輩、名前はユキであります!」
「ではユキさん辛いかも知れませんが…。貴方が亡くなった時の状況を詳しく父上に話して貰えませんか?何か地上でその原因が分かるヒントになるかもしれません」
「了解あります」
こうして、ユキは、エンマに地上での話をするのだった。
ユキの話を聞きエンマはある推論を導きだす。
「ふむ。考えられる原因は、セトの娘かも知れぬな…」
娘の名前が出るとは思っても無かったので、リアは驚いた。
「セリですか?!」
だがエンラは、驚きもせずに父のエンマに同調する。
「そうですね。色々と調べた結果セリさんは神族です。そしてそのセリさんの誕生後、周辺の人間達は勿論。非業の死を遂げたセリさんの愛玩動物までもが冥界へやって来た。おそらくは、『浄化』の神通力を持っていると考ええられます」
「浄化の力か…。弟も強い浄化の力を持っているからな。その力を受け継いだか。最も、弟の力は、己にのみに浄化が働くが、娘の力は他者に影響を及ぼす…か。このまま放置は出来んな」
「はい。最早、冥府は人間の魂の受け入れ限界を超えています。早急に対応が必要です」
雲行きが怪しくなって来たので、リアは、慌てて娘を庇う発言をする。
「待ってください!まだ娘のせいと決まったわけじゃ無いと思います!」
だが、2人はリアの言葉を否定する。
「リアさん。貴女の魂も本来なら地上を彷徨っていてもおかしくないのです。そして極め付けてはユキさんです。何度も言いますが、地上の動物が、冥界へ来る事は本来あり得ないんです」
そう言われてリアは今後の事が心配になる。
「セリをどうするおつもりですか?!」
「冥界へ連れて来るしかあるまいの」
「え!それは娘に危害を加えるつもりですか?!止めてください!」
「危害は加えぬ!神を害しても亡くなる事も無ければ、冥界へ魂がくる事もない。だが素直にに我々の言う事を、聞いて冥界に来るとは思えぬ。だから拐って来る」
「そんな…」
「そして冥界へ来た後は、リア殿と一緒に暮らせば良かろう」
「え?私と暮らしも良いんですか??」
「ああ。母子なのだ。何の問題もあるまい。そもそも弟と暮らしても子育てが出来るとも思えぬ。娘も辛かろ?」
「う!!それは……」
(確かに、陛下に子育は無理な気が…。)
「まぁ。いきなり冥界へ来て母と暮らすのは、最初は戸惑うかもしれんが、いずれは慣れよう。リア殿も娘を手元置けば、何かと安心であろう?冥界も落ち着く、そして全てが丸く収まるのだ」
そう説得されれば、リアも承知するしかない。
「分かりましたわ。ただし絶対に娘を傷つけ無いとお約束ください」
「約束しよう」
そう言われてリアも頷きセリを冥界に連れて来る事に同意する。
そしてユキの事も尋ねた。
「あの、ユキちゃんはどうすれば?」
「娘もいずれは冥界へ来るのだ。またそのウサギと共に暮らせれば喜ぶだろう。リア殿が引き取れば良い」
エンマはそう答えたが、それにエンラが待ったを掛ける。
「待ってくだい。実は、私、最近、部下が欲しいと思っていまして…。単刀直入に伺います。ユキさん、良かったら冥府で私の部下として働きませんか?」
「エンラ、そなた部下と云うよりも地上のウサギを飼いたいだけであろう?」
「はい!私、地上の動物が欲しいんですよ!なのに、冥界に地上の動物は来ない。会いたければ地上に行くしか無い。なのに仕事、仕事で、休暇も取れない」
「分かった。では、こうしよう。昼間は、エンラの部下として働く。夜はリア殿の家で暮らす。セリが冥界へ来たら、元々飼い主はセリなのだから、セリと一緒に暮らす。2人共それで良いな?」
「「はい」」
エンラとリアは、同意するもユキの気持は分からないので、リアはユキに尋ねる。
「ユキちゃんも、それで良いかしら?」
ユキは、少し考えてから返事をくれた。
「……本来なら、我輩の様に怨みを持った霊獣は、妖獣に変わり人に害をなす存在になるのでありますな…。でも、お姫様の浄化の力のお陰で我輩の魂は、冥界へ導かれたであります。そして天国でお姫様のお母上に見つけて頂いたのも、きっとお姫様がくれた縁であります。ならば我輩、そのご縁を大切にし冥界でずっと暮らすであります!」
こうしてユキは、冥府でエンラの部下として働く事になりリアと一緒に暮らす事になった。
そしてエンマは、セリの確保に動き出すのであった。
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