【番外】虐げられし姫は、冥府の研修会に参加する(5)
突然の声にリアは、後ろを振り返った。
だが、そこに人の気配は無い。
(空耳かしら?)
そう思い前に向き直した、その時に再び声が聞こえて来た。
「うふ♡やーね。あたしたら、木の姿のままで話し掛けたしまったわ。ちょっと待ってて、今、分身を作るから」
「は??」
再び振り向けば、桃の木から、小さな光が集まり人の形をしていく。
そうして、リアの目の前に現れたのは、ガッシリとした体型の男性だが、何故か女性物の着物を着て、仕草はクネクネとしている人だった。
「な!?ばっ、化け物!!」
突然に現れた、男か女か、分からない人物を見て、リアは驚きの余り叫ぶ。
「もう!失礼ね!誰が化け物よー!!あたし、この桃の木よ。名前を『黄桃』って言うの♡よろしくね♡うふふ♡」
そう挨拶すると、再びクネクネしてリアの方を見る。
「えっ??桃の木??こちらの御神木様??」
リアは混乱して桃の木と、いきなり現れた人物を何度も見てしまう。
「ええ、そうよ。そんなに驚いてくれるなんて可愛い反応ね~♡ここを世話してくれる鬼達は、あたしを見ても誰も驚かないし~。つまらなかったのよね~」
リアは、そう言われてようやく冷静になる。
(そうよ。ここは現世じゃないわ。あの世、冥府。なにがあっても不思議じゃない場所。平常心、平常心…)
そうして、真面目な顔で再び話をする。
「すみません……。大変失礼致しました。失礼ついでに、聞いても良いですか?あの……貴方様は……、男性ですか?女性ですか?」
真面目な顔で質問するリアに黄桃は、ちょっと呆れ気味に答える。
「まぁ~。貴女。開き直り早い上に結構いい性格してるわね!でも、そう言う性格は嫌いじゃ無いわよ! そんなに知りたいなら教えてあ·げ·る♡どちらでも無いわ。だってあたし植物だもの。まあ強いて言うなら、雄雌同体かしらね~」
「はぁ~。なるほど…」
そう返事をしたが、実際には分かった様な分からない様な感じだった。
だが黄桃は、気にせずに逆に質問をしてくる。
「助けてくれてありがとう。ところで貴女、人間のようだけ、冥府で働いているなんて、どんな事情があるの?」
突然、思っても見ない問にリアは答えに詰まってしまう。
「えっと……」
冥府の大切な桃の御神木とは、いえ詳しい事情を話して冥府やエンマ迷惑を掛けたらと心配になり躊躇っていたら、横からエンラが話し掛けてきた。
「黄桃さん。こちらはセト様の奥様です。叔父上の大切な方を父が裁きに掛けたり転生させる等、出来る筈もありません。ですから、天国で暮らして頂いてましたが、最近の冥府の忙しさを見かねて、お手伝いを申し出て頂き、今日は官吏の新人研修で地獄にいます」
エンラに当たり障り無く紹介されて、リアも同意して改めててお辞儀する。
「はい。そうなんです。リアと申します。よろしくお願いいたします」
だが、黄桃は、『ワナワナ』と震えていた。
(何か粗相をしたかしら?)
黄桃の様子にリアは不安になる。
「そうなのね…。あ~あ、また良い男が、あたしの前から去って行ったのね~~」
「はい??」
予想外の答えにまたも驚きの声を上げてしまった。
「黄桃さんは、男性を鑑賞するのが趣味なんです」
「えぇー!?」
「そうよ♡見た目の良い男を鑑賞するのが、あたしの趣味なの。セトちゃんも、あたし好みのバッチリ鑑賞対象よ。だって綺麗なんだもーん♡何?変とでも言いたいの?でもね。貴女達、人間だって綺麗な花を見るでしょ、美しい新緑の景色に心癒やされたりするでしょ?それと一緒よ。あたしは、目見の良い男を眺めるのが心の癒しなの」
そう捲し立てる様にリアに言う。
「はぁー」
その勢いに押され、最早、何と答えて言いかすら分からない。
「でも、あたしなんて、まだ良い趣味よー!あたしの友達に『白桃』ちゃんって、桃が居るんだけど、あの子こそマジの変態だわ。小さな子供を見るのが大好きなんて!地上にいた頃は、小さく子供をガン見しては怯えさせて泣かせて…。
あたしも、それを見かねて、分身の姿で泣いている子をあやそうしたら、何故か余計に泣かれて……。
毎回この繰り返し……。それなのに、白桃ちゃんたら子供大好き、見る事を絶対に止めないのよね~。
あ!一応、あたし達の名誉の為に言っておくけど、あたし達、植物だから本当に見ているだけで、別に何もしてないわよ!でも何故か子供って怯えて泣いちゃうのよね~」
「まあ、それは分かる気がします。見た目からして危なそうですから……眼力もあって怖そうですし…」
「貴女、そこは慰めるとこよ!まあ良いわ。あたしが、こうして姿を現したのは助けてくれた、お礼がしたいからなの♡」
「いえ。お礼なんて。桃の御神木は、この冥府で最も大切な神の木と教えられましたし、ご無事ならそれで…」
「う~ん。それじゃあ、あたしの気持ちが収まらないわ。お金あげたって受け取らなさそうね。あたしの桃は人間には食べられないし。そうよ。良いお礼の品があるわ。リアちゃんのこと気に入ったし、エンラちゃん、ちょっとこの子を借りるわね」
「はい。分かりました」
エンラは諦めた様に黄桃に返事を返す。
リアには決定権も無く強引にリアの腕を引っ張って、黄桃は歩き出した。
そして案内された場所には立派な屋敷が建っていた。
「さあ。どうぞ上がって」
黄桃は、リアに屋敷に上がる様に促す。
「あのここは??黄桃様のお屋敷ですか?」
リアは、誰の屋敷か分からないので、一応は黄桃に確かめる。
「やーね。あたし桃の木よ。人みたいに家に住む訳ないじゃないの。雨が降ろうが、雪が降ろうが、お外で根を張って同じ場所に、ずっといるのよ。ここはエンマちゃんが建ててくれた。あたしの趣味収集部屋ってところかしら♡」
そう言って黄桃は、リアを屋敷に招くのだった。
屋敷に入れば広い部屋に沢山の絵が壁に飾られているいる。
その無数の絵にリアは、とても驚くのだった。




