妖精の森(4)
竜宮の屋敷でも人魚達は、シノエを好奇心タップリにで見ている。
屋敷に使える人魚の数も多くシノエはここに来て不安になった。
(セト様には使える人魚が沢山いらっしゃる……。精霊の私が来ても契約して貰え無いかしら……)
契約が出来なければ、主探しは再び振り出しに戻る。
(その時はもう一度妖精の森に帰って…。ファイまた仲良く暮らしたいな……)
あんな別れ方になってシノエはずっと気になっていた。
そう思っていたら、兄のキシルが慌ててやって来て、シノエを叱る。
「シノエ!お前はなんて事を!」
「だって兄さんが心配で!」
シノエも負けじと応戦する。
そんな兄妹を、ジェノは冷静に止める。
「キシルさんその辺で。初めましてシノエさん。私は竜宮の管理を任されております。ジェノと申します。主様は、現在、地上におられますのでシノエさんにはお会い出来ません。ですが、契約書を預かっています」
「えっ!あのいいんですか?私と会って決めなくても…」
「主様は、そう言う細か事は気にしない方ですから……また竜宮の屋敷に使える者は、私の一存で決める事が許されております。キシルさんは誠実な性格の方です。その妹であるシノエさんなら、何の問題もありません。ただ、この竜宮で私達と暮らす事になりますし、天界へは頻繁に帰れないと思いますが、それでも宜しいですか?」
「はい。勿論です。誠心誠意お仕え致します。よろしくお願いいたします」
竜宮は、天界とは環境が異なっていて、慣れるのに、時間が必要だったが、人魚達は優しくシノエは充実した日々だった。
そんなある日、屋敷である話題が持ち上がった。
「潜水艇の建造ですか?」
「ええ。そうなんです。地上では最近、統治神様が変わられて、どうも主様と対立されていらっしゃる見たで……この竜宮にも、色々と魔の手及んでいるんですよ……」
「そんな……」
「一応、戦闘部隊が海を守ってますが、怪我を負う者もいて、泳いで帰還するのも危険がありますから、地上の海の中と竜宮を運行する船を建造する案がてでいました」
竜宮は、地上と冥界の狭間にある異界だが、竜宮の外海は地上と繋がっている。海底なので普通の人間達がやって来る事は無いが、邪悪な魔物に変えられた『咎人』は海底や次元を超えて竜宮へとやって来るのだった。
「ですが、その船の燃料が、今、問題でして…」
「?」
「燃料には精霊達が作る。動鉱石が必要ですが、その鉱石の常時調達が上手くいきません。、出来ればこの竜宮で暮らして、動力鉱石を作ってくれる精霊にどなたか心当たりはありません?」
動力鉱石は、作れる精霊も限られている上に、船を動かすのに必要な燃料で、船を動かせば動かすほど大量に必要になる。
天界の精霊に頼んで大量の鉱石の仕入れは、竜宮に取ってはかなりの負担だ。
「あの私の知り合いの妖精に動力鉱石を作れる者がいます。彼は妖精でも作られるんです。凄く優秀で、ただちょっと顔や体にも酷い痣が有って、そのせいで未だに神様に使えられなくて妖精のままなんです」
シノエは、更に詳しくファイの事をジェノに話す。
「なるほど。分かりました。では、そのファイさんが、シノエさん達、同様に竜宮で暮らして頂けるのであれば主様と契約致します」
『契約致します』とはっきりとジェノは答える。
ジェノが、そう言うなら、きっと何の問題もない。
後はファイを、説得して竜宮に連れて来るだけだ。
「分かりました。では少しの間お休みを頂きます。天界に戻って必ずファイを連れて来ます」
そうしてシノエは天界へ戻るのだった。
ー妖精の森ー
精霊の姿になって初めてシノエは森に足を踏み入れる。
妖精は、小さなので自分達から姿を見せてくれ無ければ、精霊になったシノエからは良く見えない。
シノエは、妖精の頃の記憶を、思い出しながら森を歩く。
そして、昔、自分達の家のあった木へと辿り着く。
「ファイ!!聞いて!貴方と契約してくださる神様が見つかったのよ。お願いだから私と一緒に来てー!」
だがファイからの返事がない。
変わりに別の妖精から声を掛けられた。
「ファイなら、残念だが、もう居ない。消えたのだ」
「え?うそ…」
「数日前から、体が薄くなっていたから…」
「そんな……」
「ほら、この石がファイだ…」
そう言うと地面に落ちていた石を妖精は示す。
ファイは石に戻ってしまったのだ。
美しい宝石だか、宝石の右側には大きなひびがある。
シノエは、その石を大事に布で包み、竜宮へと帰って行った。
「ううっ……。申し訳ありません。手遅れでした。ファイが石に戻ってしまったんです」
竜宮に帰り事情を話す。
悲しみにくれるシノエや困惑しているジェノとは、違いセトはいたって冷静だ。
「うーん。確かに妖精の姿を維持するには生命力が足りない見たいだね。でもまだ完全に石に戻って消えた訳じゃない」
「え?」
そう言うとセトはシノエの手から石と取る。
そして石を握った手からは光が宿ると、再び石は輝きそして妖精の姿へと代わっていった。
「う…?オレは?」
ファイが、再び妖精に変わるとシノエは、ファイをセトから受け取り手の上に乗せて呼び掛ける。
「ファイ!!」
「シノエ……?!オレは夢を、見ているのか?確かオレは寿命で力尽きて……いや…。何でもいい。こうして再びお前に会えたんだから。シノエ。オレはずっとお前に謝りたかった……。酷い事を言って悪かった」
「ファイ。そんな事もう気にしてないわ。それに夢じゃ無いわ。現実よ」
そうシノエに言われ段々と意識がはっきりして来て、ここが妖精の森で無い事が分かって驚いた。
「ここは、どこだ?!」
「ここは竜宮よ。ファイ」
「竜宮??」
更にセトからもファイに話し掛ける。
「やあ。意識がしっかり戻ったね。生命力が不足していたから、僕の方で生命力を注いだんだ。生命造化の応用かな。で、君が動力鉱石を作れる妖精かい?」
「動力鉱石か…。確かに作れるが…。オレは……この通り見た目が醜い。あんたの様な高位の神に使えるにはオレは相応しくないだろう?あんた、だってこんな醜い精霊は必要無いだろう?」
「僕は別に見た目は気にしないし、動力鉱石を作れる程の能力の持ち主なら喜んで契約するよ」
「オレの見た目では無く、能力を買うと、あんたは言うのか?」
どんなに優れた能力が有っても、容姿で否定され続けたファイに取ってセトは奇跡の存在に思えた。
(オレの見た目を気にしない神が存在するなんて…)
こうしてファイは契約して精霊になり竜宮に住む事になった。
ファイ専用の工房は港からも近い街に作られ、動力鉱石の流通を用意にした。
戦いが終わった今は観光船として、潜水艇は活躍している。
他にも、ファイは優れた能力を、発揮して竜宮の発展に寄与し続けた。
◇◇◇◇
それから月日は流れ、再びファイは奇跡と思える出来事に遭遇することになる。
それは自分の能力を認めてくれた主の娘によって。
それは突然で思いがけない言葉だった。
「きれー」
少女はファイを見てそう言ったのだ。
だかファイの長年抱え続けたた容姿への劣等感は、その言葉を宝石眼だけ向けていると思いこんだ。
だから自分の眼の事を説明した。
だが返って来た言葉は再び思いも寄らない言葉。
「えー?違うよーファイが綺麗なんだよ」
(なっ!!///ばかな……オレが?!)
生まれて初めて言われた言葉だった。
だが、どう反応して良いか分からず、お茶を入れると言って、その場を逃げてしまった。
(ああ~。初めて綺麗と言われて嬉しかったのにオレは逃げてしまった。その上、礼も言えず否定の言葉を……)
自己嫌悪に陥ってから、そっと物陰から再び、さっきの少女の様子を見ればファイの態度を気にしておらず楽しそうに装飾品を眺めていた。
そんな少女が見ていたのは、価値のないクズ石で作られた髪飾りだ。
価値のない石にファイは、どうしも自分を重ね感情移入をしてしまう。
だが、ファイの手によって作られた、それらは価値のある髪飾りとして現在とても人気になっている。
そして少女に髪飾りを分けて欲しいと言われ気前の良く必要なだけあげてしまった。
ファイに取っては、ここに有る全ての装飾品を、少女にあげても、いや、それでも全然足りないと思える程さっきの言葉が嬉く何かお礼がしたかったのだ。
その髪飾りは全て後日、商人に納めなければならない大切な商品なのに。
主達がファイの家を去った後、必死に髪飾りを作るファイの姿があった。
あげてしまった分を、もう間も無く迫った期日までに作らなけらばならない。
だがファイには後悔はなかった。
そして妖精の森で、仲良く暮らしていた3人は、今も幸せに竜宮で暮らしている。
ー完ー
お読み頂きありがとうございました。妖精の森はここで完結です。
ただ、まだ竜宮を舞台にした話も書く予定です。
更新致しましたらよろしくお願いいたします。
広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると書くモチベーションに繋がります。




